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2017/03/31

2017.3.31 平成28年度(2016年度)活動記録

 本日で年度末ですので,部局に提出する教員評価用の活動報告をまとめました。

【研究活動への所感】
 平成28年度は,数年越しで取り組んでいた単著書がようやくまとまるなど,自分なりには一定の手ごたえもありましたが,一方で,研究費の不足もあり,かつて行っていた国際研究集会の企画・実施,海外研究者との共同研究などについては,必ずしも思ったように進められませんでした。また,勤務先が「クオータ制」(1学期を2つに割り,8週ごとに試験をして単位を出す)を導入したことで,学期中に開催される関連分野の海外学会への参加が事実上不可能になってしまい,海外との連携が弱まったことも反省点です。
 新年度は,現在手がけている科研の最終年度に当たりますので,学習者のL2産出の校閲データ収集プロジェクトを加速させ,年度内のオンライン公開につなげたいと思います。また,これまでに積み重ねてきたアジア圏学習者コーパスの分析結果を1つにまとめる仕事にも着手したいと考えています。

【教育活動への所感】
 平成28年度は,全学共通教育ベストティーチャー賞に前期・後期の2度にわたって選ばれるなど,これまで試行錯誤を重ねてきた授業の進め方に一定の手ごたえが感じられる年になりました。また,上記の受賞をきっかけに,自身の授業内容を紹介する講演の機会や,授業内容に基づく評価論の論文を書く機会が与えられ,これまでの授業設計を立ち止まって見つめ直すことができました。新年度については,大学英語教育の目的論に改めて立ち返り,目指すべき英語観や言語観について,授業の中で,理論的定義を学生と共有するプロセスをより明示的に行っていきたいと考えています。
 大学院教育については,6名のゼミ生(うち3名は研究生)を指導しましたが,M2生が無事に博士前期課程を修了し,3名の研究生が入学試験に合格することができました。また,M1生は初めての研究発表と論文投稿を行いました。ただ,研究の中身について,老婆心のゆえか,いささか細かく口を出しすぎた反省がありますので,新年度は,一定の距離を保ち,学生の自律的な力を引き出せるように指導していければと思っています。
 なお,本年度は,ゼミOBである2人の高校教諭とそれぞれ一緒に仕事を行う機会がありました。修了生の活躍と成長を間近に見ることができ,教師として幸せな経験でした。


平成28年度(2016年度)教員活動評価報告書

教 育
(全学共通授業科目担当)
年間9コマ担当:(English Communication,English Autonomous)
(大学院授業担当)
年間3コマ担当(※ゼミ除く)(国際文化学研究科):
博士前期課程 外国語教育内容論特殊講義Ⅰ,同演習
博士後期課程 外国語教育内容論特別演習

(修士論文指導)
主査2人指導,副査0人指導

(博士論文指導)
主査1人指導,副査0人指導

(教育活動・教育支援活動)
(個人)
・英語外部試験のスコア分析を行い,報告書を運営委員会に提出した
・English Autonomousのアンケート結果分析を行い,報告書を運営委員会に提出した
・神戸大学英語プレゼン/エッセイコンテストの企画・実施を行った
・図書館主催ライティングセミナーで講演を行った
・センター主催セミナー「講義英語化ワークショップ」で講演を行った
・外国語第1部会主催教員対象オリエンテーションで講演(授業デモ)を行った
(部門)
・部門業務としてセンターのピアレビューを企画・運営した
・部門業務として部門ブログを作成し,維持管理を行った
・部門業務として外部試験説明会を企画・実施した

(授業ピアレビュー,FD活動等)
・部門業務として平成28年度センターピアレビューを企画・運営した
・センターの外国語教育セミナーに参加した
・学外FDとして,大阪大学主催の評価論セミナー(テスト等化法)に参加した

(その他)
・ベストティーチャー賞,2016年度前期・2016年度後期(通算4回目)

研 究
単著書(1)
石川慎一郎『ベーシック応用言語学:L2の習得・処理・学習・教授・評価』ひつじ書房,全351p

共著書(分担執筆含)(2)
Joanna Szerszunowicz et al. (Eds) Intercontinental Dialogue on Phraseology Vol.3: Linguo-cultural Research on Phraseology (University of Bialystok Publishing House, Poland) 全599p(本人担当部:Ch. 6-3 "Japanese Polite Sentence-final Markers: desu, desuyo, desune, and desuyone A corpus-based analysis with a focus on frequency, collocation, and functional grouping" pp. 537-554)

大学英語教育基本語改訂特別委員会(編)『大学英語教育学会基本語リスト新JACET8000:The New JACET List of 8000 Basic Words』桐原書店,全160p(本人担当部:分割不可)

論文(査読あり)(4)
石川 慎一郎 「日本人学習者のL2英語の発話量:母語話者及びアジア圏学習者との比較」『日英言語文化研究』(日英言語文化学会)5, 15-26

Ishikawa Shin'ichiro “Strategy of identity-marking: A learner corpus-based study on use of the 1st person pronouns in L2 English essays/ speeches by Chinese, Japanese, and Korean learners.” Proceedings of The Sociolinguistic Society of Korea 2016 Autumn Conference, 91-106

Ishikawa Shin'ichiro “Use of That-Clauses After Reporting Verbs in Asian Learners’ Speech and Writing:  Frequency, Verb Type, and That-Omission”  In A. Moreno Ortiz & C.Pérez-Hernández (Eds.), EPiC Series in Language and Linguistics, 1 (CILC2016: 8th International Conference on Corpus Linguistics), 202-215

石川 慎一郎 「大学英語教育における形成的評価:統計手法を用いた形成的評価データの特性の解明」『大学教育研究』(神戸大学大学教育推進機構)25, 63-81

論文(査読なし)(7)
石川 慎一郎「アクティブラーニングの二重性:英語教育への示唆」『チャートネットワーク』(数研出版), 79, 1-4 【招待寄稿】

石川 慎一郎「キーコンピテンシーを志向したカリキュラムデザイン」『神戸大学附属小学校研究紀要』4(附属幼稚園研究紀要37号合併号), 170-180

石川 慎一郎「日本語学習者コーパスの教育応用における留意点―『多言語母語の日本語学習者横断コーパス』に見る母語話者L1産出データの安定性検証を中心に―」『言語資源活用ワークショップ2016発表論文集』(国立国語研究所)190-200

石川 慎一郎「多様な外国語学習者の言語使用特性:中国人英語/日本語学習者の過剰・過小使用語彙」『第2回学習者コーパスワークショップ予稿集:学習者コーパス利用の可能性を考える』(国立国語研究所)57-68

石川 慎一郎/田中 泰明「高校英語教育におけるアクティブラーニングの可能性:小学校での英語発音指導体験がL2発音に対する高校生の興味・自信に及ぼす影響」 『統計数理研究所共同研究リポート』373/374, 43-54

石川 慎一郎「X々型畳語の構造・使用・意味特性―「現代日本語書き言葉均衡コーパス」を用いた計量的調査―」『統計数理研究所共同研究リポート』373/374, 55-74

増見 敦/石川 慎一郎「日本人高校生のL2英語発話の流暢性を高める フィードバックのあり方 ―自己評価・ピア評価・指導者評価の有効性の検証―」『神戸大学国際コミュニケーションセンター論集』13, 76-89

(招待講演・招待発表)(10)
石川 慎一郎/学習者コーパスとSLA研究:L2運用の可視化を目指して/日本第二言語習得学会(J-SLA)初夏研修会/2016/6/19

石川 慎一郎/資質・能力を志向する 神戸大附属幼小連携教育の実化 ―せかい領域,英語科を通して―/神戸大学附属小学校授業研究会/2016/6/24

石川 慎一郎/Strategy of identity-marking: A learner corpus-based study on use of the 1st person pronouns in L2 English essays/ speeches by Chinese, Japanese, and Korean learners2016/11/12/The Sociolinguistic Society of Korea(韓国社会言語学会)2016年度秋季学術大会/2016/11/12

石川 慎一郎/L2作文の指導:学習者コーパスからの知見を教育現場にどう生かすか/広島大学総合科学部「言語と情報プロジェクト」公開講演会/2016/11/17

石川 慎一郎/世界の学習者コーパス研究の現状と日本語学習者コーパスへの期待/中国湖南大学コーパス言語学特別セミナー/2016/11/26

石川 慎一郎/ワークショップ:コーパスから得られた頻度をどう処理するか/中国湖南大学コーパス言語学特別セミナー/2016/11/27

石川 慎一郎/世界の英語学習者コーパス研究の潮流:HowからWhyへ/国立国語研究所第1回学習者コーパスワークショップ/2016/12/3

石川 慎一郎/アクティブラーニングと思考力開発/兵庫県立伊丹高等学校SGH講演会/2017/2/20

石川 慎一郎/ESPと語彙:言語資源からの語彙選定の方法を考える/JACET関西支部ESP研究会/2017/2/25

石川 慎一郎/外国語教育とアクティブラーニング:「深い学び」を目指して~教科書づくり・授業づくりの現場から~/甲南大学言語教授法・カリキュラム開発研究会特別研究会/2017/3/21

(口頭発表)(10)
石川 慎一郎/Critical Thinking Skills, Rote Memory Recall, and L2 English Proficiency: A Case-study on Japanese College Students/中部地区英語教育学会第34回大会/2016/6/26

石川 慎一郎他/シンポジウム 東アジアの言語研究とL2教育研究~コーパスが拓く学際研究の領野~/大学英語教育学会東アジア英語教育研究会 第166回例会/2016/7/16

石川 慎一郎/Grammatical and Contextual Correctness in L2 Writing:  An Analysis of the ICNALE-Proofread,  A Newly Designed Parallel Corpus Including Learners’ Original and Edited Essays  /全国英語教育学会第42回埼玉大会/2016/8/21

石川 慎一郎/3つの作⽂評価法: ばらつきが⼩さく 精度が⾼いのはどれか/統計数理研究所言語系共同研究グループ研修会/2016/8/29

石川 慎一郎他/基本語改訂特別委員会報告  『大学英語教育学会基本語リスト: 新JACET8000』の特徴と活用/大学英語教育学会第55回国際大会/2016/9/1

石川 慎一郎/Use of genitives in  L1 and L2 English discourses/The 7th Brno Conference on linguistics studies in English/2016/9/12

石川 慎一郎/Can a tense/ aspect variety  be an index for L2 learners’ proficiency?  /The 3rd Asia Pacific Corpus Linguistics Conference/2016/10/21

石川 慎一郎/日本語学習者コーパスの教育応用における留意点―『多言語母語の日本語学習者 横断コーパス 』に見る母語話者 L1産出データの安定性検証を中心に―/言語資源活用ワークショップ2016/2017/3/7

石川 慎一郎他/シンポジウム:「多様な外国語学習者の言使用特性-中国人英語 /日本語学習者の過剰・過小使用語彙 -」/国立国語研究所第2回学習者コーパスワークショップ/20173/10

石川 慎一郎/X々型畳語の構造・使用・意味特性  ―「現代日本語書き言葉均衡コーパス」 を用いた計量的調査―/統計数理研究所「言語研究と統計2017」/2017/3/27

(外部資金)
代表・個人分
科学研究費(挑戦的萌芽),アジア圏英語学習者の作文・発話の体系的修訂に基づく大規模校閲コーパスの開発と分析」(15K12909) (2015~2017年度)

統計数理研究所共同研究,統計的アプローチで探る応用言語学と外国語教育のインタフェース(28-共研-1030)

分担分
科学研究費(基盤A)海外連携による日本語学習者コーパスの構築および言語習得と教育への応用研究(代表:迫田久美子)2016~2019年度

(研究活動(大学・機構等の委託研究・調査等)
英語外部試験スコア分析
English Autonomous アンケート設計・結果分析

社会貢献 
(社会貢献,地域貢献等)
(学校関係)
・神戸大学附属幼稚園・小学校 文科省研究開発プロジェクト共同研究員
・神戸大学附属中等教育学校 SGH研究委員長
・私立西大和学園中学校・高校 SGH外部評価委員
・兵庫県教育委員会インスパイア―事業特別講師(兵庫県立西宮北高校,伊丹高校,津名高校,長田高校他)

(学会関係)
大学英語教育学会 学術交流委員会委員長
英語コーパス学会 理事
文体論学会 理事
学術英語学会 アカデミックアドバイザー
日英言語文化学会 評議員

管理運営 
(管理・運営業務)
・コンテンツ研究部門代表
・全学評価・FD委員会委員

(資格の取得状況,有資格者としての貢献等)
該当なし


2017/03/27

2017.3.27-28 統計数理研究所「言語研究と統計2017」発表

表記で発表を行いました。

石川慎一郎:「X々型畳語の構造・使用・意味特性」

概要:現代日本語書き言葉均衡コーパスの新聞・雑誌・白書・教科書データを用い,「人々」,「時々」,「我々」といった X々型畳語について,高頻度語形を特定した上で,構造(品詞成分,反復要素同一性,モーラ数,後接構造),使用(時代影響,ジャンル影響),意味の 3 点に関して調査を行った。その結果,高頻度語形としては「人々」「様々」「年々」等があり,それらに基づくと, X々型畳語は,構造的には名詞反復形が多く,完全畳語と部分畳語のトークン比率はほぼ同等で,モーラ数は 4 が基本で,主格名詞として機能するものより形容詞(句の一部)や副詞として機能するものが多いことがわかった。また,使用特性として,全体の頻度は過去 30 年間で増加傾向にあり,白書や教科書ではそれぞれ特有の畳語使用がなされていることがわかった。さらに,意味に関しては,「複数」が最も多く,「反復」,「個別」がそれに次ぐことが示された。また,先行研究で明示的に認定されていなかった用法として,レシピ等の中で語調を整えるための意味変化を伴わない畳語使用が確認された。





また,ゼミ生の中西淳さんが下記の内容で発表されました。

「日本人英語学習者による前置詞使用の計量的分析―学習者コーパス分析の結果をふまえて―」



「言語研究と統計」は,12年前から続けているイベントですが,今年は特に参加者が多く,2日間で160名以上の出席者がありました。



2017/03/23

2017.3.23 兵庫県立長田高等学校探究課程研究指導

 高校1年生の皆さんが出してきたグループ研究のテーマ構想について指導しました。

 こちらの学校では,2~4名程度のグループを組み,高2の1年間をかけて研究活動を行います。どのSGH校でもそうですが,理系の研究は標準的な実験デザインに落とし込みさえすれば,比較的出来栄えが揃ってきますが,一方,文系の研究の出来栄えは玉石混交となりがちです。

 文系研究を「玉」にするには,テーマ構想の段階でしっかりしたものを作っておくことが不可欠です。逆に言えば,テーマがいまいちだと,後で頑張ってもなかなか最終作品のクオリティが上がってきません。

 指導では,「Xについて」型テーマは,広すぎて,リサーチとしては望ましくないことを強調しました。

 たとえば,「ポケモンについて」だと,おそらく良い研究に仕上げるのは難しいでしょう。しかし,そこに比較の視点を取り込み,「ポケモンと妖怪ウォッチ」とすると,いくぶん方向性が見えてきます。さらにそこに副題をつけ,

「ポケモンと妖怪ウォッチ:海外で理解されやすいのはどちらか」
「ポケモンと妖怪ウォッチ:コンテンツビジネスに展開しやすいのはどちらか」
「ポケモンと妖怪ウォッチ:幼児の情操教育に有益なのはどちらか」
「ポケモン妖怪ウォッチ:ジェンダーステレオタイプを助長するのはどちらかか」
「ポケモンと妖怪ウォッチ:年齢層別に好まれるのはどちらか」

などとすると,方向性も明確になり,かつ,どのような実験and/or調査をすべきかがクリアになります。また,副題の付け方次第で,ビジネス,心理学,教育学,社会学,倫理学,様々な研究テーマへと発展させられます。

 リサーチにおいて,比較というのは強力な武器になります。高校生や大学生に研究活動を行わせるのは,個別の中身についての理解を深めさせるだけでなく,ものの見方や世界の切り取り方を学ばせる,という意味があります。長田生の皆さんの今後の研究の発展が期待されます。



2017/03/22

2017.3.22 神戸大学附属中等教育学校Kobe Proポスター発表会視察・講話

表記で講話を行いました。

附属中等では,中1~高3の6年間をかけて各自の探求活動を深め,18,000字の卒業論文にまとめます。生徒全員が取り組むプロジェクトとしては,質量ともに,全国でも指折りのものと言えるでしょう。


5年生(高2に相当)の160人の生徒さんは,一人も脱落することなく,3月までに16,000字の一次論文を提出の上,全員が本格的なポスター発表に取り組みました。この場で受けた意見やアドバイスをふまえ,6年生(高3)での最終版提出につなげていきます。

講話では,以下の諸点について注意喚起を行いました。

1. 聴衆の関心を惹きつけるテーマ・タイトルを
2. 明らかにしようとする問いを明確に
3. 新規性・独自性を明らかに
4. 自分の研究からみんなの研究へ(このテーマが社会全体に関係することを説明)
5. 自分の手と足でデータを集める

なお,160人分の論文のタイトル中の内容語をテストマイニングに欠けると以下のような結果になりました。


「今どきの高校生」と言えばどうも批判的なニュアンスがつきまといますが,附属生は,「今どきの高校生」らしからぬ大きな問題にしっかり正面から向き合っているようです。

2017/03/21

2017.3.21 甲南大学言語教授法カリキュラム開発研究会講演会

表記で講演を行いました。

甲南大学 言語教授法・カリキュラム開発研究会特別研究会
日時:2017/3/21 1230-1400
会場:甲南大学グローバルゾーンポルト
講演者:石川慎一郎(神戸大)
演題:外国語教育とアクティブラーニング:「深い学び」を目指して


講演では,アクティブラーニングとキーコンピテンシーの関係,キーコンピテンシーを開発する外国語授業・教材の在り方についてお話をさせていただきました。





このテーマについての関連論文
石川慎一郎(2016a)アクティブラーニングの二重性:英語教育への示唆『チャートネットワーク』(数研出版)79,1-4
石川慎一郎(2016b)キーコンピテンシーを志向したカリキュラムデザイン『神戸大学附属小学校研究紀要』4, 170-180
石川慎一郎/田中泰明(2017)高校英語教育におけるアクティブラーニングの可能性:小学校での英語発音指導体験がL2発音に対する高校生の興味・自信に及ぼす影響『統計数理研究所共同研究リポート』373/374, 43-54
石川慎一郎(2017a)大学英語教育における形成的評価:統計手法を用いた形成的評価データの特性の解明『大学教育研究』(神戸大学大学教育推進機構)25, 63-81
石川慎一郎(2017b 近刊)答えのない時代を生き抜く力をつける~英語指導で培うキーコンピテンシー~『チャートネットワーク』(数研出版)82,ページ数未定


2017/03/14

2017.3.14 神戸大学附属中等教育学校研究発表会

前期課程(一般の学校の中3相当)の研究発表会を視察し,講話を行いました。


優秀者発表会ということもありますが,どれもすばらしい力作で,今後の探求・研究活動の深化が楽しみな出来栄えでした。


講話では,ロジカルな議論の組み立て方の重要性を指摘しました。たとえば,A→BであったとしてもB→Aとは限らないこと,AとBが相関しているからといって,Aが原因となってBを引き起こすわけではないことなど,を明示的に理解していることが重要です。こうした指導は,ふだん,大学(院)生を対象に行っているもので,こうした指導を中学段階から受けている附属生の今後が本当に楽しみです。



2017/03/11

2017.3.11 JACET関西支部役員会・第3回講演会出席

表記に出席しました。

日 時 : 2017年3月11 日(土)
場 所 : 大阪電気通信大学 駅前キャンパス1階101多目的ホール
交通アクセス:京阪「寝屋川市駅」より徒歩3分 http://www.osakac.ac.jp/institution/campus/access/
講師:住吉 誠先生(摂南大学)
演題:規範と英語の実態ー動詞補部を中心に

住吉先生のご講演は,近年の「非文法的」な表現の増加を具体的に例示しつつ,狭量な文法観からの「解放」を訴えるもので,たいへん勉強になりました。
→ 住吉先生の近刊書はこちら

2017/03/10

2017.3.10 国立国語研究所第2回学習者コーパスワークショップ シンポジウム発表

表記で招待発表とシンポジウム討議を行いました。

日時 平成29年3月10日 (金) 10:30~17:30
場所 国立国語研究所 講堂・多目的室 (東京都立川市緑町10-2)

招待パネル「研究におけるコーパス利用の可能性と課題」
司会 : 迫田久美子
石川 慎一郎 (神戸大学 教授)
砂川 有里子 (筑波大学 名誉教授)
仁科 喜久子 (東京工業大学 名誉教授)
望月 圭子 (東京外国語大学 教授)



石川の発表演題:
多様な外国語学習者の言語使用特性―中国人英語/日本語学習者のL2過剰・過小使用語彙
~《異言語学習者コーパス連動分析》で蘇る(?)対照修辞学~

発表では,異なるL2を対象とする学習者コーパスを組み合わせて分析することで,伝統的な対照修辞学で得られた特定母語話者に対する知見の妥当性をverifyする可能性について報告しました。


2017/03/09

2017.3.8 大阪大学高等教育・入試研究開発センター第5回セミナー参加

下記セミナーに参加しました。

大阪大学高等教育・入試研究開発センター第5回HEADセミナー
テストデータをもっと活用できる等化の考え方

開催日時:2017年3月8日(水) 15:20~17:00
開催場所:大阪大学 吹田キャンパス 最先端医療イノベーションセンター棟 3階 演習室3/4
対象:大学入試に関わる大学教職員CHEGA専任・兼任教職員
講師:ベネッセ教育総合研究所 野澤雄樹 研究員
プログラム:
15:20開会の挨拶 
15:25講演 
16:25質疑応答 
16:55閉会の挨拶


聴講メモ
◆等化の5条件
1)同等の構成概念の測定
2)同等の信頼性
3)変換式の対称
4)特定の公平性
5)母集団を問わない変換式の適用性

◆類似概念
広義のリンキングの中に・・・
1)等化
2)コンコーダンス
3)狭義のリンキング

◆等化デザイン
1)ランダム群デザイン(α群がテストA,β群がテストBを受験。能力はα=β)
2)単一群デザイン(α群がテストA,β群がテストB,γ群がテストA&Bを受験)
3)共通項目不等価群デザイン(α群がテストA,β群がテストBを受験。テストABに共通問題を含む)
※石川補足 CEFRのcan-do statement決定の際のアンケートデザインは上記で言うと3)

◆異なる高校から集めた内申書の成績データを等化できるか
それぞれの学校の内申書をテストと見立てた場合,能力が同等ではないα,β,γ群が,それぞれ相互に関係していないテストA,B,Cを受験したようなデータ構造となるので等化は困難。センター試験等のテスト情報を噛ませることで処理ができる可能性もあるが,同じ高校の評定の厳しさが年度を超えて担保されていないのでやはり問題点が多い。


2017/03/07

2017.3.7 国立国語研究所言語資源活用ワークショップ2016で研究発表

表記で発表を行いました。

石川慎一郎(神戸大) 日本語学習者コーパスの教育応用における留意点―『多言語母語の日本語学習者横断コーパス』に見る母語話者L1産出データの安定性検証を中心に―

当日は,日本語学習者コーパスI-JASのデータを用い,我々が正確で安定的であると前提視している母語話者のL1産出が実際には想像以上の揺らぎと多様性を持ちうることを報告しました。


学習者コーパス研究では,NS/NNS比較を行ってNNSの特徴を抽出し,L2教育に役立てるということが一般的ですが,この時,比較の基準となるNSのL1産出をどう見るかは悩ましいポイントです。検討すべき問題は2つあります。

1つは,属性的多様性,つまり,さまざまNSがいる中で,どのような人を集めるのか,ということです。もっとも,この点については,古くはLeech(1988)の指摘もあり,学習者コーパス研究の側でもある程度の対応を考えてきています。たとえば,BNCのdemographic dataの作り方などが参考になるでしょう。

もう1つは,産出的多様性です。これは,仮に均質な母語話者を集めて統制的課題を与えたとしても,その産出には一定のブレが発生しうるという問題です。こちらは従来あまり論じられてきませんでした。



上図で,青をNS,赤をNNSとします。従来,学習者コーパス研究は,NNS側については,様々な要因(属性,習熟度,プロンプト等)でブレが生じうることを織り込んでおり,それらを「点」でなく「面」とみなしていましたが,NSについては安定的で収束的な「点」とみなすことが一般的でした。つまり,NSとNNSを「点」と「面」と見立てて比較を行ってきたわけです(上図の真ん中のパタン)。

しかし,今回のデータ分析で浮かび上がってきたのは,NSのL1産出にも相対的に大きなブレがあり,NS/NNS比較は,点と点,点と面ではなく,面と面とみなして実施すべきではないかということです。

面と面の比較を行うのだと考えれば,NS/NNS比較を行う際の統計的な道具だても連動して変化させる必要があるでしょう。発表では,この点に関して,カイ二乗統計量系の指標から分散分析系の指標(F値)に移行することを提案しました。

カイ二乗系の処理では,コーパスを1つのかたまりととらえ,総語数と当該語の頻度だけで議論を組みたてます。一方,分散分析系の処理では,個々のテキストごと,個々の書き手ごとに頻度を取得し,各々の群(たとえば,NS群およびNNS群)の内部的な分散を量化した上で,群間分散との比率で差異の問題を考えることができます。

※なお,上記のスライド中,3つの群の関係を示すイラストは,向後研究室のウェブサイトのイラストを加工して使わせていただいています。
http://kogolab.chillout.jp/elearn/hamburger/chap6/sec2.html

コーパス研究では,ソフトウェアで実装されたアルゴリズムをそのまま使うことが多く,特徴語の検出には原則としてカイ二乗系の指標を使ってきたわけですが,NS/NNS比較のように,それぞれ内部的な分散が大きいデータを比べて処理を行う場合,統計量の妥当性についても再検討の必要がありそうです。

おまけ
なお,今回からプロシーディングスが電子化されています。全体をテキスト化して,形態素をザクッと見てみました。こういう分析を経年的に行えば,国内の日本語学関連のコーパス研究の関心の推移などがわかるかもしれません。(KH Coderによる分析)

高頻度形態素(主要品詞)

共起ネットワーク分析




2017/03/06

2017.3.6 講義の英語化WS/英語担当教員会議デモンストレーション

(午前)
第23回外国語教育セミナー 大学教員のための「英語講義法」入門セミナーで講演

セミナーでは,以下のようなテーマについてお話しました。
 1.講義の英語化をめぐる現状
 2.英語化の問題点
 3.英語化の利点
 4.英語化を成功させるヒント

神戸大では工学研究科・工学部が英語化で全学をリードしています。


当日は,イタリアのミラノ工科大学裁判などの例も挙げ,英語化の問題点についても言及しながら英語化を進めるヒントをお話したつもりではありましたが,逆に,この問題には,教員間にも,いろいろな立場や見方があることを改めて確認する機会となりました。
(午後)
平成28年度外国語教育オリエンテーション外国語第1分科会でデモンストレーション

授業紹介では,授業実践の中で大切にしている5つのポイントについて紹介しました。聴講された方の何かのお役に立てば幸甚です。