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2018/07/13

2018.7.13 兵庫県立長田高等学校人文数理探究類型研究発表会

審査委員長として表記に参加し,審査と講評を行いました。

日時:2018年7月13日(金)13時~17時
会場:ピフレホール(神戸市長田区新長田駅前)
内容:探究類型生徒による英語での探究研究発表

探究類型とは,探究活動をメインに据えた専門課程で,毎週,探究力の強化に向けた授業や,学外研究者の講演等のプログラムが用意されています。

長田高校ウェブサイト内「H28年度パンフレット」より一部を引用
http://www.hyogo-c.ed.jp/~nagata-hs/

本日の発表会では,高校生諸君は,堂々とした立派な英語で発表を見事に乗り切りました。また,香りの効果を研究したグループが,発表の最後に,能力向上に役立つとされる柑橘系の香りを実際にホールじゅうに振りまいてみせるなど,高校生らしい演出も巧みでした。

発表演題
・An Ideal Conveyor Sushi Restaurant for High School Students: Proposals to increase sales

・Building a “Truly” Multi-ethnic Community: From the experience of the Hanshin-Awaji Earthquake to disasters in the future

・Beyond the Komyusho: Communication Ability as Interpreted by Teenagers and Its Context

・Making the Perfect Study Environment with fragrance

・Magic wallpaper : No more frustration while waiting

・The Effect of Noise on Work Efficiency

・Different Shaped Objects and Their Air Resistance

・On the Efficiency of Domestic Wind Power Generator

・A New Kind of Neutralization Titration

・Sunscreen Revolution:Evaluation of sunscreen effectiveness based on photolysis of Silver Chloride

・Purification of Pond Snails





もっとも,研究者の目線でみれば,当然ながら,個々の研究には,課題もなお多く残されています。

文科省の方針もあって,いわゆる探究活動は多くの高校(とくにいわゆる進学校)で導入が進んでいますが,出口で目指すイメージは必ずしもクリアではありません。

私見では,大別すると,2つのタイプの探求プログラムが存在します。

A)「研究」の型ないし枠を借りて,一般的なキーコンピテンシー(調査力,まとめ力,パワポ等の使い方の習熟,発表力,コミュニケーション力など)を伸ばす

B)純粋にプロに準じるレベルの「研究」を行わせ,大学入学後の研究活動にシームレスに連結する

枠組みが違えば,評価も異なります。たとえば,B)なのだとすれば,必要な統計も検定もかけずに数値を扱ったような研究は,すべて,門前払いとなるでしょう。

A)とB)は,どちらが良い/悪いという性質のものではありません。それぞれにメリットとデメリットがあります。どちらを目指すかは,個々の学校が,所有する設備,大学から(高校側の予算の範囲内で)受けられるサポートの量と質,探究活動に割ける物理的な時間,地域における学校の位置づけ,などを考慮しつつ,決めるべき事柄です。

問題は,多くの学校において,目指す地点が明示的に意識ないし定義されていないことです。<何を目指すのか>が明確でなければ,<そこに向けてどういう手立てを講じていくのか>も決まらず,結果として,<何を評価するのか>も決まりません。これでは,指導の先生も,また,生徒さんも,達成感を味わいにくいでしょう(一生懸命頑張ったのに,最後に評価されない,というのは避けたいです)。

日本の中等教育学校における探究活動は,導入期を経て,今後,実が問われる時代に入ってきます。各校は,これらの点について,それぞれの理念・校訓・歴史・ミッションなどを振り返りつつ,今まで以上に明確な姿勢を示すことが求められるでしょう。

最後の講演では,3年生になって探究プログラムを終了する諸君に,探究の学びは生涯終わらないこと,また,探究が生きることそのものであることをお話しました。


本日立派な発表をされた長田高校の生徒諸君の今後の飛躍と活躍を祈ります。