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2017/09/27

2017.9.27 神戸大学附属中等教育学校KP4講演

同校が進めている卒業研究(Kobe Project:KP)に関して,4年生(高校1年生)全員に向けて講演を行いました。


講演では,最初に5人の生徒による自身の卒業研究の構想発表を聞いた後,私のほうから,各々のプランの論理的問題点や改善の方策について助言を行いました。

研究では,どんな場合でも,問題を分解し,扱う内容を細かく定義することが重要です。

たとえば,「ポイ捨てをなくす看板とは」といったテーマであれば,

1)設置場所
2)設置数
3)看板のサイズ
4)看板の色・デザイン
5)看板に書く文言

など,多くのパラメタが関与してきます。

こうしたパラメタを広く浅く扱うだけでは,なかなか面白い結果は出てきません。自身の関心をふまえて,扱うパラメタを1つに絞ることが研究の深さを引き出す上で効果的です。

もし私なら,たとえば,5)に着目し,以下のように条件統制を行ったテキストを被験者に読ませ,それぞれを読んだ後で「指示に従おうと思った」スコアを聞き,言語タイプと心理的効果の間にある種の数学的モデルを組むといったことをするでしょう。

【細かさ】:ごみは分別せよ/ごみは4種に分別せよ
【丁寧さ】:ごみは分別せよ/ごみは分別してください/ごみは分別していただけないでしょうか/誠に恐れ入りますがもしよろしければごみは分別していただけないでしょうか
【罰則】:ごみは分別せよ/ごみを分別しない場合校内推薦ポイントから5点を減じます
【感謝】:ごみは分別せよ/ごみを分別していただければありがたいです/助かります/恩に着ます
【視点】:ごみを分別していただけると当方としてはありがたく思います/ごみを分別していただけると業者の方もきっと感謝されます/ごみを分別していただけないと当方が迷惑します/ごみを分別していただけないと業者の方が迷惑されます
【時制】:ごみを分別してくださるとありがたいです/ごみを分別してくださってありがとうございます/いつもごみを分別してくださってありがとうございます。

研究は広く浅くより,狭く深く。この点を高校生に伝えていきたいですね。

2017/09/26

2017.9.26 東京外大 言語教育(CERE)国際ワークショップ

東京外国語大学言語教育(CERE)国際ワークショップ
2017年9月26日(火)15:00-19:20
場所 東京外国語大学 語学研究所(研究講義棟4階419号室)

プログラム
15:00-15:10
挨拶 富盛伸夫(科研代表者)

15:10-15:50
「EUにおけるCEFR改訂の最新動向について」根岸雅史(東京外国語大学教授)

16:00-16:40
「東京外国語大学の言語教育プロジェクト、CEFR-J x 27の現在と展望」投野由紀夫(東京外国語大学教授)

17:00-17:40
「タイ語教育スタンダード化に向けてのCEFR導入の課題」ウィッタヤーパンヤーノン(齋藤), スニサー(東京外国語大学特任外国語教員)

17:50-18:30
「アジア諸語へのCEFR導入に関わる諸問題 −ミャンマーでの言語教育調査から−」岡野賢二(東京外国語大学准教授)、トゥザ・ライン(東京外国語大学博士後期課程)、富盛伸夫(東京外国語大学名誉教授)

18:40-19:20
「総合討議 −CEFRの受容と適用可能性をめぐって−」

表記ワークショップ(の前半の部)に参加しました。CEFRについては,4月刊行の拙著でも詳しく紹介したのですが,現在大幅なリニューアルが進んでいるということで,その最新情報を学ぶために参加しました。

リニューアルの内容については興味深い点がたくさんありましたが,最も印象に残ったのは,いわゆる母語話者理想主義の排除です。Can-doの中に出てくる母語話者モデルの大部分が消えることになりそうです。応用言語学において母語話者理想主義は常に悩ましいトピックでしたが,CEFRの出す回答にこの問題を建設的に考えるヒントがあるかもしれません。



2017/09/25

2017.9.25 附属中等教育学校SGH運営指導委員会

神戸大学附属中等教育学校SGH(Super Global High School事業)第1回運営指導委員会

日 時 平成29年9月25日(月) 13:30~16:30
内 容 報告・協議項目
 (1)本事業に係る生徒の成果発表(課題研究、国際交流事業等)
 (2)本事業全体構想及び平成28年度までの中間報告について
 (3)平成29年度の取組状況について
 (4)意見交換

校内の研究委員会の代表として表記に出席しました。附属のSGHは2年目に入って著しい成果をあげてきましたが,今後の課題は,海外体験の拡大化,卒業研究の深化の2点に要約できるのではないかと思います。

現在,複数の高校のSGHに関わっていますが,どの高校にとっても,大学教員を呼ぶのは,費用の上で大きな負担になります。神戸大にいる1,500人(?)のプロフェッサーを無償で呼べるという圧倒的な利点を活かして,これらの課題を克服していってほしいと思います。

2017/09/23

2017.9.23 神戸大学大学院オープンキャンパス

表記イベントに出席しました。



入学を希望される方と面談していて思ったのは,「外国語教育研究」をイメージではなくリアルにとらえる必要性です。なんとなく外国語教育を研究したい,という気持ちが出発点になることは悪くないですが,その段階にとどまらず,そこから自分の関心にどう具体的な形を与え,修士なれば2年,博士なれば3年の研究計画に落とし込んでいけるかが勝負と言えるでしょう。



2017/09/21

2017.9.21 附属小学校グローバル教育研究部会@明石・附属小

明石市にある附属小において,表記関係者と現在開発中のカリキュラムについて会議を行いました。

附属小では小学校2年から(いわゆる)英語教育を行っていますが,2~3年は「せかい領域」,4~6年は「グローバル科」として学校設定科目に準じた扱いを行っています。

ただ,これまでは,これらの科目が通常の英語とどう違うのか,そのコンセプトが明確ではありませんでした。

今回の改革では,「せかい領域」にトピックスタディを,「グローバル科」にエリアスタディの視点を導入し,言語指導と内容指導を統合させたCLIL型のカリキュラムを開発することになります。

これによって,身近な他者理解から世界の様々な国の人々の理解へと進む視野の段階的拡張が実現すればと願っています。

           学校全体におけるグルーバル教育の体系図(案)

2017/09/14

2017.9.14 兵庫県立伊丹高等学校SGH生徒向け講演

表記の学校において,1年生全員(約200人)に講話を行いました。

講話の前半は,英語で,論理思考の開発について話し,後半は,同校が進めるSGHの研究のテーマ設定の改善について,日本語で話しました。

講演風景


研究活動では,何らかの社会的問題に対し,調査を経て,何らかの解決を示すわけですが,「問題」が緩いと,同様に緩い「解決」しか出てきません。

 研究指導では,解決(提案)の面ばかりが強調されますが,より重要なのは,その提案できちんと解決できるように問題の側を細分化し,クリアに定義すること,と言えるでしょう。キーコンピテンシーなどの議論において,問題解決能力と問題発見能力がしばしば同時に論じられるのもこのためです。

 こうした指導は,従来の日本の教科指導でほぼ完全に脱落していた部分です。今後,SGHなどの実験的取り組みが終終わったあと,こうした「論理思考」の指導を日本の中等教育にどう根付かせていくか,逃げずに議論する時期が来ていると感じます。

2017/09/13

2017.9.13 尼崎市立武庫東中学校公開授業指導

表記で授業視察と講話を行いました。

視察したのは,アクティブラーニングを志向する理科と社会の授業で,いずれも「マナボード」をうまく使い,グループでの討議を深め,クラスで共有させていました。

http://www.izumi-cosmo.co.jp/manaboard/

こうした取り組みは大学などでも導入できるかもしれません。

教員向け講演の様子