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2019/09/29

2019.9.29 科研費よる学習者コーパス国際シンポLCSAW4 を実施@神戸大

当研究室の主催による科研シンポジウムLCSAW4を開催しました。

詳細は下記。
http://language.sakura.ne.jp/icnale/symposium.html#4



以下,大学の広報用に送った文章の控えです。

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神戸大学大学教育推進機構/国際文化学研究科石川慎一郎研究室で行っているアジア圏英語学習者国際コーパスInternational Corpus Network of Asian Learners of English (ICNALE) の構築プロジェクトの一環として,2019年9月29日(日)に,神戸大学百年記念館六甲ホールにおいて,国際シンポジウムLearner Corpus Studies in Asia and the World (LCSAW) 2019が開催されました。2013年,2014年,2017年に続く4回目の実施となります。

今回のシンポジウムは,英国と日本の国際共同研究の推進のため,英国ESRC(Economic and Social Research Council : 経済社会研究会議)とAHRC(Arts and Humanities Research Council : 芸術・人文科学研究会議)が実施している「日英研究協力グラント ESRC-AHRC UK-Japan SSH Connections grants」の支援を受けた研究プロジェクト(代表:Tony McEneryランカスター大学教授,日本側責任者:石川慎一郎/投野由紀夫[東京外国語大])との共催の形を取りました。

当日は日英からの招聘講師13名による口頭発表と,国際公募で選ばれた14本のポスター発表がありました。英国・日本だけでなく,タイ・マレーシア・韓国などから,総勢80名の参加者があり,盛会となりました。シンポジウムでは,ICNALEをはじめとする大型学習者コーパスを用いた第2言語習得研究(SLA)の展開について,また,異なる地域で仕事を行っている研究者間,分野を異にする研究者間での「協働」の促進の必要性について活発な議論が交わされました。

本シンポジウムは,科学研究費およびESRC-AHRCグラントの支援を受けて企画・実施されたものです。開催にかかる関係各位のご支援に感謝申し上げます。
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シンポでは,石川が基調講演を行ったほか,大学院ゼミ生全員が英語によるポスター発表に挑戦しました。

この国際シンポジウムも今回で4回目となり,これまでの参加者は延べ500名近くとなりました。海外においても,アジア圏の学習者コーパス研究の拠点の1つとして,「神戸」の名が次第に浸透しつつあると感じます。神戸の地でこうした行事を4度にわたって続けてこられたのは科研費の支援によるもので,改めて感謝申し上げます。

2019/09/26

2019.9.26 尼崎市立日新中学校教員研修会で講演

継続的に関わっている日新中学校で,講演を行いました。

当日は,国語(パネルディスカッションをやってみよう)・技術(AIについて考えよう)・英語(道案内をしよう)という3つの授業を拝見し,アクティブラーニングの観点から,授業のデザインや教授の方向性について講話を行いました。

2019/9/26
尼崎市立日新中学校公開授業・授業研究会
講師: 石川慎一郎(神戸大教授)
演題:その先に子供をどうやってつれてゆくか~DALの目指す地平~

講演では,子どもに討論や班活動をさせたり,体を動かしたりさせる等,目に見えるアクティブラーニングを「表層的アクティブラーニング」(superficial active learning:SAL),子どもの頭の中の認知的活動が活性化していることを「深層的アクティブラーニング」(deep active learning:DAL)と呼び分け,SALとDALの関係について説明しました。SALとDALは,体のアクティブ,心のアクティブととらえることもできます。


3つの授業は,それぞれよく工夫されたものでしたが,SALの活動をいくつか用意してそれで終わり,とするのではなく,そうした表層的活動が真にDALにつながっていくために,どういう手立てを用意するのか,そこにカギがありそうです。





2019/09/22

2019.9.22-23 統計数理研究所共同研究グループ夏季発表会@大阪大

表記のイベントが行われました。

今回は,「ポスターセッション」の時間が長くとられ,参加者との意見交換を十分に行うことができました。

ポスターセッション風景


石川ゼミからは,5人がポスターで,1人がオーラルで発表しました。下記はその一部です(初日発表分のみ)。

石川慎一郎 丁寧体否定文型の選択について

鄧琪 非和語系語彙に後接するナ・ノの選択について

張晶鑫 日本語オノマトペの中国語訳について

肖錦蓮 1人称複数代名詞の選択とスタンスの関係について


2019/09/21

2019.9.21 計量国語学会大会参加@国立国語研究所(立川)

表記に参加しました

プログラム
http://www.math-ling.org/Docs/poster2019.pdf

13本と盛りだくさんな内容でしたが,どれも興味深い発表でした。コーパス言語学は究極的には1つの手法なので,主として扱う言語が違っても,同じ土俵で考えたり議論したりすることができます。

下記は聴講メモより

1)S/Wの対比は難しい
話し言葉,書き言葉といっても,その中には膨大な多様性があり,1つのコーパスでそれを代表させることはきわめて難しい。とくに,現代日本語の「書き言葉」を代表するとされるBCCWJのデータ構造は複雑で,BCCWJの総体が何を表しているのかは自明ではないかも?

2)話し言葉コーパスの分析単位をどうするか
話し言葉コーパスの書き起こしはどの程度まで信頼できるものだろうか?たとえば,「はい」と「はあい」と「は・い」と「はああい」等の音声はどこまで正確に書きわけられるものだろうか?だとすると,それを分析単位にすることは可能だろうか?

3)多変量解析の複数実行
たとえば異なる手法でちょっと違う結論が出てしまった(ように見える)とき,どういう対応が望ましいのだろうか?

4)文体と編集
編集された(かもしれない)テキストの文体はどこに帰属するのだろうか?

5)TTR補正
RやCは知っていたが,typeのlogのlogを,tokenのlogのlogで割る「S値」というのを初めて知った(孫・金,2019)。たしかにHerdan Cよりもトークンの影響を殺していそう。

6)多変量解析によるグルーピング問題
結局,グルーピングの数を決める究極的な根拠とはなんだろうか?

などなど,盛りだくさんな一日だった。また,院生さんはじめ,若い発表者が多いのも,(英語コーパス研究の側から言うと)純粋にうらやましい限り。


2019/09/19

2019.9.19 尼崎市立園田中学校道徳科公開授業での指導講話

表記に参加し,講話を行いました。


中学校では2019年度から「特別の教科」としての「道徳」(道徳科)がスタートしました。

一般に,「教科」には,(1)免許,(2)教科書,(3)評価の3点セットが伴います。今回,道徳は(2)と(3)をクリアしたわけですが,(a)道徳免許というものは(現状では)ない,(b)道徳は教科内だけでなくすべての教科・課外活動を通じて総合的に教えるべきものである,(c)中学校においても担任が指導する,といった点で他の教科とは異なる特殊な位置づけにあるため,もって,「特別の教科」という位置づけが与えられました。

新しい道徳のあるべき姿を考える場合,今回の道徳教育の改革がいじめ問題への対策として始まったことは,覚えておかなければなりません。


私見では,カギは「自分事としてとらえる」点にあると思います。

その際重要になるのが多面的な意見の葛藤の中から自分の意見を選び取るという体験です。

たとえば,道徳の教材や教師から「いじめはダメ」という価値観を押し付けられた生徒が,そうした見解をオウム返しにして「いじめはしない」と感想文に書いたとしても,その意見は真の意味で自分事になっていない可能性があります。

むしろ,「いじめ」に関するさまざまな立場・意見に触れ,ひとりひとりの生徒が真剣に悩み,教師や友人や家族と対話を重ねることで,自分の意見を練り上げ,最終的に「いじめはしない」という意見を<自らの覚悟で選び取る>ことこそが,意識の変容につながり,ひいては,行動の変容につながるのだろうと思います。

私の理解では,新しい道徳が最終的に目指すところは,意見を選ぶ機会と権利を生徒に与え,あわせて,選ぶことの責任を負わせるというところにあるのではないかと。これは民主主義の本来の姿です。

この意味で,「考え,対話する道徳」の新しい展開は,高等教育を含めた日本の教育の改革に大きなインパクトを持ちます。



2019/09/17

2019.9.17 神戸大学附属中等教育学校SGH評価委員会出席

表記に出席しました。

この数年,いくつかのSGH(スーパーグローバルハイスクール)の運営に関わってきましたが,中でも,神戸大附属中等の取り組みは非常に意欲的で大きな成果をあげたものの1つであると言えます。

しかし,同校のSGHも最終年度を迎え,今後,財政支援がなくなる中で,これまでの成果をどう残し,来年度以降の教育の実践につなげていくかは大きな課題です。これからの中等のさらなる取り組みの発展に期待したいと思います。


2019/09/16

2019.9.16 学習者コーパス研究会@広島大学東京田町キャンパス

下記に参加しました。

(1) 学習者コーパス研究会(9月例会)
日時:9月16日(月)10:30~12:30 
場所:東京工大CIC(キャンパスイノベーションセンター)内
   広島大学東京オフィス 408号室

研究発表
「日本語学習者の能動態と受動態の使用傾向にみられる母語による違い-中国語とドイツ語での語りの比較から-」
奥野由紀子(首都大学東京人文科学研究科)

「日本語学習者のストーリー描写における名詞修飾の使用実態―母語の類型論的特徴に着目して―」
徐乃馨 (首都大学東京人文科学研究科大学院生)

(2) 学習者コーパスハンドブック編集会議
日時:9月16日(月)13:00~16:30 
場所:東京工大CIC(キャンパスイノベーションセンター)内
   広島大学東京オフィス 408号室



2019/09/14

2019.9.14 JACET東アジア英語教育研究会200回記念例会参加@西南学院大学

下記に参加しました。

東アジア英語教育研究会第200回記念大会
日時:2019年9月14日(土)14:00-17:35
会場:西南学院大学3号館403教室

プログラム (Program)
1.開会式 (Opening Ceremony)(15分)14:00-14:15
総合司会:志水 俊広(九州大学)
開会挨拶:原 隆幸(鹿児島大学)
挨拶及び祝辞:
1) 研究会代表:木下 正義(元福岡国際大学)
2) JACET会長:寺内 一(高千穂大学)祝辞代読
3) JACET 九州・沖縄支部長:石井 和仁(福岡大学)
4) 前JACET副会長:山内 ひさ子(元長崎県立大学シーボルト校)

休憩 (Break)(5分)14:15-14:20

2.特別講演 (Featured Lecture)(20分)14:20-14:40
「東アジア英語教育研究会の過去、現在及び将来」
東アジア英語教育研究会代表 木下 正義先生

3.Symposium 15:00-17:30
Title: Current Situation in ELES in Japan, Korea, and Taiwan: Teacher Training
and Future Prospects
Coordinator: Akihiko Higuchi (Miyazaki International College)
Invited speakers:
 Mae-Ran Park(Pukyong National University, Republic of Korea)
 Jenny Chen(National Taipei University of Education, Taiwan)
 Noriko Kawakami (Kagoshima Immaculate Heart University, Japan)

韓国と台湾における小学校英語をめぐる政策的変化や,現場の対応についての報告は非常に勉強になるものでした。日本を含め,どの国においても,英語教育は時の政治に大きく影響されます。


2019/09/10

2019.9.10 TOEICセミナー@大阪グランフロント

下記に参加しました。

2019年度 TOEIC® セミナー

学生の将来を後押しする大学の取り組み
~ 社会のニーズから考えるTOEIC Programの活用 ~

主催 一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会
後援 米国大使館、大阪商工会議所、公益社団法人 関西経済連合会、グローバル人材活用運営協議会

プログラム内容

13:50 基調講演 日本電産株式会社
「日本電産グループが求めるグローバル人材とは」
人事部長  平田 智子 氏

「TOEIC L&Rの可能性と限界を探る」
文学部長(外国語学部長就任予定者)  伊藤 彰浩 氏

「リベラルアーツカレッジにおける共通英語教育改革」
共通英語教育研究センター センター長  川越 栄子 氏

「情報理工学部における英語教育プログラム」
情報理工学部 教授  杉野 直樹 氏


3つの大学とも,工夫された英語教育を実施しておられ,大いに触発されました。また,どの大学も,TOEIC一辺倒にならないよう,外部試験を「賢く」使っておられることが印象的でした。

2019/09/04

2019.9.4 兵庫県立宝塚高等学校特別講義

宝塚高校で,特別講義を行いました。



講義は英語で行い,プレゼンテーションの根底にある<問題を探す><問題を発見する><解決策を作る>という知的な営みをどのように展開していけばよいのかについて解説しました。

宝塚の生徒さんは,こうしたことを考えるのは初めてということでしたが,どの生徒さんも大変意欲的で,今後の成長が楽しみです。

2019/09/03

2019.9.3 神戸大附属小学校英語カリキュラム会議

同校で実施されたカリキュラム開発会議に出席しました。

現在,附小に限らず,いくつかの小学校で,外国語活動の支援事業を行っていますが,新指導要領の下で小学校英語を推進する校内体制をどう作るかは,どの学校にとっても悩ましい課題です。

一般論ですが,仮に専科を置いた場合,次の3つの体制が考えられます。

(A)3~6年生すべて専科が担当
〇 系統的指導がしやすく,英語の知識や能力の高い教員の指導を受けやすくなる
× すべてを1人でやることになりがちで,他教科で行われているような授業案の相互検討や教科会議でのカリキュラム改善などがなされにくい

(B)中学年は専科が,高学年は担任が担当
〇 教科書がなく教えにくい中学年を専科教員が,教科書・指導書があって(相対的に)教えやすい高学年を担任が担当することで学校全体の指導負担を下げる
× 高学年児童が専門知識を持った専科教員の指導・評価を受けられなくなる

(C)中学年は担任が,高学年は専科が担当
〇 高学年児童が専門知識を持った専科教員の指導・評価を受けやすくなる
× 教科書がなく教えにくい中学年を担任が担当することで,担任の負担が拡大する

このあたり,どの体制にも長所・短所があり,学校の実態や子供の実態を見据えた議論を進めていく必要がありそうです。