大阪樟蔭女子大学で実施された表記の学会に参加しました。
http://www.jacet-kansai.org/file/2017f-1.pdf
下記は同志社大学の植松茂男教授による特別講演「イタリアに於けるCLILの現状と課題」の聴講メモです(文責は石川)。日本でのCLIL型授業の実践を考える上で,示唆に富むご講演でした。
1.イタリアのCLIL教育体制
・学校制度:小(5年)+中(5年)の10年制
・このうち10年生をCLIL化。
・生徒にはB2+の英語力+達意の母語力の獲得が目指される
・トップダウンでの決定
2.教員養成
・小中校教員年収 2.5~3万ユーロ
・イタリア教員の英語力はEU中最も低い
・英語が堪能な人は他の職へ(教員は小学校の9割,中学7割,高校5割が女性)
・当初「CLIL教員養成コースの受講資格を英語力C1+に設定
・その後現職教員に限ってB2+に基準を緩める(コースを先に取らせて語学力は後で伸ばしてもらう)
3.授業見学(小学校)
・トレントの実験学校:小学校レベルで週7~9時間をCLILで(他からも入学希望あり)・専任イタリア人教師+1年間契約のNS(級)講師[東欧出身でイギリスで学んだ人etc]のTT中心
・体育,音楽,図工,地理,英語文化中心(希望により)宗教,(3年より)ドイツ語も・2年地理「トレントにはどんなものがある?」
・3年自然「森林限界(2,000m超えると植物変わるetc)」(話が抽象的になるとclass controlがくずれる)What's underneath the snow? Rock.
・4年算数「絵の描き方を通して空間・距離・深度などの概念を教える」(プロジェクタ使用。授業崩壊に近い姿も・・)
4.授業見学(中学/高校)
・7年数学「タイル使って図形つくる」
・8年生物「生得的か後天的か,DNA」
・10年歴史(調べ学習,グループで静かに)
・11年英語による論文の書き方指導(指示で作文。教員添削して返す。CUPのAdvanced Training使用)
・一部は英語が流暢になっているが,大部分は小学校以降さして伸びていない印象も
5.普及の制約
・教員待遇が悪い
・TTの準備の手間が大変(C1+なら1人で授業してよいが,内容側教師がC1でないとC1のALTを必ずつけないといけない。余分に手間がかかる)
・現地教員が自助努力でC1になるのは困難
質疑
1)ALTの教職資格(校長面接で採用。教員資格不問)
2)イタリア人教師の役割(騒ぐ子どものケア,遅れている子の通訳,何もしない)
3)児童生徒はどの程度L2で発表(発話)するのか? L1を使ってしまうことはどの程度起こりどう対応しているのか?(教師の英語力に比例する)
4)内容理解度はどうか?(イタリア人教師が内容理解をテストなどで確認している例もあった)
5)非母語話者教員の英語発音への社会的批判はないか?(基本的にない)