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2023/05/16

2023.5.15-17 SLLT2023(Kalisz, Poland)で研究発表

ポーランドのAdam Mickiewicz Universityで開催されたSecond Language Learning and Teaching: Taking Stock and Looking Aheadに参加し、研究発表を行いました。

学会サイト(写真は会場)

今回の発表では、新科研の方向性をふまえ、学習者の作文データに語彙文法タグを付与し、その観点から分類問題を再考した結果を報告しました。


Biberの6次元で学習者とNSの差異を見る

習熟度か、regionか?


地元ポーランドに加え、近隣のトルコなどの研究者から有意義な指摘やコメントをもらい、このテーマを論文化していくうえで大きなヒントを得ました。質問の多くは、1)母語か地域か、2)文化の影響は、というもので、このあたり、コーパス研究者としては意図的にふみこまないようにしている部分なのですが、まあ、そうもいっていられないよな、とあらためて感じた次第です。

この学会、応用言語学分野のオープンジャーナルで国際的にトップに近い位置にいるSLLTがベースになっており、invitedの顔ぶれも信じられないぐらいの豪華さで、いろいろな研究者の報告を聞くことも勉強になりました。

Invited speakers
Kata Csizér (Eötvös Loránd University, Budapest, Hungary)
Jean-Marc Dewaele (Birkbeck, University of London, London, UK)
Sarah Mercer (University of Graz, Austria)
Agnieszka Otwinowska-Kasztelanic (University of Warsaw, Poland)
Simone Pfenninger (University of Zurich, Switzerland)
Luke Plonsky (Northern Arizona University, USA)

最近の応用言語学のトレンドをふまえ、新しい教育心理学研究(positive psychology, gritなど)、新しい研究手法(complex dynamic system: CDS、replication studies, meta-analysis studiesなど)に焦点を当てた講演や発表が多く、この辺りも勉強になりました。このあたりは、単に、今の研究がこういう流れになっているんだ、という理解で終わらず、コーパス研究者として、どうこのトレンドに対処していくのか、考えていく必要がありそうです。また、講師の講演には、3月に出した「ベーシック応用言語学」の次期の改訂に加えたい内容も多かったです。

結果的に、コロナ後、3年半ぶりの、初めての海外学会となりました。初日の1日だけで、この3年間で自分が話した英語の総量以上を話した気がします(逆に言うと、日本で英語講師をやっていることの楽さ、ということかもしれません)。対面でいろいろな人と会って、あれこれ話すことの重要性を思い出した場でもありましたが、皿に盛られた料理のすぐ上で、大勢が一斉に大声で話しながら食べる、ということにはまだ完全には慣れが戻らず(そんなことを気にしている風の海外参加者はゼロだった)、かなり恐怖感を抱いてしまいました。このあたり、日本の学会がこのようになるまでにはまだ相当の時間が必要という気がします。


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あれこれ聴講メモ

・Metaanalysis論文は通りやすい
・Metaanalysisへの避難として、元の論文の信頼性に限定、バイアスも再現
・石川感想 metaanalysis=Chat GPT??
・応用言語学のparadigm shiftのあれこれ
・対照分析を終わらせたZobl(1980)L1フランス語の英語学習者は I them see とは言わないが、L1英語のフランス語学習者はJe vois ellesと言う
・Metaanalyisisは統計的な厳密性、共通の基準を可能に
・etic(外側・第三者の視点)からemic(内側・当事者の視点)へ
・NS/NNS概念の否定(バイリンガルはモノリンガル×2にあらず)
・発音テストをすると、中国>香港。ESLなのになぜか?(面白い報告、ICNALEの地域区分にも影響する)
・70年代と2000年代?のドイツ語のclassroom発話コーパスの比較、コミュニカティブシフトを量的に検証する(good, fineなどの誉め言葉の頻度の変化)
・gritとresilienceは違う、resilienceは将来に対するマインドセット、gritは起こったことへの対処