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2018/11/29

2018.11.29 大阪大学マルチリンガルセンター講演会

大阪大学マルチリンガル教育センターFD講演会
2018年11月29日 (木) 15:00 から 17:00

第一部: 神戸大学の石川慎一郎先生による講演
「受信から発信へ:日本人英語学習者の課題をどう 乗り越えるか ― 国際学習者コーパス研究の最前線 ー」

 第二部:情報交換会
アカデミック・イングリッシュスキルの涵養を目指されている 神戸大学での英語教育の取り組みを、外部試験や必修単位 などのトピックを含めてざっくばらんにお話しいただきます。



阪大は,新しいセンターを立ち上げて,若い先生がたが大学英語教育の改革に精力的に取り組んでおられます。神戸大で新しいセンターを作ったころ(15年ほど前?)と同じような前向きな雰囲気に,大きな刺激をいただきました。


2018/11/26

2018.11.26 神戸大学附属小学校新英語カリキュラム開発会議

神戸大学附属小学校英語カリキュラム開発会議
2-18/11/26 1640-1900 @神戸大石川研究室

附属の先生6名が来室され,今後のカリキュラム・教材開発について議論を行いました。私からは,中学校1~2年の英語教科書をよく分析し,適切なタスクを開発することの重要性を述べました。また,小学校ではこれまで英語そのものを扱うことに及び腰な姿勢が見られますが,新課程(の高学年授業)では英語についてもある程度きちんととりあげていくことが必要になるでしょう。

石川サンプル(単元:世界のスポーツ(球技)を知る)

Aim
◎世界の球技を知り,共通点と相違点を理解しよう。
◎球技のやり方を英語で説明する方法を理解しよう。
◎日本の球技を世界のおともだちに紹介しよう。

Today’s Skit
Do you know chinlone? Chinlone is a Myanmarese ball game. In Myanmar, people learn how to play chinlone at schools. Players must continue to kick and hit the ball. They may use feet, shoulders, head, back, hips, and elbows. However, they may not use their hands. Do you want to play chinlone?

Words
(Nouns) chinlone, Myanmar, people
(Verbs) learn, play, continue, use
(Adjectives) Myanmanese
(Others)how, must, however

Pronunciation Clinic
chinlone [ts] 日本語の「チ」とどこが違うかな?

Expressions
・Do you know...? あなたは~を知っていますか?
  Do you know it? それを知っていますか?
  Do you know me? 僕のこと知っている?
  Do you know (about) Akashi? 明石って知っている?
・how to play chinlone チンロンのやり方
  how to do play kendama けん玉のやり方
  how to swim 泳ぎ方
  how to go to Tokyo 東京への行き方
・continue to kick けり続ける(go on kicking)
  continue to study 勉強をやり続ける
  continue to sing songs 歌を歌い続ける
・must continue 続けないといけない
  You must continue to study. 勉強を続けないといけない。
     You must continue to run. 走り続けないといけない。
・may use... ~を使ってもよい
   You may use a dictionary. 辞書を使ってもいいですよ。
   You may not use a smartphone at schools. 学校でスマホを使ってはダメです。
       May I go to the rest room now? 今トイレに行ってもいいですか?
       Do you want to play...? あなたは~をやりたいですか?
   Do you want to eat lunch now? お昼ご飯を食べたいですか?
   Do you want to play outside? 外で(校庭で)遊びたいですか?

Enjoy the conversation
A: Now you have to choose one from three: volleyball, handball, and soccer. Do you understand?
B: OK. Let’s begin.
A: You may use your XXX. You may use your YYY. But you may not use your ZZZ.
A: What sport do I talk about?
B: Volleyball!
A: That’s correct. Congratulation! / Sorry. That’s not correct. Try it again!

Let’s know about the world
1 Where is Myanmmar?
アジアの地図を見せて国の場所に色をつける

2 Listen to the teacher's talk and fill-out blanks.
ミャンマーの人口は約(   )万人。首都は(   )で,人々は(   )語を話している。( )や宝石の( )が取れることで知られる。


2018/11/22

2018.11.22 西宮市立北六甲小学校英語教育公開研究会

表記で講演を行いました。

演題 小学校中学年における英語指導の在り方~理念から固める~
講師 石川慎一郎(神戸大学教授)

講演では,授業を視察した後,改善のヒントについてお話しました。大変工夫されたすばらしい授業でしたが,タスクを工夫することでさらなる改善も可能だと思われます。

英語を多く使う,楽しいコミュニケーションを行う,といったことはもちろん大事ですが,小学校英語の実践では,それらに負けず劣らず,タスクがコミュニケーションとしてまっとうなものになっているかどうかが問われます。

たとえば,「数字を教える」という教師側のミッションがあり,「カレーを作るので八百屋に野菜をあわせて3個買いにいく」というタスクを考えるとします。工夫されたタスクと言えますが,いっぽうで,

1)そもそも(スーパーでなく)「八百屋」に行くという概念が今の小学生にリアルだろうか?
2)多くの店では野菜はパックにいつか入って売っており数を指定して買うということはリアルだろうか?
3)カレーを作るのに肉でなく野菜だけの買い物を行わせることはリアルだろうか?
4)そもそもなぜ英語で野菜を買いに行くのだろう?今はどこにいるのだろう?

というような素朴な疑問も残ります。これらの点が子どもの側で真の意味で腑に落ちていないと,コミュニケーションは,一気にトレーニングに転落します。

要は,数を使わせたいという授業の狙いと,採用したタスクが論理的に整合しているかどうかがポイントということになりそうです。

こちらの学校の実践は大変ハイレベルなので,年明けの次回訪問を今から楽しみにしています。


2018/11/20

2018.11.20 尼崎市立園田中学校公開研究授業講話

表記で英語の授業を視察し,新指導要領が重視するアクティブラーニングの観点から,講話を行いました。

当日は,動名詞の導入の授業で,担当の先生はよく工夫された授業を公開しておいででした。

下記は,様々な動詞のing形を生徒に板書させ,先生が解説しておられるところです。



たとえば,上記1つ取り上げても,なぜstudyの3単現はstudiesなのに動名詞はstudyingなのか,なぜrunは*runingでなくrunningなのか,など,生徒が素朴な疑問を持つポイントが多くあります。こうした小さな躓きを取り上げて議論のテーマとする,そうした形のアクティブラーニングも可能なのではないか,ということを講話では話しました。

そのほか,動名詞とto不定詞の違いなど,ちょっと立ち止まって考えさえたい「アクティブラーニングポイント」は授業の各所に潜んでいます。


ALの授業では,単にタスクを詰め込んで授業を盛り上げるということだけでなく,こうした生徒の小さい戸惑いや違和感をうまくとらえて,協働の学びの土台に乗せ,それによって集団全体の理解をしっかり深めるよう留意が必要です。ALは「遊ばせる指導」だという方がいますが,本来のAL,とくに,深いAL(Deep Active Learning:DAL)は,基礎学力を定着させる確かな方法論でもあります。

先生方の授業改善に,また,生徒さんの学びの質の向上に,何らかの形でお役に立てば幸いです。


2018/11/09

2018.11.9-10 2nd Women in TESOL Conferenceで研究発表(フィリピン,クラーク)

Women in TESOL 2nd Conference(フィリピン,クラーク)で研究発表を行いました。

発表題目:Do male students require and female students accept?
発表者:Shin'ichiro Ishikawa (Kobe University)



今回は,現在開発中のICNALE Spoken Dialogueの説得タスク(頑固なレストランの主人に返金を要求する)における発話者の性差の問題を扱いました。こうした比較では,性差とともに習熟度の差を検討する必要があります。

この分析では,男性の上級・中級・初級,女性の上級・中級・初級の語彙使用を調べ,6群に対して多変表解析を適用し,性別で分かれるのか,レベルで分かれるのかを観察しました。

その結果,性別で分かれることが証明され,非母語話者であっても,性差が説得場面での言語使用に本質的な影響を及ぼしている可能性が示されました。


ICNALEのSpoken Dialogueはさまざまなタスクが含まれているので,タスクごとに解析を行うことで,幅広いSLAの研究課題に対応した研究の実践が可能になります。



2018/11/03

2018.11.3 神戸大学附属小学校平成30年度研究発表会講話

下記に参加し,講話を行いました。

神戸大学附属小学校平成30年度研究発表会
研究課題:他者と対話的な関係を築き,「納得解」を創造する子ども(第2年次)
−「他者」「自己」「対象」との対話を視点にした授業づくり−
2018/11/3

石川は,同学校のグローバル科(一般校の外国語活動・外国語科に相当)のカリキュラム設計を行っており,当日は開発中の新カリの授業実践を視察し,講評を行いました。


当日の授業は「グローバル科」の小4生対象のもので,トピックに軸足を置き,世界の複数の地域を比較する「トピック&エリアスタディ」の実践として,世界の球技を取り上げた単元の一部でした。

子ども達は,一定量の英語を読み,話す活動を行うだけでなく,世界には自分が知らない球技が数多く存在することや,知らない球技を調べて英語で発表する活動を通して,英語力とグローバルキャリア人の基礎的能力を並行的に涵養していきます。

協議会(事後研)風景


課題はもちろんたくさん残っていますが,それでも,新しいカリキュラムが一定の形を見せ始め,児童に一定の影響を与えつつあることが確認でき,実り多い1日でした。

附属小のグローバル科の新カリキュラム構想に関する関連論文はこちら

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ちょうど,この前日に,学内で開催された「明治期の神戸と神戸大学展」を参観しました。そこでは,附属学校に関係する展示もありました。

備忘録として(※当日配布された資料より附属関係事項を抜粋)
1874(M7)10月:兵庫県師範伝習所が神戸元町に開所。
1877(M10)1月:兵庫県師範伝習所が神戸師範学校に改称。
1878(M11)4月:神戸師範学校附属小学校開校。
1886(M19)4月:師範学校令により神戸師範学校が兵庫県尋常師範学校に改組。
1898(M31)4月:師範教育令により兵庫県尋常師範学校が兵庫県師範学校に改称。御影に移転。
1900(M33)2月:兵庫県第二師範学校が姫路に設置。兵庫県師範学校が兵庫県第一師範学校と改称。
1901(M34)8月:兵庫県第一師範学校が兵庫県御影師範学校に,同第二師範学校が兵庫県姫路師範学校に改称。
1902(M35)2月:兵庫県明石女子師範学校が明石に設置。
1903(M36)3月:姫路師範学校附属小学校設置。
1904(M37)9月:兵庫県明石女子師範学校附属小学校・幼稚園が設置。
1912(T01)12月:兵庫県明石女子師範学校附属小学校及川平治主事による「分団式動的教育法」刊行。(参考

現在の神戸大学国際人間科学部(※旧教育学部→発達科学部),および,神戸大学大学教育推進機構(※旧教養部)のルーツは,M7設置の兵庫県師範伝習所です。約145年の歴史が流れています。

現在の附属小のルーツは1878年の神戸師範学校附属小学校ですが,明石地区での教育実践ということに限れば,直接のルーツは1903年の兵庫県姫路師範学校附属小学校となりそうです。当日は,明石女子師範に掲げられていた「六婦人の肖像画の屏風」が展示されていました。当時の女子師範では,教員志望の女子に対して,神功皇后(身重でありながら新羅に出兵して勝利)・滝鶴台夫人(赤と白の毬を用意し,善行すれば白い毬を,悪行すれば赤い毬を巻いて日々「振り返り」)・松下禅尼(障子の切り貼りで節約)・山内一豊夫人(夫の出世を支援)・紫式部楠木正行母(父を失ってショックの息子の自殺を阻止)の6名をロールモデルとしていたそうです。今の基準から見れば突っ込みどころが満載ですが,一つの時代の姿として。附属の「ふりかえり」は伝統(最近は神戸大学本体にも普及)なので,個人的には,滝鶴台夫人からの思わぬリンクに興味をそそられました。大学でも,振り返りを行わせるオンラインインタフェースに,白い毬と赤い毬を選ばせるようにしてはどうかな?