下記の学会に参加し,研究発表を行いました(online)。
1st International Symposium on Applied Linguistics Research: Language Studies: Practical Implications for the Society (主催:ALLAB, Prince Sultan University)
7 November 2020
聴講メモ
Professor Norbert Schmitt (University of Nottingham, UK) "Vocabulary Size Requirements and Principles of Teaching Vocabulary"
英語の現状
・英語話者:1500年代は400万→1900年代に1.2億→2018年には3.4億+10億のNNS
・世界で出版される本のうち英語は25%
・人気トップ1000万種のウェブサイトのうち英語は56%
・英語は34%(日本語は16%)
・55か国中73%で,国内の映画の興行成績トップ7種はすべて英語
・Scopus登録誌のうち英語は80%
・IELTS(2013年)受験者は130か国,200万人
必要語彙量
・オーラルは定義難しい
・テキスト読解で95%達成するには(レマ換算),小説で5,800語,若者小説で4,600語,新聞で6,800語,雑誌で8,200語,論文で5,200語。98%にすると8,600~14,300語必要(Schmitt, Gardner, Davies & Schmitt, in prep)
・リスニングで95%達成するには,会話1500語,講義2700語,ラジオ3500語,トークショー400語,sitcom(テレビドラマ)2900語。98%だと3100~6500語
必要語彙量と読解度
・読解度の調査(5%の語彙をブランクにしたテキストを読ませるなど)
・リーディング カバー率で90-94%の間はほぼフラットで変化しない(読解度50%)。95-100%までカバー率が上がると理解度もほぼ線形で上昇60-73%まで)(Schimitt, Jiang, Grabe 2011)
・リスニング NSの場合カバー率90~100%にかけて理解度80-100%,NNSは低い。
語彙の指導(語彙を知っているということ)
・語形:変形が難しい場合も(persist/ persistence, persistent, persistently)。MA学生でもこうした語彙のすべての語形を知っているわけではない
・コロケーション:coffeeの形容詞としてstrongはOKだが,*powerfulや*heavyはだめ。rainの形容詞としてheavyはよいが*powerfulはだめ。?strongは不自然。
・文脈知識:explicitの学修だけでなくexposureが必要
語彙習得は段階的(incremental)
・スペル:まったくだめ,何文字かわかる,音はあってる,正しいスペル。段階あり。
・派生:nation--> national--> nationalization...
・発音,スペル,意味,文法,連語,レジスタ,頻度,連想等の各レベルについて段階を測定する必要がある
・既習知識の強化(記憶は当初急速に減り,その後も徐々に減っていく),発達進展,語彙知識の多面を習得する上では,語彙のrecyclingが重要
・復習(revision session)の間隔を徐々に広げる(直後,1日後,1週間後,1か月後,半年後)ことで記憶の維持が可能
・grieve/ receive→ [i before e, except after c]のようにexplicitで覚えることも大事
・ptardine/ tcharal -->直観によって非語と判断できる
連語
・phatic phrases(あいさつ), backchannel(相槌),談話の構成(in conclusionなど),専門用語的(血圧:140 over 60 cleared to land)
・高頻度連語はexplicitに教えて,加えてexplosureで補強
・Paul Nation:意味志向インプット,意味志向アウトプット,言語志向の学修,流暢性訓練の4区分に等しく強調を置くべき
結語 "May the lexicon with you"
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下記の内容について発表を行いました。
題目:Influence of L1, L2 Proficiency, and Task Types on Lexical Features of L2 Speeches by English Learners in Asia: A Study Based on the ICNALE Spoken Dialogue
私の最近の関心の一つは,L1(地域)とL2習熟度のいずれの要因が学習者の語彙的産出を決定しているのか,ということです。ICNALEの新モジュールであるインタビューモジュールで収集したカンバセーションデータ(認知的により平易な試験官との質疑応答)と,ロールプレイデータ(認知的な負荷の高い相手を説得する発話)における高頻度語彙(100語/50語)を分析し,この点を検証しました。
今回のデータに限って言えば,学習者の語彙使用・語彙選択は,L2習熟度の違いではなく,圧倒的にL1(地域)で固まるという結果が得られました。アジア各国の学習者の中で,日本人学習者の語彙使用は相対的に言えば韓国やタイの学習者と似ています(※これは別のICNALEデータを使った分析結果とも一致し,ある程度再現性のある結果と言えます)。また,母語話者は必ずしも学習者から独立した語彙使用を行っているわけではないことも示唆されました。これはなかなか面白い結果ではあるのですが,このデータが示唆するのは,英語発話における語彙使用について言えば,「〇×人はどこまで行っても〇×人」ということであり,英語教師としてはかなり複雑な気分になります。。。
もう1つ興味深く聞いたkeynote
Prof. Dr. Christina Gitsaki (Zayed University, Dubai, UAE) "Issues in Applied Linguistics: Gulf Perspectives"
・アラブ圏ではアラビア語が話せないアラブ人も
・母語が第2言語になる恐怖
・AILAは各国1組織だけが入れる。中東圏からはイスラエルとトルコしか入っていない
・AILA2014における1195の研究発表のうち,アラブ圏研究者のものは10だけ(0.83%)
・アラブ圏の応用言語学者の声は世界に届かない