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2020/11/27

2020.11.27 大学院集団指導でゼミ生が発表

 国際文化学研究科外国語教育論外国語教育コンテンツ論コースの集団指導で,下記のゼミ生が発表を行いました。


神戸大学国際文化学研究科外国語教育論講座外国語教育コンテンツ論コース
第4回(オンライン)集団指導プログラム


日時:2020年11月27日(金)10:00~11:22
形式:zoomによるオンライン形式(質疑応答のみ)(D=8min, M=5min)


ゼミ生発表
10:05~10:10 
佐々木恭子「現代英語におけるbecause使用」

10:10~10:15 
堀家利沙「高大連携を志向した日本人英語学習者の句動詞の発達パタンのモデル化―学習者コーパスを使った研究―」

10:15~10:20 
安美彦「日本語書き言葉における「形容詞+条件節」の使用―「現代日本語書き言葉均衡コーパス」を用いた調査をふまえ」

10:30~10:35 
石田麻衣子「小学生のための基本名詞コロケーションリスト」

10:48~11:06 
鄧琪「学習段階の変化が日本語学習者の外来語使用に及ぼす影響「日本語学習者書き言葉コーパス」を用いた縦断調査」

11:14~11:22 
肖锦莲「作文に見る学習者のヘッジ使用―文脈調査に基づいて―」

2020/11/24

2020.11.24 京都光華中学校・高等学校での講話(2)

 11/19に引き続き,京都光華にお邪魔し,3つの授業を拝見して,講話を行いました。

 DALの授業の成功のコツはいくつかありますが,全体活動(教師による説明)と個人活動(班活動)の量的比率をうまくコントロールすることは大事なポイントの1つです。

 たとえば,資料解析系の社会授業であれば,授業の冒頭で資料を渡し,その後,いきなり班任せにしてしまうと,教師がさせたい「深い思考」に入る前の段階でひっかかってしまう生徒も出てきます。

 生徒に深く考えさせることを重視するDeep Active Learningの授業といえども,思考には準備(前提の理解,立場の理解,ミッションの理解)が必要です。この部分は,教師主導の説明でしっかりと入れていくべきでしょう。

 スキーで言えば,生徒に雪山を滑降させようとするなら,教師が「滑ってこい」というだけでは不十分です。個々の生徒のウェアやシューズの状態を点検し,手を引いて,リフト乗り場まで連れて行き,リフトチェアまで全員を確実に座らせる,ここまで確認してはじめて「楽しんで滑ってこい」と言えるわけです。授業設計の際に,タスク導入についてこうした方針をとっておけば,生徒の理解度は向上し,タスクにもより主体的に関与できるでしょう。


資料解析系の社会科授業の設計例(試案)


2020/11/19

2020.11.19 京都光華中学校・高等学校で講話

 この秋から,京都光華中高における授業改革(アクティブラーニング型の授業の設計と普及)に継続的に関わっており,今回は,4つの授業を視察させていただき,その後,講話を行いました。

 DAL(Deep Active Learning)の授業では,パフォーマンス課題を設定することが多いですが,その際,リアルなシナリオを作り込んで,タスクに具体的な意味と方向性を与えることが重要と言えるでしょう。

 また,評価で言うところの規準,つまりは,理想的な達成のイメージをクリアに共有することも大事でしょう。たとえばスポーツの指導であれば,強烈なスマッシュで相手を撃破することが理想なのか,あるいは長く気持ちよくラリーを続けるのが理想なのか,ここの理解が教師と生徒の間で共有されていないと,活動の方向性が不明確になってきます。

 一般に,DAL授業というと,open-endedなディスカッションを想像する向きもありますが,実際には,方向性のないタスク(単なる「やってみよう」系タスク)では,児童生徒のやる気を引き出すことは困難です。ゴール設定とそこに至る過程がクリアに定義・規定されていることが,DAL授業の成功の秘訣の1つです。


英語の場合:パフォーマンス課題のシナリオを作り込むことで,タスクに意味と意義を与える


体育の場合:目指すべき姿をクリアに明示し,生徒と教員間で共有する

光華の先生は熱心な方ばかりで,年度末の公開授業が楽しみです。


2020/11/16

2020.11.16 対面授業実施

神戸大の授業は,後期も遠隔で行っていますが,クオータ(8週)に1回程度,必要に応じて対面指導を行ってよいことになっています(事前届け出制)。

 この制度を使い,11/6(月)・11/8(水)に,大学院1クラス(言語統計),学部5クラス(英語)の授業を,教室で行いました。

 新入生にとっては,入試日以来,初登校だったという方もおられました。また,わたしにとっても,1月以来,10か月ぶりの教室での授業です。久しぶりにやってみて,やはり授業は対面のほうが伝わりやすいなと改めて感じた次第です。

 なお,現状,大学の教室には,アルコールが置いている以外には特段の対策がなされていないため,学生間を仕切る,簡易なアクリルのパーティションを自作して教室に持ち込みました。記録として紹介しておきます。

 パーティションを自作するには,(a)土台部分,(b)間を仕切るアクリル板的なもの,(c)アクリル板を土台にとめるクリップ的なもの,が必要になります。今回,実験もかねて(また,近所の百円均一に同じものの在庫数が少なかったこともあり),(a)については,ワイヤ収納システム専用台(※用途は違うが流用可能,2ケ100円で安い)と本立て(2つ200円になるので割高)の2種,(b)については,A3額縁(フレームがあって丈夫そうだが200円)とA3の堅めのクリアファイルの2種,(c)についてはクリップ大を購入しました。また,(b)に関して,クリアファイルは立てると自重でたわんでくることがわかったので補強用に針金を入れることし,それも購入しました。1セットのコストは200円~400円ぐらいです。


ヒャッキンでの購入物一覧


教室設置(額縁+収納台座使用 300円)


教室設置(クリアファイル+収納台座使用 200円)


教室設置(クリアファイル(針金補強)+本棚使用 300円)


 実験してみて,ある程度のパーティション効果(「いちおう対策している」という心理的安心感の醸成?)はあるものの,実際に学生がペアで話す場合は,二人の口の位置は,デスク真上ではなく,それより後ろ側(椅子側)になり,つまりは,発話時の完全なパーティションとするには,デスク上設置ではなく,椅子の後ろのほうからスタンドを立ててそこから上部からつるすようにしないと難しいことがわかりました。また,この位置にパーティションを立てると,中間モニタが非常に見えにくくなるという欠点があることもわかりました。
 一方で,当初は,アクリル板を立てても誰が消毒するのかという議論を内部で延々とやっていたのですが,常時マスク着用の場合,学生に話させても,目に見える飛沫が板につく,ということはありませんでした。

 授業終了後,余った部材を使って,研究室のゼミ用の机のパーティションとしました。ただ,ゼミも遠隔継続中で,いつものように学生が部屋に来るのはいつになることやら・・・という印象です。

研究室(ゼミ用のデスクの中央をパーティション3つで仕切る)

 授業実施後,2週間は不安な気持ちもあったのですが,とくに問題なく,1か月近くが無事に経過しましたので,ご報告まで。(報告日12/10)

2020/11/07

2020.11.7 International Symposium on Applied Linguistics Researchに参加・発表

下記の学会に参加し,研究発表を行いました(online)。

1st International Symposium on Applied Linguistics Research: Language Studies: Practical Implications for the Society (主催:ALLAB, Prince Sultan University)

7 November 2020 


聴講メモ

Professor Norbert Schmitt (University of Nottingham, UK) "Vocabulary Size Requirements and Principles of Teaching Vocabulary"


英語の現状
・英語話者:1500年代は400万→1900年代に1.2億→2018年には3.4億+10億のNNS
・世界で出版される本のうち英語は25%
・人気トップ1000万種のウェブサイトのうち英語は56%
・英語は34%(日本語は16%)
・55か国中73%で,国内の映画の興行成績トップ7種はすべて英語
・Scopus登録誌のうち英語は80%
・IELTS(2013年)受験者は130か国,200万人

必要語彙量
・オーラルは定義難しい
・テキスト読解で95%達成するには(レマ換算),小説で5,800語,若者小説で4,600語,新聞で6,800語,雑誌で8,200語,論文で5,200語。98%にすると8,600~14,300語必要(Schmitt, Gardner, Davies & Schmitt, in prep)
・リスニングで95%達成するには,会話1500語,講義2700語,ラジオ3500語,トークショー400語,sitcom(テレビドラマ)2900語。98%だと3100~6500語

必要語彙量と読解度
・読解度の調査(5%の語彙をブランクにしたテキストを読ませるなど)
・リーディング カバー率で90-94%の間はほぼフラットで変化しない(読解度50%)。95-100%までカバー率が上がると理解度もほぼ線形で上昇60-73%まで)(Schimitt, Jiang, Grabe 2011)
・リスニング NSの場合カバー率90~100%にかけて理解度80-100%,NNSは低い。


語彙の指導(語彙を知っているということ)
・語形:変形が難しい場合も(persist/ persistence, persistent, persistently)。MA学生でもこうした語彙のすべての語形を知っているわけではない
・コロケーション:coffeeの形容詞としてstrongはOKだが,*powerfulや*heavyはだめ。rainの形容詞としてheavyはよいが*powerfulはだめ。?strongは不自然。
・文脈知識:explicitの学修だけでなくexposureが必要


語彙習得は段階的(incremental)
・スペル:まったくだめ,何文字かわかる,音はあってる,正しいスペル。段階あり。
・派生:nation--> national--> nationalization...
・発音,スペル,意味,文法,連語,レジスタ,頻度,連想等の各レベルについて段階を測定する必要がある
・既習知識の強化(記憶は当初急速に減り,その後も徐々に減っていく),発達進展,語彙知識の多面を習得する上では,語彙のrecyclingが重要
・復習(revision session)の間隔を徐々に広げる(直後,1日後,1週間後,1か月後,半年後)ことで記憶の維持が可能
・grieve/ receive→ [i before e, except after c]のようにexplicitで覚えることも大事
・ptardine/ tcharal -->直観によって非語と判断できる

連語
・phatic phrases(あいさつ), backchannel(相槌),談話の構成(in conclusionなど),専門用語的(血圧:140 over 60 cleared to land)
・高頻度連語はexplicitに教えて,加えてexplosureで補強
・Paul Nation:意味志向インプット,意味志向アウトプット,言語志向の学修,流暢性訓練の4区分に等しく強調を置くべき

結語 "May the lexicon with you"

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下記の内容について発表を行いました。

題目:Influence of L1, L2 Proficiency, and Task Types on Lexical Features of L2 Speeches by English Learners in Asia: A Study Based on the ICNALE Spoken Dialogue


私の最近の関心の一つは,L1(地域)とL2習熟度のいずれの要因が学習者の語彙的産出を決定しているのか,ということです。ICNALEの新モジュールであるインタビューモジュールで収集したカンバセーションデータ(認知的により平易な試験官との質疑応答)と,ロールプレイデータ(認知的な負荷の高い相手を説得する発話)における高頻度語彙(100語/50語)を分析し,この点を検証しました。


今回のデータに限って言えば,学習者の語彙使用・語彙選択は,L2習熟度の違いではなく,圧倒的にL1(地域)で固まるという結果が得られました。アジア各国の学習者の中で,日本人学習者の語彙使用は相対的に言えば韓国やタイの学習者と似ています(※これは別のICNALEデータを使った分析結果とも一致し,ある程度再現性のある結果と言えます)。また,母語話者は必ずしも学習者から独立した語彙使用を行っているわけではないことも示唆されました。これはなかなか面白い結果ではあるのですが,このデータが示唆するのは,英語発話における語彙使用について言えば,「〇×人はどこまで行っても〇×人」ということであり,英語教師としてはかなり複雑な気分になります。。。


もう1つ興味深く聞いたkeynote

Prof. Dr. Christina Gitsaki (Zayed University, Dubai, UAE) "Issues in Applied Linguistics: Gulf Perspectives"

・アラブ圏ではアラビア語が話せないアラブ人も
・母語が第2言語になる恐怖
・AILAは各国1組織だけが入れる。中東圏からはイスラエルとトルコしか入っていない
・AILA2014における1195の研究発表のうち,アラブ圏研究者のものは10だけ(0.83%)
・アラブ圏の応用言語学者の声は世界に届かない








2020/11/06

2020.11.6 神戸大学国際文化学研究科コロキアムⅢでゼミ生が報告

表記の学内行事が開催されました。


これは博士課程3年生を対象に行われるもので,11月冒頭に提出した「博士予備論文」の内容をふまえて質疑応答と審査が行われます。首尾よく審査を通過すれば1月の博士論文提出,博士論文審査につながっていきます。

今回は3名の発表がありましたが,石川ゼミから下記の学生が発表を行いました。例年は学内で実施しますが,時節柄,本年はzoom実施となりました。






2020.11.6 兵庫県立兵庫高校創造科学科で講演

表記で講演を行いました。

演題:課題を解決する作法


 探究などのリサーチでは,課題を発見し,課題の解決を提案することが求められますが,示される提案が,自身が冒頭で示した問題と実際には合致していないということがよくあります。これは論理的な齟齬で,問題に対する直接的な解決(当該の問題を確実に解消する個別的・固有的なアプローチ)と,疑似解決(もしかしたらそれで問題が解決するかもしれないが解決しないかもしれない抽象的・一般的なアイデア)を区別して考えることが重要だと言えるでしょう。

 高校生の探究については,その効果がはっきりしないという根強い批判もあり,探究をさせるぐらいなら教科学習をしっかりやるべきという意見も聞きますが,私見では,教科学習だけでは,前述したような論理的思考(というより「思考の作法」)をうまくはぐくむことは難しいのではないかと思われます。探究で得られた思考の作法は生涯残るものです。この意味において,仮に「偏差値アップ」といったわかりやすい成果がすぐに出ないのだとしても,高校生が一定の時間をかけて探究活動に取り組む意義はきわめて大きいと考えます。



2020/11/04

2020.11.4 神戸市外大講演会(コモントーク)聴講

【日 時】2020年11月4日(水)14:00-15:00
【開 催】Zoomミーティング

講師 Michael HOLLENBACK 先生
演題 The Native Speaker Problem

聴講メモ
・NS概念の起源:ideal speaker-listener in a completely homogeneous speech community (Chomsly, 1965, p.3)
・prestige standardsとしての英米
・NSは講義で5億人だが,トーゴとかギニアは英語がmonolingualだがNSとみなされない。インドやフィリピンも同じく。
・英米偏重は,言語の価値ではなく政治的な力による
・英国の中にも方言(Wales, Scotland, England....)が各種存在。米国も文法・語彙・発音が地域によって違う。
・speech community:特定の年齢・性別・人種・階級・文化を前提とする
・理想的NS:英or米,都市,白人,男性,中年,上級(大学卒)
・求人広告の差別:NS(※国籍で決定される)に限る
・教科書や各種テストも米語などのstandardsを前提に
・日本人の見方:白人=英語NS=白人・・・(循環概念)
・NSという概念は人種や性別を含む社会的membership。つまり「NSレベルの英語力」は達成不可能な目標。
・linguistics anthropology(言語は構造というより,文化的・社会的なもの)
・7言語で世界の公用語の75%(※戦時中の領土と関係)
・言語政策の影響(小学校英語,SGH, トビタテ留学JAPAN,Global 30)
・recommendations
1)英語の多様性や方言を教える
2)英語以外も教える
3)アイヌ・琉球語などを教える
4)国籍に基づく英語教師の採用制度を変える
5)標準英語テストへの依存を減らす
6)正確性ではなく,言語意識(language awareness)と理解度(comprehension)に基づく評価の導入

感想
・主張には同意するが,例えば中学校で多言語教育をするとして,時間や教師の確保はどうするのだろうか? 極端な話,週4時間の英語を隔週1回にして,その分他の言語を教えることは本当に良いことなのだろうか?理念的問題と実利的問題のバランスのとり方は?