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2018/05/27

2018.5.27 日本経済政策学会企画シンポ講演

日本経済政策学会第 75 回全国大会
大会テーマ「安倍政権における経済政策(アベノミクス)の評価と今後の指針」

2018/5/27 1030-1230
同志社大学良心館3 階 303 教室
AⅡ-4 チュートリアル セッション
英語論文の書き方と国際学会発表の仕方
座長 柳川隆(神戸大学)

講演者 保田幸子(神戸大学,学術英語学会代議員)
「読み手を導く英語論文の書き方(Academic writing for an audience: Crafting your writing to meet their needs)」
講演者 石川慎一郎(神戸大学,学術英語学会アドヴァイザー)「Academic Presentations as Logical Storytelling」
討論者 小澤太郎(慶應義塾大学)

石川の発表では,当初,英語発表のhow toについて話す予定でしたが,企画趣旨をふまえ,日本の学会の英語化促進への課題について私見を述べさせていただきました。



2018/05/26

2018.5.26 高知大学国際連携推進センター講演会

高知大学2018年度国際連携推進センター主催 講演会&ワークショップ
「日本語・日本語教育研究の新視点――コーパスから得られる言語事実を立脚点として」
日時 2018年5月26日(土)1330~1710(講演+ワークショップ)
会場 高知大学朝倉キャンパス
講師 石川慎一郎先生(神戸大学教授)

表記で講演とワークショップを行いました。当日は60名程度の高知の日本語教師や日本語専攻の学生・院生の皆さんのご参加があり,充実した時間を持つことができました。




高知空港の鳴子(シュール・・・)


2018/05/21

2018.5.21 小学校英語教材出版企画会議

東京から出版社のスタッフが当研究室に来訪され,今後の小学校英語の支援教材の在り方について意見交換を行いました。

高学年での英語の教科化,また,中学年への引き下げ化の中で,信頼できる教材へのニーズが高まっています。

一方,どのような教材が求められているのか,指定教科書とどうすみ分けていけばいいのか,語彙の水準はどう考えればよいのか,中学英語の単純な引き下ろしでよいのかなどなど,多くの課題が残され,しかも,共通理解はいまだ醸成されていません。

応用言語学者は,これまで,大学の中に引きこもって,外に向かって文句ばかり言ってきたという一面があります。しかし,今後は,積極的に社会に出て行って,現場の先生がたや教材開発業者の皆さんと交流を深め,コラボレーションによって教育の実際的な質を高めていく必要があるでしょう。そもそも応用言語学とはそうした学問として創始されたはずで,問われているのは「原点への回帰」ではないかと考えています。

小学校中学年用外国語活動教材We canより
リンク

2018/05/20

2018.5.20 大学英語教育学会理事会参加

表記に参加し,主な議題について討議しました。

一般論ですが,

1)膨大な仕事のうち,どこまでも会員の奉仕で賄うか,どこからを外注するか
2)支部を置く場合,何を基準に資金を配分すべきか
3)大会の開催において,年々高騰する会場費をどう賄っていくか
4)企業との連携をどう進めるか

といった課題は,多くの学会で共通して話題とされており,ある意味,分野を問わず,日本の学会の共通課題と言えると思われます。

実は,同じ問題は昔からあったのですが,これまでは,全国的に大学院生数が年々増加し,学会の会員数が継続的に増加していたため,問題が顕在化していなかったという面があります。

しかし,そうした過去の人口ボーナスが人口オーナスに代わりつつある現在,積み残してきた多くの問題が一気に顕在化しつつあります。また,簡単に海外の学会に参加できるようになった現代において,国内に学会がこんなにも数多く必要なのだろうかという本質的な疑問も少なからぬ若手から呈されています。

学会は学者が集う1つの社会ですが,そこには,必然的に,日本社会全体の問題が立ち現れています。

2018/05/18

2018.5.18 兵庫県立伊丹高校SGH講演会

 表記において,1年生全員を対象に,SGH(スーパーグローバルハイスクール)事業における「探究活動」の進め方について講演を行いました。

「探究」は,日々の教科の学習成果を統合するもので,総合的な学力の開発と,基盤的な認知能力(しらべる,まとめる,見通す,伝える etc)の育成に大きな効果を持ちます。「ポストAI時代」を担う骨太の人材を育成しようとする高校にとって,探究活動は,今後,指導の大きな柱になっていくものであると言えるでしょう。

演題:「県高生のための研究生活入門」

講演では,高校生のための研究がどういうものであるのか,どうテーマを選べばいいのか,について,具体例を交えてお話をさせていただきました。


2018/05/17

2018.5.17 附属小学校「グローバル科」授業指導

表記授業を視察し,助言を行いました。

神戸大附属小では,一般校で言う英語の授業に代えて,「グローバル科」という新しい科目を独自に設定しています。そこでは,単に英語のスキルを指導するだけでなく,英語を手段として内容(世界の地域学習+グローバル社会に関係するトピック学習)を学ぶという意欲的な取り組みが進められています。

本日は授業実践の1つを視察し,今後の展開について助言を行いました。視察した授業は,アメリカに関係するもので,同国の有名人を取り上げ,発問役の児童がI am from ... I was born in... I created/made ...などの自己紹介を行い,Who am I? で相手に発問するというもので,英語表現を身に付けつつ,アメリカの文化・社会に影響を及ぼしたさまざまな人物についての知見を深めるという意欲的なものでした。

一方,今後,考えたい点としては,(1)内容重視の理念を守りながら,英語の実力をどうつけていくか,(2)クラスの中の児童の英語力のばらつきにどう対処するか,(3)学習の成果をどう評価するか,(4)どこまで内容学習に踏み込んでいくか,などが挙げられます。附小実践の今後の展開が大いに期待されます。


2018/05/14

2018.5.12 迫田科研学習者コーパス研究会参加

学習者コーパス研究会5月例会に参加しました。

日時:2018年5月12日(土)10:30~12:30
場所:広島大学東京オフィス(408号)

発表
(1)発表者:砂川有里子先生・佐々木藍子「日本語の非流ちょう性─とぎれと延伸のタスク別調査─」

(2)発表者:迫田久美子先生「書くタスクと話すタスクの言語使用の違いープランニングの影響—」

******************************
聴講メモ(文責は報告者)

2本とも,いつもながら,精緻なデータ分析と重要な問題提起を含む,非常に興味深いご発表でした。自身のICNALEのDialogue分析にも大きなヒントを得ました。

(発表1)
・とぎれ(e.g.:食い荒らされ・・・た状態に/食べようとし・・・た),延伸(e.g.:週ふつか"あ"に・・・/自信ないん"n"ですよね"え")は非流暢性マーカー
・膠着語がどうかで2つのタイプの出現に差があるという先行研究
・I-JASの日本人母語話者ではどうか?
・タスク間(ST絵描写,RPロールプレイ)で差はあるか? その機能は?
・とぎれはST>RP,延伸はST<RP,とぎれ+延伸はST>RP
・ともに文節外(つまり文節切れ目)>文節内
・とぎれは独話で起こり主として言葉探し使用が中心,延伸は会話で起こり言葉探しよりも相手を意識したストラテジー使用が中心
・(感想)STとRPの切り分けのvalidity,トピック影響の統制,タグのvalidity

(発表2)
・産出にたっぷり時間があれば文法ミスは減りそうだが減らないものも(L2英語における不規則過去,冠詞)
・L2日本語の場合,助詞と動詞の自他は習得困難
・時間のあるWと時間のないSだと,Wのほうがミスが減るだろうか?
・助詞についてはそうは減らない(S-Wともミスというものが8割)
・自他については件数が少なく計量比較はまだ不適
・エラーについては総件数,全体に対する比率の両方を見るべき(迫田・長友1988)
・S-WとW-S,モード差と順序差はカウンターバランスで確認
・(感想)人は同じ課題を2度やるときにどういう心的機制が働くのだろうか?(飽きたからおざなりにやろう? 2回目こそ頑張ろう? 同じことをミスなく書こう? 2回目だから前とは違うことに挑戦してみよう?)

2018/05/09

2018.5.9 研究メモ:最近の欧州におけるコーパス研究の動向:LREC2018の発表論文から

The European Language Resources Association(ELRA)が主催する大規模な世界大会であるLRECが,2018年5月に日本で開催されました。石川は招待講演者として1日のみ参加させていただきましたが,会期中に本体会議だけで1119本の発表がありました(ポスター含む)。

上記のプログラムに検索をかけると,"corpus"の出現は196回。corpusの左端3語の共起語を機械的に検索し,手作業でフィルタリングしたところ,下記のような共起パタンが見えてきました。LRECが,そもそも教育系の発表が少なく,工学系言語処理の発表がメインであるという偏りはあるものの,ある程度,今のヨーロッパのコーパス研究の関心のありようを写し取っていると言ってよいでしょう。

(1) どの言語を対象とするとか
japanese 7
english 5
chinese 5
german 4
portuguese 3
french 3
vietnamese 2
spanish 2
polish 2
persian 2
italian 2
arabic 2
★開催地であった日本語,また,定番の英語を別にすれば,アジア圏言語では中国語とベトナム語のコーパス開発の報告がありました。

(2)どんなタイプの言語を対象とするか?
speech 9
dialogue 4
text 4
twitter 3
interaction 3
summarization 2
paraphrase 2
medical 2
learner 2
entity 2
document 2
dialect 2
blog 2
★(A)発話,対話,やりとり,(B)ツイッター,ブログ,(C)要約文,翻訳文,(D)その他:医療関係,学習者産出,方言,などの発表があり,数の上では(A)が多くなっています。我田引水ですが,対話を集めているICNALE Spoken Dialogueプロジェクトも,こうした欧州の研究トレンドに合致しているようです。このほか,named entity(固有表現抽出)のコーパスに関する発表などもありました。

(3)どのようにデータを収集・処理するか?
multimodal/ multi/ (multi-)modal 17
annotated 15
parallel 13
large/ (large-)scale 9
multilingual 3
bilingual 3
standard 2
crowdsourced 2
テキスト・音声・動画などを併存させるmulti-modal,品詞タグなどの言語情報などを埋め込むannotated,2言語(多くは対訳)以上を集めるparallel, bilingualあたりの発表が多いのは納得です。また,クラウドソーシングの手法を用いたコーパス収集の発表も見られました。





2018/05/08

2018.5.8 LREC- Oriental COCOSDA2018での基調講演

The European Language Resource Association (ELRA) の主催する大規模な国際会議Language Resources and Evaluation Conference(LREC)が2018年5月7日~12日にかけて,宮崎シーガイアフェニックスリゾートで開催されました。

石川は,上記の一環として開催されたOCOCOSDAの第21回会議で,基調講演を行いました。

The 21st Conference of the Oriental COCOSDA, International Committee for the Co-ordination and Standardisation of Speech Databases and Assessment Techniques
May 7-8, 2018, Phoenix Seagaia Convention Center, Miyazaki, Japan.



講演では,ICNALEの音声モジュールの分析の可能性についてお話させていただきました。

2018/05/05

2018. 5.5 研究メモ:日本語論文のcitation方式について

いくつかの学会で,ジャーナルの査読や編集の仕事をしています。教育系であれば,論文書式はアメリカ心理学会APA6で,というところが多いのですが,APA6では,日本語論文の引証書式は規定されておらず,そこをどうするかは,なかなか悩ましい問題です。

APA6の場合,たとえば,雑誌論文だと以下のような書式になります。

(0) APA6版
Ishikawa, S. (2017). How L2 learners’ critical thinking ability influences their L2 performance: A statistical approach. Advances in Social Science, Education and Humanities Research145, 70-75.

このルールというか,精神を,できる限り忠実に反映すると,日本語版の引証書式は以下のようになるでしょう。


(1) APA6にできるだけ似せた石川私案版
石川, S. (2017). 現代日本語における「デ」格の意味役割の再考:コーパス頻度調査に基づく用法記述の精緻化と認知的意味拡張モデルの検証. <it>計量国語学</it>31(2), 99-115. (※雑誌名の計量国語学はイタリック)

なかなかいいような気もしますが,日本語文で漢字をイタリックにしたり,日本人の姓名の名をイニシャル表記にすることには抵抗を感じる人が出てくる可能性はあります。

で,そこを「石川慎一郎」のようにフルで日本語にすると,論文名は「 」で括りたくなり,そうすると雑誌名は『 』で括りたくなり,さらには,31巻2号と書き出したくなります。ただ,そこまで変えてしまうと,もはやすっかり日本語なので,どうせなら,(2017)の括弧も全角の(2017)にしたくなりますし,日本語にない半角ピリオドも追放したくなるでしょう。。。

 この問題にどう対処するか。そこで,まずは,国内の英語教育系学会のジャーナルでの推奨書式を見てみることにします。


(2) 全国英語教育学会紀要(ARELE)書式
高田智子 (2015). 「小学校英語教育経験者の中学入学以降の文法獲得」『関東甲信越英語教育学会紀要』第19号, 34-56.   (※ARELE29号巻末p.330より)

ARELEでは,年号カッコは半角。カッコ後ピリあり。号数は「第~号」表記で,ぺ―ジ数後はピリのルールが採用されています。


(3) 外国語教育メディア学会(LET)紀要書式
石川慎一郎 (2013).「ICNALEを用いた中間言語対照分析研究入門:日本人学習者の『特徴語』を再考する」『英語教育』(大修館書店), 61(13), 64–66. (※学会ウェブサイト上のテンプレートより)

ここでは,巻号は日本語であってもAPAスタイルを踏襲することとされています。なお,雑誌名については,"定期刊行物は誌名だけで特定できない場合,( )で刊行所(学会・大学・出版社)を併記する。『**大学紀要』や『**学会論集』などの場合は不要。"という注記があります。これは,日本で刊行されている学術誌の名称の曖昧さ(雑誌名だけではどこが出している紀要なのか辿れない場合が多い)をふまえ,筆者が日本語のジャーナル論文の引用のあるべき姿として前々からあちこちで主張してきたことなのですが,もしそれをお聞き届くださったのなら光栄に思います。(ちなみに,書式見本に拙論が載っているのも光栄の極み・・・というかかなり恥ずかしいです。)


(4) 大学英語教育学会紀要書式
所 正文(1989)「職業意識の立体構造分析に関する試論」『応用心理学研究』No. 14, 1-11 (※学会ウェブサイト上のテンプレートより)

ここは,ARELEやLETと異なり,(1989)の後はピリなしです。で,巻号表記は,No. 14という新バージョンで,かつ,1-11の後にもピリなしです。No.というのが斬新ですが,ただ,これは,もしかすると,『応用心理学研究』という雑誌に採用された巻号ルールを踏襲したものかもしれません。そこで,同雑誌を確認すると,「~号」表記であることがわかりました。つまり,元の雑誌が号であろうとなんだろうと,No. という表記に変換するのが,JACET(本部)ルールだということになります。


(5) 全国語学教育学会(JALT)紀要書式
荒金房子. (2015). 「高等学校英語教科書に見られるオーラル活動とタスクの分析」 . 『植草学園大学研究紀要』, 第6巻, 99-107. 
(※JALTは公式のテンプレートが見つからなかったため,最近出たJALT Journal 39(2)号に掲載された日本語論文[福田・田村・栗田,2017]の文献表にある記載の一部を引用させていただきました。)

一見これまでのものと似ているようですが,年号の丸ガッコを全角にしていること,姓名の後にもピリオドを加えているところがほかとは異なります。また,「 」の終わりにピリオドを,『 』の終わりにカンマを付けていることも他とは異なり,全体として,私案の(1)同様,APAにかなり近づけたものだと言えます。一方,巻号はなぜか「第6巻」表記です。

                  ***

 さて,APAというのは,そもそもはアメリカの心理学会であるわけで,であれば,日本の心理学会の書式がお手本になるかもしれません。


(6) 日本心理学会
深谷 達史(2011a).科学的概念の学習における自己説明プロンプトの効果── SBF 理論に基づく介入── 認知科学,18,190-201.

小川 時洋・門地 里絵・菊谷 麻美・鈴木 直人(2000).一般感情尺度の作成 心理学研究,71,241-246.

(※日本心理学会「執筆・投稿のてびき(2015年改訂版)」p. 40より)

 さすが日心というべきか,かなり,APA6に似せてきました。ここでは,論文題目の「 」も,雑誌題目の『 』もすっかり外しています。また,巻号ページ表記もAPA6風です。ただ,論文題目と雑誌題目の間は,「,」などの記号はなく,全角スペースで処理しているようで,これは少し読みにくいかもしれません。

 なお,同学会の「執筆・投稿のてびき(2015年改訂版)」は,全体で79ページに及びます。科学研究の基盤として,学会全体で,論文の書式を非常に大事にしている姿勢が浮かびます。もう一つ,心理系のいろいろな学会の紀要書式を調べていて思ったのは,学会の多くが,それぞれ独自の書式を作るのではなく,日本心理学会の「執筆・投稿のてびき」に従え,としていることです。これにより,分野全体で,APAに規定されていない日本語文献の引用書式を協力して確立していく体制ができあがっています。

 英語教育の学界でも,どこか1つがリーダーになって,79ページ分の書式集を作り(!),それを他の学会が参照することで,少なくとも,分野内において,日本語論文引証方式を統一していくことが必要かもしれません。小さいことのようですが,学術研究の信頼性はこういうところから始まるような気がします(し,なにより,学会紀要編集委員の仕事の2割ぐらいがこれで楽になりそうです)。

※なお,応用言語学における論文の構成については,こちらもご覧ください。