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2021/05/30

2021.5.30 国立国語研究所 第6回学習者コーパスワークショップ&シンポジウムで招待発表

 下記で発表を行いました。


石川は,ICNALEの構築について紹介し,今後I-JASをはじめとする日本語学習者コーパスで新規追加を検討できる要素として,(a) マルチモーダルデータ(動画),(b)校閲データ,(c)評価データなどがあるのではないと提案しました。

また,学習者コーパス研究者には,母語話者との比較という研究手段を(無自覚的に)取ることで,結果として母語話者の絶対化と学習者の抑圧の構図に加担している可能性への気づきが必要であることを,自戒を込めて話させていただきました。

ELFを前面に出して評価データを集めるICNALE GRAプロジェクトを進めるなかで,この点について私も従前以上に意識的になってきた気がします。コーパスを作る人は,そのデータがどう使われるか,それによって応用言語学にどういう影響が及ぶか,前もって見通す必要もありそうです。


 もう1点,ちょっと考えさせられたことがありました。最近,学会がオンライン化するなかで,私は発表や講演では,前もって発表ビデオを作っておいてそれをその場で流すようにしています。もちろん,何度もリハーサルしてビデオをたくさんつくり,そのなかで,時間どおりぴったり話せたものを本番で使うわけです。
 ただ,今回,参加者のアンケートの中に,せっかく本人がその場にいるのだから直接話してほしかったというお声がありました。もっともだと思う気持ちある一方,オンライン学会における発表の定番スタイルがなんなのかは意外に悩ましい問題です。
 ライブ発表はライブ感のようなものがあるかもしれませんが,一方で,時間配分に失敗して最後のほうは駆け足で・・・ということもありがちです。一方,前撮りにしておけば,何度も録画して,時間配分がうまくいったものを本番で使えます。slip of tongueで不正確なことを言ってしまう問題も回避できます。また,発表者としては,毎回の発表がデータとしててもとに残るのは非常にありがたいことです(後で確認もできますし,たとえば,後日,大学の授業などで学生の参考資料として視聴させることもできます)。
 この問題を考えていて,,むかし,日本英文学会などで,発表者たるもの,その場で適当に話すのではなく,原稿をすべて書いておいてしっかり練習をしたうえで,それをよどみなく読み上げるべきだというカルチャーがあったことを思い出しました(最近の英文学会の口頭発表がどうなっているかは存じませんが)。あのころ,若かった私はそれに反発していたはずなのですが,いま,ビデオ発表派になりつつあるのは,結果的に,英文学会の古典的美意識?に回帰しつつあるのかもしれません。


2021/05/20

2021.5.20 3rd New Trends in Foreign Language Teachingで発表

スペインのグラナダ大学のホストによって継続的に実施されている表記学会で研究発表を行いました。

Shin Ishikawa (Kobe Univ.)
L2 English Learners’ Gesture Use in a Picture Description Task: A Study Based on the ICNALE Spoken Dialogue


開会式(※画像加工処理済み)


発表

分析結果の一部

今回の発表では,ICNALE Spoken Dialogueのジェスチャー分析の結果を報告しました。「ボディランゲージの流暢さ」というのは数年前から興味をもっているテーマで,今回は,日中韓の学習者の発話ビデオデータにジェスチャータイプを手作業でコーディングして,口頭発話の量・質との関係性を統計的に探りました。先行研究では,流暢なほどジェスチャーが増えるという見解と,逆に,流暢性が失われたときに(言語能力の不足の補償措置として)ジェスチャーが生じるという見解があります。今回の分析では,ジェスチャータイプによって流暢性との相関はまちまちであること,手を振るジェスチャー(moving one's hand)がしばしば発話を引き出す機能を有し,発話量と相関する可能性が示唆されました(そういえば,上記のわたしの発表ビデオでも機嫌よく話しているときには無意識に手が動いていました・・・)。

発表後の質疑では,「文化の影響」について指摘がありました。これは非常に鋭い指摘で,結局,何らかの差が出た場合に,L1の影響なのか,社会制度(教育制度)の影響なのか,文化や価値観の影響なのかは簡単には結論できず,この点が学習者コーパス研究をサイエンスにしていく上で,分野全体で考えていくべき課題と言えそうです。私見では,とくにアジアの場合,L1 transferは限定的で,culture turansferのほうが大きく影響しているという感触を得ています。


セッション後の質疑応答(※画像加工済み)







2021/05/09

2021.5.9 英語コーパス学会春季研究会聴講

表記を聴講しました。

第 1 部 ツール・統計手法 SIG シンポジウム「語彙ツールとキーワード統計手法の再訪」

Atsushi Mizumoto (Kansai University) Revisiting what counts as a word: The development of New Word Level Checker

Laurence Anthony (Waseda University) Revisiting the concept of keyness: Frequencies, dispersions, and effect sizes

第 2 部 語彙 SIG シンポジウム「コロケーション辞典は日本人英語学習者のニーズに応えられているか?」

石井康毅(成城大学)「学習者向け中規模コロケーション辞典の見出し語分析:CEFR-J Wordlist を基準とした比較調査」

内田 諭(九州大学)「日本語コーパスに基づいた英語コロケーション辞典の必要性と可能性」