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2016/07/29

2016.7.29 外国語教育コンテンツ論コース集団指導・研究生送別会

本年度第3回のコース集団指導が行われ,ゼミからは,D1,M2,M1の3名が発表を行いました。

D1 栁 素子  「中国語の可能表現の諸相:能/能够の差異の解明」
柳さんは,従来,母語話者であっても差異が意識されていなかった2語について,その微小な差を計量的に解明することを狙った発表でした。

M2 前浜 知味  「中高生のための教育的句動詞リストの開発」
前浜さんは,句動詞の共起語をグルーピングすることで意味分類を行おうとした試みです。前回の発表では主観的分類による区分を提唱し,今回の発表では統計手法による分類を試行し,両者の関係性を評価しました。

M1中西 淳 「日本人L2英語学習者の前置詞使用パタン―前置詞使用頻度による習熟度推定の試み―」
中西さんは,基本7種前置詞の総頻度,また,in forなどの個別前置詞の頻度で,作文の書き手の習熟度を簡易推定する可能性について検証しました。

その後,前期の打ち上げと訪日研究を修了する研究生の送別会を兼ねて,食事会を開催しました。食事会にはゼミのOGも参加してくれました。あと1週間と少しで前期が終わり,文字通り「ようやく」夏休みが始まります。


集団指導デビューとなったM1学生

ゼミ食事会@「さかばやし」

離日研究生へのゼミからの寄せ書き


2016/07/23

2016.7.23 南米複言語科研講演@京都キャンパスプラザ


金沢大学松田真希子先生がリーダーとなって進めておられる下記科研のキックアップ研究会に招かれ,講演を行いました。


H28-32科学研究費補助金基盤研究B(海外学術調査)「南米日系社会における複言語話者の日本語使用特性の研究」

講演題目: ICNALEとコーパス言語学 南米日系人話し言葉産出データ収集のために


南米社会では,日系人の二世,三世によって,現地語と日本語を組み合わせた「コロニア語」が使用されます。


例 (http://ameblo.jp/poucoapouco/entry-10657170692.html のブログ記事掲載の会話例を一部改変)


A: オイッ!(Oi:ちょっと)私のボウサ(bolsa:バッグ)知らない?
B: ノンセイ(Nao sei:知らない)。アショキ(Acho que:思う),さっき座った椅子のところじゃない?
A: ノーッサ!(Nossa:まあ),そうだったわ。オブリガード(Obrigado.:ありがとう)。
C: このセボーラ(cebola:玉ネギ),カスカ(casca:皮)がセッカ(seca:乾燥する)しちゃってるけど,中身はボア(boa:良い)だからね。

講演では,音声データ収集の際の留意点などについて触れた後,想定される問題として,複数言語使用時のコーディングの分類体系についていくつか提案を行いました。



たとえば,Muysken(2000)のモデルでは,挿入(主要言語に非主要言語が挿入される),遷移(1つの言語が別言語に遷移する),2言語融合型語彙使用の3つを区別しています。こうしたコーディングを書き起こしデータに付与することが,以後の分析にとって重要になるのではないかと考えています。

2016/07/22

2016.7.22 西大和学園中学校・高校 SGH研究打ち合わせ

西大和学園の教頭先生とSGH(Super Global High Schoolプロジェクト)主任の先生が来訪され,今後のSGHプロジェクトの展開について助言を行いました。

同校のSGHは,地球規模の課題に挑戦するグローバルビジネスリーダー養成をテーマにしておられます。

同校は初年次指定のため,本年度中に当該学生が3年になり,1期生が卒業していきます。意欲的な課題であり,運営指導委員として,進捗を拝見するのが楽しみです。

一般に,南北問題や,貧困問題,女性問題といった大きな問題を使う場合,どうしても,大きな枠組みで物事を考えるため,自分自身の問題に引き付けて具体的で実効性のある解決を提案することが難しくなります。この場合,生徒は,「やらされている」「言わされている」という意識を持ちがちです。これを,どうやって<自分自身の研究>に昇華させていくか。

探究的研究では,大きな問題をどう小さなテーマと関連付けるか,小さい問題の解決が大きい問題の解決につながるというマクロ的な視野を持ちつつ,問題をどううまくミクロのレベルで処理していくか,が問われます。

森を意識しながら木を見る,世界を意識しながら足元を調べる・・・ これまで研究一般について言われてきたことが,まさに綜合されるのが探究の営みといえるでしょう。

本年度は,神戸大学附属中等教育学校(SGH),兵庫県立長田高等学校(SGHアソシエート),西大和学園(SGH)の3つの学校の探究教育に関わっています。3校ともにすばらしい取り組みをなさっておられ,この実績を地域に波及させるお手伝いができれば,と考えています。

2016/07/19

2016.7.19 神戸大学附属中等教育学校優秀卒業研究発表会@神戸大学ポートアイランド研究拠点

表記に参加し,講評を行いました。

 → 大学の報告ページはこちら

平成28年度 Kobeプロジェクト卒業研究優秀者発表会
日時 2016年7月19日(火)
会場 神戸大学統合研究拠点コンベンションホール

SGHである同校が行っている卒業研究のうち,とくに優秀な生徒さんによる発表会です。3回生となり,経験を重ねてきた分だけ,充実した内容が増えてきました。また,1週間前に行った直前指導をふまえて,内容をきちんとブラッシュアップしてくれていたことにも感銘を受けました。

口頭発表
発表① 「植物の生育環境の変化が花弁の濃淡に及ぼす影響」
発表② 「建築素材における低圧縮型木片コンクリートが与える未使用木材利用の可能性」
発表③ 「民衆運動の普遍性-19世紀と現代の民衆運動から-」
発表④ 「害虫と人とのつきあい方-ナメクジの実験から考える農薬に頼らない栽培方法-」
発表⑤ 「『野球女子』の派生が観客動員数及び球団本拠地の観光客数に与えた影響」
発表⑥ 「洗剤メーカー各社の油汚れに効果を示すことを宣伝活動の主題にした商品の濃度と洗浄能力の関係の比較」
発表⑦ 「若者の投票率を上げるための政治教育とは-模擬選挙を用いた実験の投票率から見る情報刺激の効果-」
ポスター発表
ポスター① 「長時間潤いを持続する化粧水の作成-納豆のねばねばに保水効果はあるのか-」
ポスター② 「A4コピー用紙を用いた折り紙飛行機の形状と飛距離の研究」
ポスター③ 「よく飛ぶ紙飛行機の特徴と実機への応用可能性」
ポスター④ 「魚の尾鰭の形状によるエネルギー効率の解析実験」
ポスター⑤ 「クラシックバレエにおける表現の使い分け-7つのヴァリエーションを比較して-」
ポスター⑥ 「自転車を利用した地域活性化-しまなみ海道の事例から-」

講評  
石川慎一郎 先生(神戸大学大学教育推進機構 国際コミュニケーションセンター教授) 
林 創 先生 (神戸大学大学院 人間発達環境学研究科准教授)


                     生徒さんの発表風景

2016/07/16

2016.7.16 JACET特別シンポジウム「東アジアの言語研究とL2教育研究~コーパスが拓く学際研究の領野~」


大学英語教育学会「東アジア英語教育研究会」 第166回例会

(特別シンポジウム) 東アジアの言語研究とL2教育研究 ~コーパスが拓く学際研究の領野~


日時 2016年7月16日(土)13:30~16:00

会場 西南学院大学2号館202教室(福岡市早良区西新)


発表者・発表題目

・石川 慎一郎**「これからのコーパス語彙表の展望:新JACET8000(2016)の開発理念」

・中西 淳* 「日本人L2英語学習者の前置詞使用パタン:習熟度の影響」

・栁 素子* 「中国語可能表現の諸相:能/能够の差異の解明」

・隋 詩霖* 「中日広告言語の比較:化粧品広告の分析」

・張 晶鑫* 「日本語オノマトペ『だんだん』および類義語の関係性」

・肖 錦蓮* 「日本語教育の観点から考える女性文末詞」


** 神戸大学 大学教育推進機構/大学院国際文化学研究科 教授
* 神戸大学 大学院国際文化学研究科外国語教育論講座(院生・研究生)

→ フライヤーはこちら


特別シンポジウム

「東アジアの言語研究とL2教育研究~コーパスが拓く学際研究の領野~」企画趣旨

研究手法としてのコーパスの特性の1つは,データ分析の手法や枠組みが,個別言語を超えて,様々な言語にそのまま応用しやすいことである。本シンポジウムでは,6本の研究実例を通して,コーパス活用により,英語・日本語・中国語に関してどのような知見が得られるのかを実証的に議論していく。個々の分析実例を相互に比較することで,いわゆる「コーパス準拠言語研究アプローチ」の中に,個別言語に紐づく部分と,個別言語に限定されず,汎言語的に応用可能な部分が存在することが示されるであろう。本シンポジウムが,従来は英語や日本語に限定されがちであったコーパス言語研究の一層の普及の一助になれば幸いである。(オーガナイザー 石川 慎一郎)


個別発表の概要


●石川 慎一郎「これからのコーパス語彙表の展望:新JACET8000(2016)の開発理念」

旧JACET8000がBNC全体から得た頻度を根拠資料としていたのに対し,新JACET8000は,BNCとCOCAの10ジャンルから得た頻度を統計的に合成することで,英米差やジャンル差を考慮したバランスのよい語彙選定がなされている。また,日本人大学生がこれまでに触れてきた英語,現在触れている英語,さらに,近い将来に触れるであろう英語を加味した補正資料を用意し,日本人大学生の英語語彙学習の指針としての妥当性を高めている。本発表では,語彙表の作成理念と作成過程を詳細に紹介し,今後のコーパス準拠語彙表の作成法について概観する。



●中西 淳 「日本人L2英語学習者の前置詞使用パタン:習熟度の影響」

学習者の習熟度測定にはTOEICやTOEFLといった標準的な習熟度テストが広く使用されているが,評価と学習の一体化を目指し,反復的・継続的な評価を行おうとする場合,そうしたテストとは異なる評価のオプションも検討されるべきである。本発表では,学習者にライティングを行わせ,そこに出現した前置詞頻度を計量することで学習者の習熟度を簡易推定する方法について予備的な提案を行う。本研究では,中高生の作文を集めたJEFLL,大学生の作文を集めたICNALE,さらに個人大学生が米国留学中に書き溜めた日誌をデータベース化したJournal Writing Corpusの3種のコーパスを使用し,前置詞頻度から学年・(TOEICスコに基づく)習熟度・英語圏滞在期間を予測するモデリングを試みる。





●栁 素子 「中国語可能表現の諸相:能/能够の差異の解明」

能と能够は,ともに,主体が能力を有しているか,必要な条件が揃っていて,何かが実行可能である場合に使用できる中国語の可能表現である。これら2語の差については,従来,「能は話し言葉で,能够は書き言葉で多用する」ということが言われているが,一方で,一部の例外を除いては,「能够はすべて能に置き換えられる」とも言われている。本研究は,コーパスを用いて,能/能够の頻度・共起語を調査し,従来,必ずしも明らかでなかった2語の差の解明を目指そうとするものである。





●隋 詩霖「中日広告言語の比較:化粧品広告の分析」

近年,日本語学習者の学習動機は多様化しており,中国においては,日本のファッション誌や,そこに掲載された化粧品広告などを通して日本語への興味を抱く事例も少なくない。日本語化粧品広告に使用される言語は,日本語として必ずしも難しいものではないが,特殊なジャンル専門語,倒置,省略,間接表示など,中国の化粧品広告には見られないさまざまな言語的特徴があり,初級の日本語教育を受けただけでは,その内容を把握することは困難である。そこで,本研究では,独自に開発した日中化粧品広告コーパスを分析し,日本語化粧品広告言語の語彙的特性について検証を行い,初級日本語教育を受けた学習者が日本語の化粧品広告を読もうとする際に要求される語彙知識の同定を目指す。




●肖 錦蓮「日本語教育の観点から考える女性文末詞」

「かしら」「だわ」といった女性文末詞は,実際の日本語会話ではほぼ消失しているとされるが,一般的な日本語小説における使用頻度が近年どのように変化しているかは必ずしも明らかでない。そこで,本研究では,BCCWJの書籍(小説)データの年代別頻度分析を行い,女性文末詞の使用状況の変化を計量的に同定するとともに,個々の女性文末詞の典型的共起環境を明らかにすることを目指す。





●張 晶鑫 「日本語オノマトペ『だんだん』および類義語の関係性」

日本語のオノマトペ「だんだん」は副詞として広範に使用されているが,その類義語である「次第に」「徐々に」などとの用法差はこれまでの研究でも完全には明らかになっていない。本研究では,BCCWJの多角的分析をふまえ,3語の表記・頻度・言語使用域・共起パタンなどを計量的に解析し,3語の差異の同定を目指す。




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全体写真(研究会主宰 木下教授とともに)




大宰府天満宮参拝




梅が枝餅試食中

2016/07/15

2016.7.15 兵庫県立宝塚高校インスパイア―事業 生徒発表審査・講話

こちらの学校には,本年度,3回,訪問指導を行いました。本日はその最終回です。

初回(4月): 論理的なプレゼンテーションの構成についての指導
2回目(6月): 中間発表会。改善ヒントを述べる。
3回目(7月): 最終発表会。校長先生・教頭先生はじめ,先生方隣席のもと,最終発表を聞く。

宝塚の訪問指導では,昨年度に引き続き,「自分の学校の問題点を改善するプレゼンを作る」という課題を出しました。初回の指導では,問題点に対する認識が曖昧であったため,提案も曖昧でしたが,2回目の指導を経て,見違えるように改善されており,クリアな問題分析と高校生らしい提案が光る発表でした。私が直接に関わったのはわずか3回ですが,その間には,同校の先生方の指導が緻密になされており,生徒のみなさんの努力とともに,先生方のご尽力がしのばれました。

先生方を前に堂々と話す県宝生。司会はALTの先生。





2016/07/14

2016.7.14 兵庫県立長田高等学校人文数理探求類型卒業研究発表 English Presentation Contest

2016.7.14  13:00~17:00
於:神戸市長田区 ピフレホール(JR新長田駅前)

昨年度に引き続き,類型生徒さん(3年)の卒業研究発表会の審査委員長と講評役を務めました。探究型学習は新しい指導要領でも注目されている学修ですが,長田高校の生徒さんは,クオリティの高い研究の成果を流暢な英語で発表しておられ,感銘を受けました。


司会や進行も生徒さんの担当で(すべて英語),発表の後にはユーモアやウィットにとんだ質疑応答が繰り広げられ,自由な校風を特徴とする長田高校らしい発表会であったと思います。

講話では,文系型研究と理系型研究の強みと弱みについて話し,領域横断型研究の重要性と,今後の改善のヒントについて述べました。

良い研究とは,問いと実験と結果と提案が緊密に連携しており,かつ,問いの前提に何らかの社会的ニーズが存在するものであると考えています。こうした発想は,高校生はもちろん,大学生の卒論や,大学院生の学位論文,また,ビジネスにおける各種の立案プロセスにも応用できるものです。


コンテスト結果(同校 探求だより より)


ちなみに,会場となったJR神戸線新長田駅は鉄人28号の巨大モニュメントがあることでも知られます。話には聞いていましたが,今回,初めて実物を見ることができました。


追記(2016.7.28)

なお,新長田の鉄人モニュメントについては,地元の川柳作家の方が作品の中で触れておられます。

「よみがえれ神戸 鉄人 光ってる」 (石川憲政氏) 出典




2016/07/11

2016.7.11 神戸大学附属中等教育学校優秀研究発表者指導

同校では全員が卒業研究を行います。7月1日の最終発表会を経て,見事,7月19日の優秀発表発表会に選ばれた生徒さんを集めて指導を行いました。指導では,リサーチの基本的なフレームを再度確認し,リサーチを1つのストーリーととらえ,整合性のある展開になるよう指導を行いました。

たとえば,なぜその研究が必要なのか,発表者にとって重要であるだけでなく,なぜそれが聴衆にも(ひいては社会にも)重要なのか,どのような問いを立てたのか,問いに対してどのような答えが得られたのか,こうした点がクリアに響く発表に仕上げてもらえたらと思っています。

2016/07/09

2016.07.09 高校検定教科書編集会議

2016.7.9  於:京都

すべての単元の英文チェックが終了しました。このあと,タスク開発に進んでいきます。

2016/07/01

2016.7.1 神戸大学附属中等教育学校卒業研究発表会

パラレルセッションの1室において10本の発表を聞き,それぞれへの質問と,全体への指導助言を行いました。どれもよく練られたもので,中高一貫の附属教育の高い水準を再確認した次第です。




下記は,当日のプログラムの発表題目を形態素解析にかけ,共起関係を示したグラフです。どのようなテーマに高校生が関心を持っているかが概観できます。

図 プログラム発表題目の形態素解析結果(共起ネットワーク) ※クリックで拡大


見たところ,防災研究,環境・エネルギー研究,スポーツ研究,高校生の意識・イメージ研究,デザイン研究,音楽系研究,紙飛行機・折り紙などの実験系研究などが人気のテーマのようです。こうしたデータも蓄積的に取っていくと,時代的変化が分かって面白いかもしれません。