表記に参加しました。また2日目には、海外提携団体代表者による講演の司会を3本担当させていただきました。
神戸大学 大学教育推進機構/大学院国際文化学研究科外国語教育論講座/数理・データサイエンスセンター 石川慎一郎研究室の活動報告サイトです。 研究室トップページ http://language.sakura.ne.jp/s/
表記に参加しました。また2日目には、海外提携団体代表者による講演の司会を3本担当させていただきました。
表記で発表を行いました。最近、夏の恒例行事になりつつあります。
発表者:石川慎一郎
発表題目:「学習者コーパス研究における横断・縦断データ統合の意義」
しかし、ここにきて、完全な縦断法(個人を数年間追跡してデータを集める)でとったB-JASという新しいコーパスがリリースされましたので、両者から得られる発達モデルがどの程度一致するのか、主として計量的観点から検証を行いました。その結果、両コーパスから得られる大局的な発達パタンや発達モデルはほぼ同等であるものの、各段階の特徴語などにはかなりずれが生じることが示されました。これは、なかなか悩ましい結果とも言えます。。。
表記に参加し、説明役を務めました。オンライン開催だったせいか、参加者もいつも以上に多いように感じました。神戸大国際文化の良さをうまくお伝えできていればよいのですが・・・
今年は、半分を遠隔ビデオ学修、残り半分を教室対面で実施しました。この方式は、対面の良さを残しつつも、短期で効率よく学べることができ、授業者としてはよかったのではないかと感じています。
猛暑の中ではありましたが、コーパスに関心を持っておられる多くの若い博士後期の学生さんと濃密な時間を過ごすことができ、楽しい日々でした。コロナも終わり、数年ぶりに、学内の喫茶店で打ち上げお茶会?が実施できたこともよい思い出になりました。
表記に参加し、発表を行いました。
題目 Multidimensional Analysis of L2 English Speeches of Learners From Six EFL Regions and Four ESL Regions in Asia
Shinichiro Ishikawa
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<所感>
ひさびさの対面でのAsiaTEFL参加でした。参加者は800とも1200ともいわれており、初日のキーノートは巨大なホールで立ち見が続出という状況でした。
AsiaTEFLの最大の魅力は、参加者の圧倒的多数がnon-nativeなので、英語の面でのハンディキャップが存在せず、全員が対等な立場で内容にしぼった議論ができるということです。シンガポールの英語、韓国の英語、日本の英語、インドネシアの英語・・・、3日間にわたってどっぷりアジアのELFを経験できる機会はそうそうなく、それだけでもアジアの英語教員にとっては価値あるものと言えます。また、同じnon-nativeの英語教師どうし、抱えている問題意識や教育的背景が酷似しているというのもこの学会に参加する利点と言えるでしょう。いろいろな発表を聞いていても、「あるある」感が、欧米の学会とは段違いです。くわえて、(20年ぐらい前の日本の英語教育学会にあったような)いい意味で素朴な発表も多くあり、難解な統計や理論のショールームみたいになりつつある最近の内外の学会とは違って、参加者全員がその場でワイワイとディスカッションできる雰囲気があります。
会場はテジョンのコンベンションセンターでした。仁川空港からテジョンの中心部まで直行バスで行くことができ(2時間半ぐらい)、町から会場はタクシーで20分ぐらい(500円ぐらい)です。部屋の設備やネット環境も整っており、気持ちよく議論に集中できる環境でした。メインホールには、発表者の顔とスライドを切かえて映し出せる3面分割の巨大モニターがあり、大きな会場でも画面が見にくいということはありませんでした。唯一難を言えば、同時にe-スポーツの決勝大会?が開かれていて、ちょっと、参加者が入り混じって混雑していたというぐらいでしょうか。
運営面では、美しいイメージビデオを駆使した開会式、伝統のダンスの披露、外国人向けの、韓服着てみようコーナーや、扇子にハングルを習字しようコーナー、会場付近の散歩ツアーなど、工夫が盛りだくさんでこちらも勉強になりました。AsiaTEFLは韓国での開催回数が最多である一方、日本は私もスタッフになった福岡1回きりです。ちょっと申し訳ない気分もしましたが、一方で、これだけのことを、この参加費で、日本でできるかと考えると、ちょっとありえない・・・という印象です。
韓国に来たのはコロナをはさんで数年ぶりになりますが、毎回、若い世代の英語力の向上には目を見張ります。韓国の教育における過度の英語重視には副作用も指摘されているので、あまり単純なことを言うのは適切ではありませんが、若い世代(もちろん全部ではないにせよ)が英語という武器を得ることで、国外を含め、仕事のフィールドを広げているのは確かなようです。あと10年もすると、韓国社会の一部(とくにトップレベルの学術やビジネス界)においては英語はEFLではなくESLになるのでは・・・という感もありました。
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<自分用メモ>
(部分的に)コーパスに関係する研究発表は約30本。ICNALEを使用したものは石川のもの以外で、653、908、1191。
177. Style Shifting in Academic Writing: Implications for Writing Pedagogies in the 21st Century
Sachiko Yasuda
・学術文における書き手の主体の問題を検討。1970-2020の4分野、240本の論文を集めた190万語コーパス使用。personalな文体が増える。
239. A Cognitive Linguistic View of L2 Chinese Learners’ Overuse of Periphrastic Causative Construction
Yuying Zhi
・認知のforce theoryを使って、CLEの周縁的因果節過剰使用の原因を探る。3種の学習者コーパスと、L1中国語コーパスも比較。
297. Morphosyntactic Errors in Verbs in English Written Compositions by Vietnamese Undergraduates
Tan Tran
・ベトナム人学生、学期途中の英作文224本分析。スペルミス(misformation)>不適切な欠落/付加>位置問題
335. Developing English Science Textbooks’ Word Lists for EFL Secondary School Students: A Corpus-Based Approach
Thana Kruawong
・タイの中学校の英語指導コースで使用されている理科教科書30種を集めた150万語コーパスから、重要語504語(word family単位)を抽出。専門家判定経て、250語の語彙リストを作成。
339. DDL for an Error Correction Activity: Does It Really Work for EFL Students at a Lower Proficiency Level?
Humairah Fauziah
・大学生が、British Academic Written English Corpus (BAWE) を使って、自分の英作について、5タイプの文法ミス(SV合致、時制、単語選択、コロケーション、脱落)を修正。ワークシートと質問紙回答を分析した結果、学生はコーパス使用をむつかしく感じ、コーパスなしで自力で修正することが多かったが、SV合致・コロケーション・関係詞の修正にはコーパスも利用。
388. A Study on the Ideological and Political Connotations of Texts in a College English Textbook Based on Corpus
Wenjuan Lang
・Guidelines for the Construction of Ideological and Political Education in Colleges and Universitiesの発表後、中国では、大学教科書に思想教育・政治教育の要素を統合。(中国の!)New Horizon English Course (Reading & Writing) 3版をコーパス化して分析。
433. Semantic-Based Data-Driven Learning of General Adverbs: Their Use by British Students and Japanese EFL Learners
Kunihiko Miura
・JLE学生英作(文通相手への手紙/高校生の学期末テストの英作)と英国NS学生英作(BBCのエッセイコンテスト作品25本)を収集。副詞使用数は年上のNS>年下のNS>JEL。対応分析で特徴副詞抽出も。
550. A Metadiscourse Study on the Plain Language Summary in International Journal Articles
Zhiyuan Li
・学術論文の新トレンドである、「簡易言語によるアブスト(PLS)」を集めた自作コーパスと、伝統的なアブストコーパスを用い、スタンス表出を比較。PLSのほうがスタンス表現(とくにself-mention)が多い。
619. Goodness Metaphors in Thai
Salinda Phopayak
・チュラのThai National Corpusで、タイ語の“goodness” [Kwamdee] を表す概念メタファー100種を調査。「GOODNESS IS PROPERTY」型が最多。100種は15の概念メタファーに言及。
653. Non-native Speakers’ Use of Discourse Markers: A Corpus Analysis of the Pragmatic Functions of “Well” Used by Indonesian Speakers
Nur Utami Sari'at Kurniati
・ICNALEのインドネシア人30名のインタビューデータを用い、ディスコースマーカー使用を調査。”well”には、返答予告、同意・不同意、会話修復などの機能。同意不同意型では、wellは直接疑問より間接疑問で多い。質問者が質問をする形で完全な自発会話ではないため、返答予告、ターン明示、トピックシフトなどの機能は見られず。
665. A Metafunctional Study of “We” in Linguistic Academic Discourse Based on Rhetoric Structure Theory
Yaru Zhou
・SLAジャーナル掲載論文をコーパス化して、"we" のレクトリック機能分析。weは11種のレトリック構造関係を表出。関係精緻化、意思・結果関係、非意思・結果関係など。
692. English Language Learning as a Vehicle for Developing Japanese Nursing Students’ Cultural Competency
Mathew Porter A
・日本在住外国人患者35名のナラティブコーパスを構築。看護学生対象の授業での活用例を示す。
757. A Critical Genre Analysis of Administrative Orders From a State University in the Philippines Based on Move Structure and Intertextual and Interdiscursive Performances
Jose Russell Arador
・コーパスで行政命令(AO)を分析。AOは固定表現化され義務のムーブを含む。AOは命令だけでなく関係構築の機能も。
801. “Queen Elizabeth Always Kept Her Cool”: Stance Markers and Rhetorical Strategies in Opinion Columns
Jonathan Ngai
・QE2に言及する新聞のオピニオン記事70本を集めたコーパスを分析。1語のスタンスマーカーではなく、評価性を持った長いチャンクが多用される。
●いわゆるコーパス研究ではなく、CDA研究とのこと(ご本人の発表より)
813. Multidimensional Analysis of L2 English Speeches of Learners From Six EFL Regions and Four ESL Regions in Asia
Shinichiro Ishikawa
・ICNALEの独話データをDouglas BiberのMDAで分析。L1別、習熟度別に異なるパタンを抽出。
830. A Cross-disciplinary Comparative Study of Engagement Resources in Academic Article Abstracts
Wan Liu
・自然科学・工学・応用言語学などの論文60本をコーパス化し、アブストに現れるアプレイザル(評価スタンス)の一環としての読者関与(engagement)をコーディングし、UAM Corpus Tool で分析。科学系(hard disciplines)は人文系(soft disciplines)よりcontractionを多用。応用系は基礎理論系よりexpansionを多用。
888. Using Learning Analytics for Measuring Students’ Language Learning Motivation for Self-Learning Through Corpus Consultation
Lok Ming, Eric Cheung
・香港の大学で社会科学学生にコーパス準拠のライティング指導を7週にわたって実施。学生の動機づけは時間がたつにつれて減衰。強制されなければあえて外国語学習にコーパスを使いたいとは思わない、という学生の声あり。間接的コーパス使用や、副指導での使用などを考えるべき。
908. Pragmatic Gestures and Interactional Fluency: A Multimodal Learner Corpus Analysis
Yen-liang Lin
・ICNALEの対話モジュールの60本の台湾人学生のビデオデータを用い、習熟度別に、問題解決型ジェスチャー(と非流暢性マーカー)、および、ターン管理ジェスチャーの使用を調査。
●ICNALEの海外協力者でもあるLin先生の発表。メールでのつきあいは長いが、対面でははじめてお目にかかれた。ELANを使ってポーズの時間を厳密に測定するなど、きわめて精緻な研究だった。
931. The Significance of a Corpus Linguistics Approach to English Learning in Indonesia: A Review Paper
Elisabeth Marsella, Vinindita Citrayasa
・インドネシア国内の論文アーカイブから、2016-23年に出版された、コーパスを含む論文22本を抽出。大半は言語研究で、まだ、教育応用関連の研究は少なかった。
●corpus linguistic(s)というサーチターム以外に広げてはどうか、と質疑で意見。
932. Hyping Practice in Thesis and Article Abstracts by Indonesian Undergraduates
Yazid Basthomi
・インドネシア人学部生が書いた論文のアブストにおける「誇張」(hyping practice)を調査。インドネシアでは、2012年から、卒業前に卒論を圧縮した卒業論文を有名ジャーナルに掲載することが義務化された(※石川、この点、要検証。学部?院?)。2011-2020の学生論文を収録するCorpus of State University of Malang Indonesian Learners’ English (C-SMILE)を用い、310の誇張表現を調査。
936. Examining the Use of a Corpus-Based Vocabulary Instruction Framework in an EAP Program
Ira Rasikawatim, et al.
・インドネシアの大学でEAPの読解力向上のための自由選択クラスを実施。2群にわけ、一方は、コーパス準拠で語彙知識拡張を目指す指導を、他方は伝統的な語彙指導を実施。受講生のアンケート回答などを紹介。
964. The Language of Leadership at the Time of the COVID-19 Global Crisis
Elineth Elizabeth Suarez
・COVID-19に関わる政治リーダーの発話をCDAの観点で分析。リーダーシップの構築過程を論じる。
997. A Corpus-Based Move Analysis on the Genre of Language Learning Memoirs of MSU-ISED Sophomores
Aisah Jamayesah, Hadji Jamel
・フィリピンの科学中高の中学生の言語学習記録61本(2.5万語)をコーパス化してUAM Corpus Toolで分析。ナラティブにはabstract, orientation, complication, evaluation, resolution, and codaの各部があるとされるが、生徒の産出に共通してみられるのは3つのムーブ、2つのステップだけだった。
1005. Mixed Data-Driven Approach to Extract Pragmatic Routines for EFL Learners
Nanaho Oki, Hiroya Tanaka
・感謝・謝罪・文句・提供・賞賛の5機能を示す語用論的ルーチン(≒慣習的な複数語表現)を、L1話者対象のディスコース空所補充タスク(WDCT)データから抽出。TVドラマコーパスから教室で使用できるルーチンと用例を精選。
●WDCTの結果は、TVドラマと大きく違わず、WDCTデータの信頼性を確認。
1014. Tagging the Evaluative Semantic Lexis of Online Travel Articles
Tri Nuraniwati
・Lonely Planetより、インドネシアの観光地に関するオンライン旅行ガイドを集めて1.4万語のコーパス作成。USAS(意味タグづけ)を用い、評価スタンスを調査。関連タグ中、A5.1+ (evaluation: good) 、とくにbest形が最多。
●do one's bestがgoodに含まれてしまうなどの問題の対処について意見交換。
1191. Transfer of Linking Adverbials: The Case From Asian Learners of English
Xiaoyun Li
・スペイン人は、スペイン語に存在する接続副詞を英語でも多用するという先行研究(Rica 2012)をICNALE(作文、発話)で検証。部分的に先行研究の知見が支持された。一方、習熟度やS/W差に関する意識の影響も示唆された。
1205. Beyond Words: Textual Comprehensibility Analysis of the IELTS Reading Test for Informing Learning
Muhammad Yoga Prabowo
・IELTSリーディング問題文60本を集めたコーパスを使い、リーダビリティ、語彙分布、複合語を調査。教材開発を予定。
775. The Necessity of Developing an Elementary Textbook on Engineering English
Noriko Matsumoto
・英語の苦手な初級者向けの工学英語教材開発。論文ではなくウェブの記事をベースにするほうが利点が多い。
石川ゼミ所属の陳迪氏(D2)が、語彙研究会の「田島毓堂語彙研究基金」による研究助成を受けることとなりました。
石川ゼミ学生が同助成を受けるのは3人目です。
平成26年度(2014年度)
李楓(神戸大学大学院 国際文化学研究科)「現代日本語における漢語サ変動詞の構造と用法」
平成30年度(2018年度)
張晶鑫(神戸大学大学院 国際文化学研究科 博士後期課程)「現代日本語におけるオノマトペの言語特性の解明と用法記述の開発
長年にわたって若手研究者を支援してくださっている語彙研究会さま、とくに、名古屋大学名誉教授でおられる田島毓堂先生のご厚意に深く感謝申し上げます。