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2020/05/31

2020.5.31 兵庫県立伊丹高等学校探求講演会

講演会?と言ってよいかどうかわかりませんが,少なくとも当初は「講演会」として設定されていたものです。コロナウイルス感染拡大に伴う長期休校措置に伴い,結局,講演はビデオ録画し,先生の指示で生徒さんはそのビデオをご家庭でご覧になる形となりました。

兵庫県立伊丹高等学校探求特別講演会
講師:石川慎一郎
演題:高校生のための探求入門:私と社会をつなぐ切り口

講演ビデオより

ビデオ講演やオンライン講演という形態も,コロナ禍で急速に広まりました。中高では学外講師を招いて講演を聞かせることが多いのですが,生徒を講堂などに集める形だと,準備も大変で,また,貴重な授業時間を1つ使ってしまうことになります。講演ビデオを使って反転学習のような形を導入すれば,学校での指導時間を減らさずに済み,利点もありそうです。ただ,ビデオでよいなら,すでにいろいろなものがウェブに浮かんでいるわけで,講演のライブ感とか双方向性のようなものをどう再現するかが課題でしょう。これは大学のオンライン講義にも当てはまる問題です。

2020/05/29

2020.5.29 研究メモ:校閲

(2021/5/22 更新)2021/5/22 ジャーナル用修正論文に対する校閲メモ
別の論文の校閲を依頼しました。前回と同様にどこが修正されたかをリスト化し,自分メモとします。

・in speech → during speech
★これは正直どっちでもという気もしますが。

・vocabulary use → vocabulary usage
★語の使用という意味でvoc useというのはよく使うのですが,Grammarlyでもチェックが入り,人手の校閲でもusageに置き換えられています。usageは「語法」という特殊なニュアンスのなので,それ以外は避けたいのですが,一般読者にはvoc useはわかりにくいようです。

・~ of Asian learners → ~ among Asian learners
★アジア人学習者の発話,などというとき,ふつうはof(またはby)だと思うのですが,L1比較のようなニュアンスがあるときはamongがよい,ということかなと。

・the speeches → φ speech
★the+複数形はダメで,無冠詞単数に,ということのようです。無冠詞というのがどうにも気持ち悪くいろいろつけてしまうのですが,シンプルに,ということのようです。

・in ~ task, where → whereカット。
タスクタイプを書いて,そこでは・・・という意味で, whereで説明を補足していましたが総じてカット。文がくどくなるからか,あるいは,task whereのコロケーションに違和感があるからかはちょっとわかりません。 in which...ならよかったか?

・difference → differences
・effect → effects
・gap → gaps
★speechは複数を単数に代えられ,differenceは単数を複数に代えられています。要は,ざっくりと差がある,効果がある,というような場合は無冠詞複数,ということかなと。

・seen → found/ observed
★このほか,what differences are seen → what differences "exist"など
★seenのカットは前回もあった。

・monologue/ dialogue → monolog/ dialog
★米英つづりの差ですが,コーパス名称をlogueにしているので,今回はこの修正は採用せず。

・as regards → regardingなど
★この校閲者はas regardsはお嫌いだったようです。

・婉曲のwould→φ
・seem→φ
・though→φ
★まわりくどいからか。。。

・φ → we
★う~ん。この校閲者はweが好きなようです。論文中のweは悩ましいです。今回は全部カットしたのですが,たしかにweのほうが書きやすいときもあるのですね。

・high-frequent word → high-frequency word
★これは確かに,という感じ。highly frequently occurring wordならありでしょうが。(※前回の校閲でも同じところにチェックが入っていた。学習していない・・・)

・rather→ φ
★これはちょっとくだけすぎていますが,英語を書いていると勢いで書きたくなるのですねえ。

・a corpus that collects... → a corpus that consists of...
★これは誤用だったかもしれません。~を集めたコーパスと,いうイメージが頭にあったのですが,collectは,普通,動作主は人ですので。

・clustered together → jointly clustered 
★これもちょっと擬人法的にとらえすぎていたかもです。

・そのほか校閲者による主な追加語
12 4 + 5.78 0.0013 address(★discussに代えて)
20 3 + 4.34 0.001 able(★canの反復回避)
28 3 + 4.34 0.001 provide(★give/ offerの反復回避。前回も指摘)
31 3 + 4.34 0.001 specifically(★とくに・・・)
37 5 + 3.15 0.0016 context(★in this~など)
39 5 + 3.15 0.0016 further
44 2 + 2.89 0.0006 attempted(★try toに代えて)
49 2 + 2.89 0.0006 implemented(★conductに代えて)
50 2 + 2.89 0.0006 investigated(★examineに代えて)
53 2 + 2.89 0.0006 pertained(★関係がある,concernに代えて)
59 2 + 2.89 0.0006 subsequent(★~lyもあり)
62 2 + 2.89 0.0006 thereby(★それによって,thenの反復回避)
64 2 + 2.89 0.0006 ultimately(★thenの反復回避)
81 1 + 1.45 0.0003 accordingly(★thereforeの反復回避)

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(自己メモ)2020/5/29ジャーナル用修正論文に対する校閲メモ

ジャーナルに投稿する論文(revision)を専門の校閲にかけました。いつも同じようなところに修正が入る(化石化の典型・・・)ので自己メモとして。a/the関係を除くと,わかりやすい「間違い」はさすがにないですが,無意識のteddy-bear words(お気に入り語)があまりに目立ちすぎると,言い換えられる場合が多いようです。ただ校閲者により指示が違うのも悩ましいところ。

抽出手法
・original fileとedited fileを比較
・対数尤度比でover/underuseを取り出す
・変更例をさがしてパタンとして整形

左は削除された表現,右は修正で追加された表現

(順列表示・トピック表示)
Then, A .... → A then ... もしくはトル
then → accordingly(応じて)/ subsequently (その後で)
concerning A → with regard to A (※ほかにas regards Aもありうる)

(因果)
due to → because of
in order to → to

(添加)
Also → further
also → further/ moreover

(逆説・対比・強調)
although → カット
while→ 文切ってconversely
especially → notably

(特定・非特定)
the list of the words to facilitate... → the list of φ words to facilitate...
the quantity of participants' speech →the quantity of the participants' speech

(表現の多様性)
based on → on the basis of
uttered → said/stated
(proficiency etc.) go up → rose
as seen in → as documented in
as it shows→as it indicates
give → provide

(表現の単純化・明確化)
there exists X → there is X  など
leads A to B → enable A to doなど
be of note → be noteworthy
seen → カット
high-frequent words → high-frequency words
kinds of → types of
same --- with → same--as

(被験者への指示)
told s/o to do → asked s/o to do

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後で確認する(名詞句反復時の省略について)

(A)  the number of words uttered by the learners
(B)  the number of words uttered by the native-speakers
とあり,the ratio of (A)to (B)と言いたい場合

the ratio of the number of words uttered by the learners to that by the native-speakers → the ratio of the number of words uttered by the learners to that of the native-speakers という修正が入っているがOKか? 先行名詞句を受けるthatはどこまでカバーできるか?(the +Nのみ? the+Nの後にずらずら後続要素がついていてもthat1語で置換可能?)

2020.5.29 大学院集団指導でゼミ生が発表

ゼミ生(M2以上)が下記の発表を行いました。

神戸大学大学院国際文化学研究科外国語教育コンテンツ論コース
第1 回(オンライン)集団指導プログラム
日時:2020 年 5 月 29 日(金)9:58~11:06
形式:zoom によるオンライン形式(質疑応答のみ) (D=8min, M=5min)

D3 中西淳
日本人英語学習者の前置詞誤用に対する新しい記述アプローチの提案-言語範疇・表層構造・化石化要因の3観点に基づく in・on・at の誤用記述の試み-

D2 鄧琪
中国語を母語とする日本語学習者の作文における漢語使用の実態:『日本語学習者書き言葉コーパス』を用いた調査

D2 肖锦莲
BCCWJ ブログデータに基づくヘッジ/ヘッジの使用実態の解明

M2 石田麻衣子
小学校英語教育を見据えた基本名詞の用法の検討:コロケーションと文型の観点から―小・中教科書コーパスと段階別読解教材コーパスを組み合わせた検討―

大学に通えない異常な状態が長く続いていますが,D3は博論,D2は基礎論,M2は修論の提出に向かって,頑張っていただきたいです!


2020/05/24

2020.5.24 いわゆる9月入学について

本件について,言語教育の研究者の一人として,私見をまとめます。

1)本来,学年というのは何月に始まっても大差ない(だからこそ諸外国の年度開始は様々なのである)。桜が入学にふさわしいと言うが,モミジでも悪くないし,夏の入道雲でも悪くない。要は,情緒的なことを除き,学年を特定の月に始めるべきだという根拠はまったくない。

2)9月入学にすれば,海外主要国の学年と揃い,留学生の往来が活発化し,日本がグローバル化するというようなことを言う人もいるが,大学の現場を知る者から見て,そのような変化はあり得ない(留学について言えば,行きたい人はいつでも行く,行きたくない人はいつでも行かない。受け入れも同じである)。繰り返すが,4月であれ,9月であれ,あるいは,3月であれ12月であれ,ある特定の月に学年を始めたら何らかの明確な利点ないし欠点がある,などということは考えられない。

3)つまり,一般論的に,4月開始がよいか,9月開始がよいかを比較するのはナンセンスである。どちらも別に良くも悪くもないからである。ただ,《現状を変える》ほうが手間がかかるので,このように比較すると,論理的に,4月開始「のままがよい」ということになる。(これは4月がよいということではなく,手間とコストがいらないという点で,「今のままがよい」「変えないほうがよい」ことを意味するだけである)。

4)今,考えるべきは,少なくとも4か月分((部分的な)休校が3~6月として)のこどもの学びが奪われている状況に対して,「今年度の児童・生徒を2021年の3月に次の学年に進級させる」か,「不足した学習時間を取り戻せるよう,不足した時間の分だけ学習期間を後に延ばす」か,「それ以外の救済策を実行する」かである。

5)「今年度の児童・生徒を2021年の3月に次の学年に進級させる」ことを選ぶ場合,児童・生徒の進級・進学権利の保障を行うには,(a)年度内に学ぶべき学習内容を減らしてよいことにする,(b)入試などの範囲をそれにあわせて減らす,という2つの手段(あるいは両方の組み合わせ)しかない。実際,文科省は,大学に対して,教員免許取得に義務付けられた教育実習期間の削減を認めており,入試での配慮も通達している。

6)しかし,こうした措置を取ることの真の意味は,<2020年度の各学年級の子供は,本来学ぶべきことの一部を学ばないでいい>ことを公式に認める,ことに他ならない。弾力的措置と言えば聞こえはよいが,オブラートを取り去れば,履修すべき内容の未履修状態を黙認化することである。

7)学ぶべき内容を厳密に定め,そこに法的な強制力を持たせている指導要領のありかた,さらには,児童・生徒の学ぶ権利の保障という観点に立つと,5)は無理筋である。2006年前後に発覚したいわゆる高校未履修問題でも,指導要領で定められた内容はカバーしなければならないとして,不足分の補習が義務付けられた。この時,超法規的に「単位あたり35時間」というルールを緩和したが,責任を感じた校長の自殺という痛ましい事態にまで発展したことは記憶されるべきである。

8)次の学年で復習すればよい,というような言説もあるが,次の学年は次の学年でやるべきことが詰まっている。つまり,5)を認めると,2020年度生だけ,学習内容の削減が生じ,その差は,前後の学年と比較して,生涯,不利な要因として残る。

9)あえて極端に単純化した例として,ある入学年次のこどもだけ,日本史で学ぶべき内容の一部(たとえば安土桃山時代)をすっとばすことが許され,それにより,生涯にわたり,安土桃山を知らないこども(=将来の大人)が発生する,というようなことが許されるか,と考えると,これは無理筋だとわかるだろう。

10)9月移行に反対する人たちは,準備時間の不足,一時的な児童・生徒数の増加,コストなどを指摘するが,これらはすべてその通りである。しかし,4月年度開始を維持しながら,<2020年度のこどもが学ぶべきことを学べないままになる>問題にどう対応するのか,の答えは出ていない。

11)繰り返すが,今議論すべきは,年度開始は4月がいいか9月がいいかという一般論的な選択ではない。2020年度のこどもの進級・進学権利と同時に,こどもの学習権利の保障をどのように行うのか?の一点である。

12)筆者は,9月入学論者ではないが,小中高の現場とかかわりの深い教育研究者の一人として,強制的に奪われた4か月間の学び(もちろん,遊びやクラブや行事も学びの一部と考える)を取り戻す方法を考えた場合,《減った分の時間だけ,後に伸ばす》以外の解決はどうしても思いつけない。こどもの教育は促成栽培化できない(できるならすでにやっている)。

13)そうだとすると,「コストもかかり,現場の混乱も必至ではあるが,その制約の中で,年度の変更をどうやって実現するか」という議論を進めていくほうが現実的であり建設的だろう。

14)時間もない中で,かみ合わない不毛な議論を続けるのは無益である。4月入学論者(現行の年度を変えずに対応すべきという主張)には,それでは2020年度のこどもの学習権をどうやって保障するのか,ということを考えていただきたい。日本教育学会は,年度を変えないでも<ICT導入・家計補助・カウンセラー配置>の3点セットで問題が相対的に低コストで解決できると述べておられるが,失礼ながら,こどもの学習権の保護という点を軽く見すぎているのではないかと感じる。一方,9月入学論者には,グローバル化云々という根拠の希薄な議論はお控えいただき(現在,9月入学の諸外国がコロナ対応で年度をずらしたらどうするのだろう?),コスト問題を極小化する具体策をお考えいただきたい。

 要は,目の前のこどもをどう確実に救うか,失われた授業はもちろん,失われた甲子園と春高とNコンと運動会と音楽界と遠足をどう取り戻すのか,その一点にしぼって議論いただきたいと強く思う。











2020/05/06

2020.5.6 研究メモ:BNCのspokenのテキストサンプル数について

コーパス言語学の概説書の校正作業中ですが,作業過程で,以下に気づいたのでメモとして残します。

BNC XML版のユーザーガイドより(Lou Burnard, 2007)
http://www.natcorp.ox.ac.uk/docs/URG/BNCdes.html

図版出典:上記URL

・1.5.2.3 Composition of the spoken componentの冒頭に,context-governedのテキストサンプル数について,「A total of 757 texts (6,153,671 words) make up the context-governed part of the corpus.」という記述がある。

・その直下にTable 16があり,内訳が出ているが,示された数字を足し算すると,context-governedのサンプル数は755となってなぜか計算が合わない。

・さらにその下にはdemographic+context-governedの両方をあわせた内訳が載っているが,その合計は 908になっている(Table 17/18とも数字は一致)

・そこで1.5.1のdemographicのほうの解説に戻ると,Table 13~15に全協力者の内訳表があり,合計すると153となる(3つの表で一致)。

・その上に下記の説明がある。
124 adults (aged 15+) were recruited... Additional recordings were gathered for the BNC as part of the University of Bergen COLT Teenager Language Project. This project used the same recording methods and transcription scheme as the BNC, but selected only respondents aged 16 or below.
つまり,15歳以上の独自に集めた協力者124人+COLTで集めた若者29人=153人かと推測される。

・上記を踏まえ,demographicの側のサンプル数を153とすると,
   Table 16に従った場合    153+755=908
   1.5.2.3の説明に従った場合   153+757=910
となり,前者の場合が,Table 17/18の数値に一致する。

・ゆえに,仮ではあるが,153+"755"と判断しておく。(実際のデータで後で確認要)