はじめに
今回、中国の大学での集中講義担当に伴う中国入国ビザの申請については、周囲に経験者がおらず、かつ業者委託もできなかったため、すべての作業を一人でやることになりました。その際、必要な情報のほぼすべてを、ネットに浮かんでいた過去の体験者の報告から得ました。ずっと不安であった中で、そうした過去の記録に大いに助けられました。ありがとうございます。
恩返しにもなりませんが、標記の件について、後の人のためにメモを残します。下記の記録は2023年7~9月のものです。ルールは非常に頻繁に変更されますし、詳細は係官・領事官の個別判断による部分もありますので、内容をそのまま鵜呑みにされず、必ず、各自において最新情報をご確認ください。
経緯
2023/6/11
ビザ申請の前に先に航空券を購入。座席番号まで決まっていないとだめ、というネットの書き込みがあったので、コールセンターにTelを入れ、座席を確定(※ただし、座席確定が必須だったかどうかは不明)。このころ、中国ビザの申請に非常に時間がかかることがネット騒がれ始めていたので、すぐにビザ手続きを始めたかったものの、肝心の招聘状がなかなか届かない。
2023/7/1
ようやく先方の学内手続きを経て招聘状が届き(メール添付ファイルで)、ビザ取得のための手続きを開始する。代行業者に頼むことも考えたが、コンタクトした業者は「業務」のMビザしか扱わないとのこと。研究者の訪問は「交流」のFビザと考えたため、自分で手続きすることに(※ただし、最終的には、ビザセンターのほうでMビザに修正されたので、今から思えば業者委託でもよかったかもしれない)。記入事項が多いのでその都度確認しながら進める。何語で書くかが問題で、ネットには英語での記載例と日本語での記載例がともにあった。今回は、全部英語で記入したが、問題なく受理された。
2023/7/5
送付されてきた招聘状を改めて読んでいると、交流ビザでよいのか、業務ビザか、あるいは就業ビザか不安になってきて、ビザセンターにオンラインで質問を送る。ビザセンター(厳密には東京センターだった)より、交流Fビザで、との返答。ビザセンターのオンライン質問に対する回答は非常に早いが(通例24時間以内)、内容によっては返事がなく無視される。今回の場合、渡航目的を示してビザタイプを尋ねる質問には即時の回答、予約日を早められる方法はないか・・・的な質問は無視だった。(※結果的に、東京センターの回答と大阪センターの判断は一致していなかった。下記参照)
2023/7/7
ようやくオンライン申請を完了。すぐにも本申請をしたかったのだが、この段階で、本申請(ビザセンターに出向き、書類チェック&指紋の押捺)の予約が取れる一番早い日が2か月先の9月1日だった。それだと9/10の出国日まで1週間ほどしかなく、非常に不安に。あわせて、オンライン質問で同行する配偶者のビザタイプを訪ねる。観光ビザで、とのこと。
2023/8/30-31
本申請を控え、申請のための最終準備。必要書類に漏れがないか再度チェックし、必要になるかもしれない各種申請書(古いパスポートを処分した申請など)を作成。また、提出用のプリント写真のため、改めて写真を取り直してコンビニでプリントアウト。
2023/9/1 午前
なぜか、オンライン申請時の写真と、本申請で提出する印刷写真は違うものでよいと思いこんでいたのだが、念のためにネットのビザ申請経験者の記録などを読み返していたところ、<すでにオンライン申請済みの写真と同じ写真を印刷して提出>することを知り、あわてて元ファイルを探し出して加工して印刷。ただ、オンライン申請時の写真は、深く考えず、適当にスマホで撮っただけのものだったので、前髪が長い、耳が出ていないなど、経験者談でタブーとされている要素が多く、センターで撮り直しを指示されるだろうと覚悟を決める。
2023/9/1 午後
予約の時間は1430-1500で、10分前に到着を、との記載。1400ごろに心斎橋のビザセンターに到着(駅降りて御堂筋をまっすぐ進む。Wホテルが右前方に見えたらその手間で左折)。早すぎたかと思ったが、そのまま受け付けてくれる。小さい番号札をもらって銀行のように窓口の前で待つ(ネットには暑い中立って待たされた、的な記載もあったが、大阪センターに関しては、冷房の効いた部屋で椅子に座って待てた)。対応ブースはたしか6つだったが、うち係員が入っているのが3ブースほど。そのほかの1つは受け取り専用ブース。
待ち時間25分ぐらいで呼ばれる。夫婦2名でも申請処理は別々。係員は親切で、書類を丁寧にチェックしながら、当方の書き間違えなどがあれば、その場でこちらに聞いて確認し、むこうで修正してくれる。その際、招聘状を見ながら現地での業務内容について質問があり、大学院生への授業だと答えると、「交流ビザではなく業務ビザ(FでなくM)ですね」とのこと。一瞬、それだと余分の書類が必要で間に合わなくなるのでは・・・と不安になったが、交流ビザと業務ビザの必要書類は同じで胸をなでおろす。念のため、ビザセンターに送った質問と回答のコピー(持参していた)を見せたが、「それは東京センターのものですね。ここは大阪なので」という返答。。。ただ、申請書類に関してこうした大きな変更(や誤り)があっても基本的にはその場で口頭で確認して向こうが直してくれる方式であった。
心配していた写真についてはすんなりそのまま受理され、コンビニプリントした写真(2枚つながりで出てくる)を提出すると、先方ではさみで切って貼ってくれる。ネット情報ではミリ単位で細かく切っておかないと・・・とあったがそのようなことは今回はなかった。
その後、パスポートチェックのときに、トルコに行ったことはないかと聞かれ、学会での渡航歴があることを思い出して伝えると、「5年より前ならいいんですが・・・」とのこと。パスポートを調べると、渡航日が2018年9月でぎりぎり5年にかかっていた。急に対応が変わり、これだとビザが出せないのでトルコへの渡航目的を証明する書類を出してください、その書類はいつ手に入りますか・・・と聞かれる。
トルコの学会は1回きりのもので、主催者と連絡してもつながらないのは目に見えていたので焦る。勤務先の大学の証明でもよいかと尋ねると、「いつ入手できるか」今ここで聞いてくださいという指示があり、大学に急いでメールを送る。
慌てふためきつつバタバタしているうちに、持参していた仕事用のパソコンに、当該の学会のプログラムがたまたま保存されていたことを思い出し、それをパソコンの画面で見せると、これを印刷して提出せよとのこと。いったんブースを離れ(この間、係員は次の申請者を呼び入れるが、印刷が終わったらその人の横で立って待っていてくださいとの指示)、USBに学会のプログラム(表紙と概要と自分の名前の入っているところ)をいれて、センターの部屋の後ろにあるパソコンで印刷して提出(印刷した紙は自分で取れるのではなく、直接係官席のほうに出力される。後で印刷料金を請求される。1枚50円だったか?)。あわせて別途の申請用紙(問題のある国に渡航した日付、目的、誓約を書く。この紙は簡単な書式でその場でくれる)に記入して提出する。最後に指紋押捺まで進む(これは座っていると指が垂直にガラスに当たらず、取り直しになる。立ち上がって指をあてると比較的うまくいく)。
ここまで終わると、受け取り日(審査作業は3日と聞いていたが、申請日が金曜午後だったので、受け取り日は翌週水曜の0930以降とのこと)と費用を書いた紙をくれて受付が終わる。「何かあれば電話します」とのこと。センターを出たのは、入ってから約1時間後だった。ネットでは3時間とか4時間などの書き込みもあったが、今回はトラブルがあった割には早かったと思える。
2023/9/1 夜
夕方帰宅したころ、センターから電話が入る。ビザの期間を90日と申請していたが、渡航が14日なので30日しか出せないとのこと。それでいいですよ、と返事。配偶者も同じように90日で書いていたが、センターで向こうがその場で修正してくれたと言っていた。。。
2023/9/3
受け取りは本人でなくてもよいので、水曜、配偶者が自分のものとまとめてとってきてくれる。費用は1人8,500円。結局ビザを受領できたのは9月6日。出国の飛行機は9月10日だったので、3日前、本当に薄氷のような感じだった。
7月以降、どんどん中国での仕事の詳細な予定が入ってくるのに、本当にいけるのかどうかわからず、ビザが取れずにドタキャンになって迷惑を掛けたら・・・と考えてしまい、本当に胃が痛い2か月間だった。
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これから中国ビザを申請なさる研究者の方へ
(※私の経験した範囲です。頻繁に変更があるので、最新情報を必ずご自身でご確認を)
1. まずビザセンターの予約状況を知る
1)訪問したいビザセンターのサイト(たとえば、大阪)にアクセス。
2)高速リンク<査証<個人予約(申請)と進む
3)必要事項を一切記入しないで、その下のパズル認証だけを行う(ジグソーパズルのピースを当てはまる場所までスライドして移動させる)
→マークを右の同形の枠のところまでスライド
4)すると今申請した場合にいつ予約が取れるかがわかる。
※9月7日朝9時の時点の大阪センターの状況
最短で、6週間後の10月23日。
私の場合は、7月7日にオンライン申請完了して予約が取れたのが9月1日だったので約7週間後。現在は6週間後なのでやや状況は改善されているかもしれない。いずれにしても1か月半~2か月はかかる、という前提で準備が必要。思い立ってすぐ、はどう考えても不可。
2. 飛行機、ホテルを先にとる(※観光ビザの同行者がいる場合)
交流Fビザ、業務Mビザの場合、航空券宿泊予約の提出は必須ではないが、たとえば同伴家族がいる場合などは、(たとえ帯同が目的で観光の予定がなくても)観光Lビザになるためこれらが必要に。
3. ビザのタイプを確認する
中国大使館には、目的別にビザ種別が説明されているが、たとえば客員教員として集中講義をするという場合、学術交流(F)でもあり、会社(この場合は大学)から派遣されてビジネスを行う業務(M)でもあり、就労(Z)のようにも見える。この点、招聘元とビザセンターに事前に確認を取ることが必要。なお、当然ながらZだと必要書類が段違いに増える。
4. 写真を撮る
1.で予約状況を見ると猛烈に焦り始めるので、適当な写真を使ってともかくオンライン申請を先に進めてしまいたくなるが(最初に写真をアップロードしないと申請が始められない)、本申請の場で撮り直しとならないよう、最初の段階で正しい写真を撮るほうがよい。オンライン申請時にも、最低限の自動チェックがかかっているようだが(明らかに規定違反の写真ファイルはアップロード時に自動ではねられる)、大使館のいう全条件を必ずしも満たしていない写真でもオンラインではOKになることもある。よく言われているポイントは、眼鏡を使っている人は外す、髪が長い人はピンなどでとめて耳を出す、前髪をあげて額を出す、など。
厳密な条件を満たすため、写真館で中国ビザ専用の写真を撮る人も多いようだが(2~3千円)、条件を満たしていればスマホ写真でも構わない。ただし、全体サイズ、顔のサイズ、位置、などについては、大使館条件に揃える必要がある。この目的で私が使ったのは、FreeDPEというサイト(600円で1週間限定使い放題)。スマホ写真撮影→暗かったので画像加工ソフトで明るめに修正→FreeDPEにアップロードして顔の位置・角度・サイズなどを規定にあうよう修正→写真全体を中国ビザのサイズに修正→処理後のデータをDL(オンライン申請時に使える)→コンビニ写真印刷機用のコードを出力→コンビニ(ローソンかファミマ。セブンは対応外の模様)で写真印刷(30円)。この場合、費用は630円で済む。
5. オンライン申請を行う
多くの人がネットで書いておられるように、細かいことを多数聞かれる(たとえば親の年齢や状況など)ので、相当に時間がかかる。すんなりいって2時間程度か。申請フォームの表示言語は日本語・英語表示に対応しているが、日本語表示だとしばしば意味不明の質問が出てくる。英語のほうがおそらく正確なので、最初からすべて英語版で進めるほうがよさそう。ネットの入力見本には日本語のもの、英語のものが、項目により混在しているが、全部英語でもとくにおとがめはなかった。
6. 最終的には当日修正が可能
厳しいということを聞いていたが、ビザセンターの係官は親切でなんとか申請が完了するよう助言してくれる。コンビニで出力した写真は、こっちで切っていなくても、むこうで適当にカットしてノリもつけて貼ってくれる。署名は事前にしておかなくてもその場でするよう指示してくれる。センターには、撮り直し用のコイン写真撮影機、コピー機、プリンタなども用意されており、たいていの問題については、その場でその日のうちに対応が可能。私の場合、そもそものビザタイプの変更(F→M)や、日数の記載ミス(90日→30日)など、かなり大きな問題もあったが、結局、いずれもその場で修正してくれた。オンライン申請にあたって120%の正確さを期すとどんどん時間がたち、結果的に予約のとれる日もどんどん遅くなる。best effortでオンライン申請を早めに完了したほうがよいかもしれない。
7. トルコなどへの渡航歴のある方へ
今回、私はたまたま学会のプログラムがパソコンに入っていたので、なんとかその場で申請が受理されたが、もし、後日再出頭して再申請と言われていたら、今回の渡航に間に合わなかったと思う。渡航歴のある人は、たとえば**という学会参加のために*月*日~*月*日まで渡航した、というような証明を、会議主催者、または出張申請を出した職場から取って持っていくほうが良いと思う。あわせて、会議のプログラムなどのコピーも持参しておくと話が早い。なお、5年より前は不問です、と私の担当の係官が言っていたが、10年パスポートの場合それ以前の記録も残っているので、念のためではあるが、パスポートに記載された渡航歴については証明を持っていくほうが安全かもしれない。(参考:日本橋夢屋サイト)
8. 念のために用意した書類など
各種のネットの書き込み、ブログを参考に、できるだけ必要になるかもしれないものは事前に作成してからセンターに向かった。今回用意したのは、本人分として、必須書類の招聘状のほか、(F/Mビザでは本来はいらないが)搭乗券とホテルの予約記録、また、過去のパスポートを処分して持っていない旨の宣誓書(※過去のパスポートも持参せよとの書き込みがあったため)、配偶者分として、渡航目的証明書(観光ビザだけれど実際には帯同が目的で特段の観光の予定はないのでその旨の説明)、などである。過去パスポート処分の宣誓と、渡航目的証明書は不要で返却された。
9. できれば当日誰かに家か職場にスタンバイしていてもらう
当日問題が発生すると、その場で自宅や職場に電話することができる。即座に、追加書類を作成・送信してもらうことができれば、係官は待ってくれるのでその日のうちに申請完了となる。この意味で、だれか連絡できる人が自宅や職場でスタンバイしてくれていると安心。
以上です。ビザ申請がうまくいくことを願っています。