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2018/07/31

2018.7.31 神戸大石川ゼミ夏季食事会

前期の終わりの恒例のイベントです。今回も,現役ゼミ生に加え,地元の高校で教諭をしているOGが参加してくれました。こうやって縦の糸がつながっていくことも,大事なことだと考えています。

石川ゼミ夏季食事会
日時 2018/7/31 1230~1400
場所 芦屋モノリス

芦屋モノリスにて

2018.7.31 兵庫県尼崎市立小田北中学校教師研修会講演

表記に参加し,2名の先生の模擬授業(数学/理科)を拝見した後,アクティブラーニング(AL)の観点から講話を行いました。

講話では,ALが目的ではなく手段であることを指摘し,以下のような整理をした上で授業設計を行うことが有益であると述べました。


ALをある種の万能教授法のように紹介する文献も多いですが,教授の方法論として見た場合,ALが(丁寧にやろうとすればするほど)授業の時間を食うのも事実です。つまりは,なにがなんでもALなのではなく,AL導入にともなう時間的コストとそれがもたらす効果(パフォーマンス)を冷静に天秤にかけ,教育効果の最大化に努めることが現場にとっては大事だと言えるでしょう。

生徒の力を引き出し,伸ばしていくために,「できることならなんでもチャレンジしよう」という尼崎の先生がたのひたむきさにはいつも頭が下がります。小田北中に行くたびに,「教えて教えられ」という言葉を実感します。



2018/07/28

2018.7.28 大学英語教育学会東アジア英語教育研究会

大学英語教育学会 第188回東アジア英語教育研究会
日時:7月28日(土)15:30-17:35
場所:西南学院大学1号館702教室

M1の王さんと石川が発表しました。

発表1-1:「コーパスを用いた新しいEAP語彙リストの開発:BABILONプロジェクトの背景と狙い」 
石川慎一郎(神戸大学)
Academic Word List(Coxhead,2000)は,発表からすでに20年近くが経過しているが,コーパス頻度と内容的レンジの両面を考慮する語彙選定手法は手堅く,現在においてもなお有用な語彙表である。もっとも,AWLには,(1)元となるコーパスが非公開で検証できない,(2)コーパスに年代や地域の偏りが含まれている可能性がある,(3)語彙選定において頻度とレンジの両面を考慮している一方,最終的な重要度の決定は頻度のみで行っている,(4)英語学習者の多くは接辞について十分な知識を持っておらず,派生形を1語として扱わないのは不適切である,(5)頭字語や略号を一律に削除するのは問題がある,(6)学術英語で散見される語の中にAWLでカバーされていないものも少なくない,といった課題もある。そこで,本研究においては,(1’)検証可能な公開コーパスのデータを用い(OpeN),(2’)年代と地域的なバランスを考慮しつつ(Balanced),(3’)頻度とレンジを合成した学術語彙重要度指標を基準として(Integrated),(4’)派生形を除外したレマの単位で(Lemma-based),(5’)頭字語や略号も包含する幅広い語の定義を採用した上で(Broad),(6’)GSL+AWLを超えるレベルを対象に(Advanced),学術語彙の選定を行うこととした。本研究で開発した語彙表は,以上の6つの理念の頭文字を並べ替えてBABILONと称する。

発表1-2:「『現代日本語書き言葉均衡コーパス』のブログデータを用いた内容ジャンル別オノマトペ使用状況分析:コアオノマトペの抽出に向けて」 
王思閎(神戸大学大院生)
オノマトペは日本語を特徴づける語彙要素であるが,従来の日本語教育では体系的な指導が行われていない。今後,中上級の外国人日本語学習者を対象としたオノマトペ指導を考えていく場合,はじめになすべきことは,現実の日本語を丁寧に解析し,様々な分野で広く出現する「重要オノマトペ」を計量的に特定することである。発表者は,過去に,日本語の現代小説の重要オノマトペの抽出を行った。本発表では,新たに日本語ブログデータを解析し,重要オノマトペの特定を行う。



研究会主宰者の木下先生と(木下先生との記念写真は石川ゼミの恒例儀式?です)

2018/07/27

2018.7.27 外国語教育コンテンツ論コース第3回集団指導

早いもので,本年度3回目の集団指導です。ゼミからは下記5名が発表しました。M2生の発表は,初めて,ポスター発表形式で実施されました。

中西 淳 D1
現代英語コーパスを用いた前置詞の頻度調査ー言語環境の影響性の検証と教育的重要前置詞の特定の試みー

張 晶鑫 D2
多義オノマトペ「ぐっ(と)」の使用特性と意味機能の解明

王 思閎 M1
BCCWJのブログデータを用いた内容ジャンル別オノマトペ使用状況分析-コアオノマトペの抽出に向けて-

鄧 琪 M2
渡日留学生のための重要外来語語彙リストの開発:アカデミック・ジャパニーズの観点から

隋 詩霖 M2
自動車広告に使用される日本語語彙の計量的分析:日本語教育の視点から



2018/07/14

2018.7.14 計量国語学会理事会@東京女子大

表記において,秋の大会の企画等について審議しました。


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ところで,「一歩踏み入れるだけで自然に気持ちの引き締まる大学キャンパス」というのがあるとすれば,(私にとっては)間違いなく東女です。キャンパスは,ただの施設ではなく,学ぶための特別な空間である,という建築家の精神を感じる場所です。

東京女子大の歴史的建造物

筆者撮影

正面にある本館には,QUAECUNQUE SUNT VERAという学園標語が掲げられています。「すべて真実なこと」という邦訳が学園サイトで紹介されています。

これは「フィリピ書」(「フィリピの信徒への手紙」/「ピリピ人への手紙」とも呼ばれる)の4:8の一節です。

Finally, brothers and sisters, whatever is true, whatever is noble, whatever is right, whatever is pure, whatever is lovely, whatever is admirable—if anything is excellent or praiseworthy—think about such things.(New International Version)
引用元:Bible Gateway (下線筆者)
https://www.biblegateway.com/

「すべて真実なこと、すべて気高いこと、すべて正しいこと、すべて清いこと、すべて愛すべきこと、すべて名誉なことを、また、徳や称賛に値することがあれば、それを心に留めなさい。」
引用元:教文館出版部 https://www.facebook.com/kyobunkwanpublish/photos/a.202109403250744.42676.202099983251686/783438028451209/?type=3&theater

「すべて真実なこと、すべて尊ぶべきこと、すべて正しいこと、すべて純真なこと、すべて愛すべきこと、すべてほまれあること、また徳といわれるもの、称賛に値するものがあれば、それらのものを心にとめなさい。」
引用元:Word Project
https://www.wordproject.org/bibles/jp/50/4.htm

「真実であればすべてそれを心に留めよ」というのは,信仰者の態度であると同時に,研究者の態度でもあるでしょう。4年間,毎日,この言葉と自問自答しつつ学べるというのは,うらやましい環境と言う他ありません。

2018/07/13

2018.7.13 兵庫県立長田高等学校人文数理探究類型研究発表会

審査委員長として表記に参加し,審査と講評を行いました。

日時:2018年7月13日(金)13時~17時
会場:ピフレホール(神戸市長田区新長田駅前)
内容:探究類型生徒による英語での探究研究発表

探究類型とは,探究活動をメインに据えた専門課程で,毎週,探究力の強化に向けた授業や,学外研究者の講演等のプログラムが用意されています。

長田高校ウェブサイト内「H28年度パンフレット」より一部を引用
http://www.hyogo-c.ed.jp/~nagata-hs/

本日の発表会では,高校生諸君は,堂々とした立派な英語で発表を見事に乗り切りました。また,香りの効果を研究したグループが,発表の最後に,能力向上に役立つとされる柑橘系の香りを実際にホールじゅうに振りまいてみせるなど,高校生らしい演出も巧みでした。

発表演題
・An Ideal Conveyor Sushi Restaurant for High School Students: Proposals to increase sales

・Building a “Truly” Multi-ethnic Community: From the experience of the Hanshin-Awaji Earthquake to disasters in the future

・Beyond the Komyusho: Communication Ability as Interpreted by Teenagers and Its Context

・Making the Perfect Study Environment with fragrance

・Magic wallpaper : No more frustration while waiting

・The Effect of Noise on Work Efficiency

・Different Shaped Objects and Their Air Resistance

・On the Efficiency of Domestic Wind Power Generator

・A New Kind of Neutralization Titration

・Sunscreen Revolution:Evaluation of sunscreen effectiveness based on photolysis of Silver Chloride

・Purification of Pond Snails





もっとも,研究者の目線でみれば,当然ながら,個々の研究には,課題もなお多く残されています。

文科省の方針もあって,いわゆる探究活動は多くの高校(とくにいわゆる進学校)で導入が進んでいますが,出口で目指すイメージは必ずしもクリアではありません。

私見では,大別すると,2つのタイプの探求プログラムが存在します。

A)「研究」の型ないし枠を借りて,一般的なキーコンピテンシー(調査力,まとめ力,パワポ等の使い方の習熟,発表力,コミュニケーション力など)を伸ばす

B)純粋にプロに準じるレベルの「研究」を行わせ,大学入学後の研究活動にシームレスに連結する

枠組みが違えば,評価も異なります。たとえば,B)なのだとすれば,必要な統計も検定もかけずに数値を扱ったような研究は,すべて,門前払いとなるでしょう。

A)とB)は,どちらが良い/悪いという性質のものではありません。それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらを目指すかは,個々の学校が,所有する設備,大学から(高校側の予算の範囲内で)受けられるサポートの量と質,探究活動に割ける物理的な時間,地域における学校の位置づけ,などを考慮しつつ,決めるべき事柄です。

問題は,多くの学校において,目指す地点が明示的に意識ないし定義されていないことです。<何を目指すのか>が明確でなければ,<そこに向けてどういう手立てを講じていくのか>も決まらず,結果として,<何を評価するのか>も決まりません。これでは,指導の先生も,また,生徒さんも,達成感を味わいにくいでしょう(一生懸命頑張ったのに,最後に評価されない,というのは避けたいです)。

日本の中等教育学校における探究活動は,導入期を経て,今後,実が問われる時代に入ってきます。各校は,これらの点について,それぞれの理念・校訓・歴史・ミッションなどを振り返りつつ,今まで以上に明確な姿勢を示すことが求められるでしょう。

最後の講演では,3年生になって探究プログラムを終了する諸君に,探究の学びは生涯終わらないこと,また,探究が生きることそのものであることをお話しました。


本日立派な発表をされた長田高校の生徒諸君の今後の飛躍と活躍を祈ります。


2018/07/12

2018.7.12 神戸学院大学講演会参加

神戸学院大学 村上明先生講演会

◎日時:7月12日(木)16:00−17:30
◎講師 村上明先生
◎会場:神戸学院大学ポーアイキャンパスB号館B306
◎演題:Cross-sectional and longitudinal development of L2 English grammatical morphemes: Insights from a learner corpus
◎主催:神戸学院大学グローバルコミュニケーション学部新谷奈津子研究室
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◎上記に参加しました。国際的な舞台で活躍をしておられる村上先生の最新の研究3本をご紹介いただき,大変刺激を受け,また,いろいろと勉強になりました。講師の先生,また,企画してくださった神戸学院大学の先生がたに御礼申し上げます。

◎刺激的なお話を聞きながら,今後のSLA研究の在り方について(素人視点ながら)いろいろなことを考えさせられました。昨年出た「応用言語学」本の執筆時からずっとモヤモヤ感があり,講師にも質問させていただいたのですが,改めて自分の備忘録として。

(1)現代のSLAにとって習得順序を研究する意味はなんだろうか?
・第1世代にとっては,習得順序研究は(少なくとも部分的には)言語能力の在り方を論じる「大きな問い」(つまり,L1/L2の言語能力は生得的か否か)の一部であったと思われる
・まず,Brown 1973(縦断調査)やde Villers & de Villers(1973)(横断調査)など,L1における習得順序の同一性を主張する研究が出てくる (ie L1習得は環境ではなく生得的)
・その後,Krashenたちが,L2でも(L1の場合とは少し違うが/個体差も少しあるが,全体として言えば)文法形態素の修得は決まった順序だと主張する(natural order)(ie L2習得もある程度?生得的)
・なので,L2習得はL1習得風に行うべきであるという提言につながる(input hypothesisなど)
・とすれば,SLAの枠でそれを否定する(たとえば,natural orderが再現されないとか,L1差が大きいとか,個体差が大きいとかを明らかにする)ことは,その先に何を主張することになるのだろうか?
・あるいは,特に習得理論と関連付けないという考え方もあるが,そうだとすると「大きな問い」を持たないSLAというのはありうるのだろうか? (※自分では,(ある種の)コーパス言語学と(ある種の)SLAの違いは「大きな問い」の有無だと考えていたので,この点は悩ましい)

(2)学習者産出研究で分析の単位を変化させることの整合性をどう担保するか?
・たとえば,NS/NNS比較をやって,(A)NNSは・・・という特徴があると主張する
・その後,国別比較をやって,(B)日本人は・・・,L1中国語話者は・・・と主張する
・その後,習熟度比較をやって,(C)日本人の中でも上級者は・・・,初級者は・・・と主張する
・さらにその後,個体差比較をやって,(D)個人差が大きく,習得は個人レベルだと主張する
・この場合,(D)を積極的に述べることは,従前の(A)~(C)の主張を内部解体することにつながらないのか?(この悩みは自分にいつもつきまとっている。「玉ねぎを剥いていくと最後は無」)

(3)日本人学習者かL1日本語学習者か?
・ある学習者集団のL2使用の特性は,L1,国(の教育システム,教材,カリキュラム),個人など,様々な要因があると思われるが,どこにフォーカスを置いて考えるべきなのだろうか?
・ベルギーのGranger先生たちの研究のように,欧州において,たとえば仏語話者とか独語話者のL2英語使用におけるL1影響を議論するのと同じ枠組みで,日本や中国のL2英語学習者におけるL1影響を議論してよいのだろうか?
・もしよくないとすると,どういう場合にL1干渉フォーカスでアプローチし,どういう場合に環境フォーカスでアプローチすべきなのか?その線引きは? しかしそのように差異があるということ自体が「すべてはL1差」説を担保する?(論理が二転三転ねじれていく)
・仮に見出された差異の根源をL1だけに還元すべきでないとなれば,精緻なL1干渉研究のデザインの中に,教材とか受けた教育とか個人タイプのような定義しにくいパラメタを組み込むことはどのようにして可能になるのか? あるいはそういう「ノイズ」(とおっしゃっておられた)は存在しないものとして(ちょうどperformanceを切り捨ててcompetencyを論じるように)扱うのがよいのだろうか?

・・・などなど,いろいろと考えつつ,帰路の電車に乗りました。



2018/07/11

2018.7.11 ゼミOGの来訪

中国の大学で准教授をしているゼミOGが来日され,研究室に遊びにきてくれました。修了生の活躍は教師にとって最大の喜びです。







2018/07/09

2018.7.9 神戸大学附属中等教育学校優秀発表者特別指導

日時:2018/7/09(月)1545~1830
場所:神戸大学附属中学校社会科研究室

 卒業研究(Kobe Project:KP)の優秀者を対象に,最終発表会に向けて,研究ロジックなどの指導を行いました。

例年どおり,生徒諸君の努力が認められた一方,リサーチとしては課題も多く見受けられました。


神戸大附属は,探究活動(中高生が自分自身のリサーチテーマを決め,時間をかけてリサーチを完成させる)の実践に関して,全国のリーダー的存在ですが,今後は,教員指導力のさらなる向上,評価の妥当性の向上,研究のパーツの水準を上げるだけでなく研究全体をパッケージとみなしてその全体的完成度を高める指導の強化などが必要になってくるでしょう。