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2020/10/30

2020.10.30 尼崎市立武庫東中学校で講演

表記で講演を行いました。

演題:中学校における新しい学習評価:変わることと変わらないこと




新指導要領では評価の観点が4から3に変更されるため,現場の先生方は評価の技術的側面に関心が向きがちですが,この問題を考える際には,テスティング研究や我が国の教育政策における評価指針の変遷の過程や,評価における態度の位置づけ等に関して,大きな見取り図を持っておくことが重要だと考えます。このたびの新しい評価基準は評価論などの考え方に照らしてもおおむね妥当なもので,とくに科目間での観点のズレが解消された点は個人的には正しい変化であったと考えています。

2020/10/27

2020.10.27 言語系学会連合声明について

言語系学会連合より,日本学術会議問題について,声明が出されました。

私は言語系学会連合を構成する諸学会のうち,5つの学会の正会員であり,そのうちの2つでは役員も務めています。しかし,この件について,(私の知る限り)関連する5つの学会で,構成員全体の意見聴衆を行ったという事実はありません。

言語系学会連合の構成団体の構成員(つまりは同連合の構成員)であるところの私個人はこの件について,連合の声明を支持する立場にありません。

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声明の内容によらず,どんな団体にも様々な意見があり,それらを1つにまとめて団体の意見として表明するのは非常に難しいものです。しかし,いったん外に出てしまえば,それは団体構成員全員による一致した見解だとみなされるでしょう。ということで,無意味だとは思いますが,少なくとも私は意見が違いますよ,という小さい声をあげておきます。

2020/10/24

2020.10.24 日本混合研究法学会第6回大会で発表

下記でシンポジウム発表を行いました。


第6回日本混合研究法学会年次大会(JSMMR2020)
混合研究法への展望 ~質と量を越えて~ 

開催日:2020年10月24日(土)・10月25日(日) @オンライン開催
大会ホームページ:http://www.jsmmr.org/conference/jsmmr2020/



当日は,量的研究をやっている研究者と質的研究をやっている研究者がそれぞれの課題などを発表し,MMRの立ち位置を考えるという趣旨で,個人的には大変楽しませていただきました。



石川メモ
混合研究法(mixed methods research:MMR)の概要

5大原則
1)RQに対して量的・質的データを収集して分析
2)ともに厳密な(rigorous)手順を踏む
3)両者を統合する
4)混合研究デザインに組み込む
5)理論・哲学で研究を枠づける
・ポスト実証主義 postpositivism/ postempiricism(旧実証主義と違って,実験者と実験対象の相互影響やバイアスを加味。量だけでなく質も。決定・要素還元・実証・仮説検証)
・社会構成主義 constructivism (理解・多元・社会的・歴史的・仮説生成)
・変革的 transformative (政治的・公正・協働・変化志向)
・実用主義 pragmatism (結果重視・問題解決重視・多元的・実社会志向)

3つのデザイン
1)収斂デザイン convergent(量・質並行)
2)説明的順次デザイン explanatory sequential (量→質)
3)探索的順次デザイン exploratoey sequential(質→量)
※ジョイントディスプレイ(図解)

4+1の技法(仮に質=A,量=Bとする)
1)融合(merge): A+Bを組み合わせる
2)説明(explaining): AでBを説明
3)積み上げ(building): AでBを拡張
4)埋め込み(embedded):AはBの一部
5)メタ推論(meta-inference):AとBから推論

2003/2018の変化
1)typology以外の研究デザインも
2)デザインは事前決定から,研究の中での生成へ
3)基本デザインは3つ+3つの複合形
4)timing/priorityよりもintent
5)統合とmeta inferencesの重要性


感想
・5大原則のうち1~3は常識的なもので完全に合意できる
・原則4~5は,おそらくは質的研究を特徴付ける研究作法を持ちこんだものだと思うが,この部分がクリアできないと「MMでない」ということになると,他分野との協働は難しそうにも感じる
・ジョイントディスプレイという発想は非常に魅力的なもので,たとえばコーパス言語学で行う語義の再定義などでも,クラスター分析などで行った語義の再整理と,そのもとになった頻度データを棒グラフなどで同時に示すことが行われており,これも振り返ってみればジョイントディスプレイと言えなくもないような気も。
・ただ,言語研究の場合,社会学的な意味での「インタビュー」というのはふつう行わないので,質的データのソースはNSの内省調査ということになるのだろうか?だとすると,一般的なコーパス研究とは距離感がある「NS個人の言語直観による規範」のようなものをコーパスデータと等価なものとして並べるような気もして,このへんもなかなか悩ましい。
・MM学会は創設して日が浅く,活気にあふれ,みんなで新しいことを学ぼうという意欲と前向きのエネルギーにみちあふれていた。コーパス言語学も25年前はそうだったと思うが,コーパスという手法が普及し,処理が平易化された中で,手法に軸足を置く学会的な組織がどうす進むべきか,いろいろと考えさせられた。。。



2020/10/23

2020.10.23 Incorporating Corpora in Teaching” Symposium聴講

下記をオンラインで聴講

Incorporating Corpora in Teaching” Symposium
Friday 23 October 2020 from 9.30 to 15.0
Organised by Professor Terry Walker and Associate Professor Rachel Allan


Zoom発表(第1発表より)


聴講メモ

★Spreading the net: Empirical studies in data-driven learning
Alex Boulton (University of Lorraine)
・DDL研究論文489本を集めて250万語コーパスを作成,コーディング付き。
・DDL研究は経年的に増加,有名雑誌にも掲載増える

★Redefining DDL for the 21st century digital learner
Fanny Meunier (UC Louvain)
・DDLは普及しているが,書き言葉のコンコーダンスライン分析に留まっている
・話し言葉などより幅広いデータを含めたDDLの再定義が必要

★Developing a critical agenda for learning-driven DDL
Pascual Pérez-Paredes (Universidad de Murcia / Cambridge Language Sciences)
・DDLの使用は大学では増えるものの,その実践範囲はまだ限界的。5つの課題。
・(1)学習者の役割は受け身的で,学習成果や目的はは曖昧
・(2)エラー分析が中心のため,学習者の能力の不足や欠損を強調することになるが,この方向はSLAの潮流(nonnativenessの再定義)と対立
・(3)コーパスデータ以外の利用の可能性。
・(4)気づき(noticing)に関する研究の不足
・(5)より幅広い言語学習理論との接合の不足。

★Uses of a learner corpus for student teachers
Christer Geisler and Christine Johansson (Uppsala University)
・Uppsala Learner English Corpus (ULEC):スウェーデンの中学生・高校生の英作文
・30万語(中学生7.1万語,高校生21.4万語)
・ウェブにテーマ(課題)が提出され,その下のボックスに作文を執筆(※スペルチェック機能などはなし)
・大学教員養成課程でのSLA/教授法/誤用分析での指導や,卒研データとしても使用
・分析事例
・スペルミスが多い(becouse/becuseなど)。STTRで職業校・学問校の10歳作文・11歳作文を比較すると,職業校のほうが値が高い(??)。中高生作文の名詞句の質的比較など(同じghostがテーマでも名詞句がだんだん長くなる)。
・USE (Uppsala Student English) やICLEを加えて卒論を書く学生も。

★Bringing a focus to the importance of patterning in language acquisition through corpus use
Anne O’Keeffe (Mary Immaculate College, University of Limerick, Ireland)
・SLAでは実例に触れることが重要。Usage-Basedの習得モデル。
・高頻度の形と意味の結合に注目すべき
・COCA,Michigan Corpus of Upper-level Student Papers (MICUSP)による実例。

★Using very large corpora to teach Modern English (1500–1900)
Erik Smitterberg (Uppsala University)
・大学院の初期英語・中英語のクラスで,評点の45%をコーパスミニ研究に充当
・COHA使用
・学生が取り上げた英語史研究テーマは,doの助動詞使用(do a look:DO-periphrasis), not縮約,its/his選択,GET受け身,許可のcanなど。

★#LancsBox in language teaching
Vaclav Brezina (Lancaster University)
・LancsBox 5.1.2のデモ的紹介。教室利用の可能性。
・Treetagger (Schmitt 1995)による自動POS付け。
・統計処理結果のビジュアル表示。

★Data-driven learning from a text editor
Ana Frankenberg-Garcia (University of Surrey)
・DDLは普及しつつあるが,使っているのはDDLに関心のある研究者=教師のみ。
・DDLの使い方は,学習者がエラーを探して自己修正するだけに留まる。
・DDLをエディタに組み込んだ,コロケーション自動サジェスチョン型英作文プラットフォームColloCaidの紹介(Frankenberg-Garcia et al. 2019)
・学術文に多い600語を選び,それらと共起しやすいコロケーション3万例のデータを実装。
・エディタ上で,英文を書いていくと,単語には波線が表示され,それを押すとコロケーション候補が一覧表示される

★Introducing the book Academic writing with corpora: A resource book for data driven learning
Tatyana Karpenko-Seccombe (University of Huddersfield)
・オンラインコーパス(Lextutor Concordancer, BNC-English corpora, SkELL(Sketch Engine for Language Learning) and MICUSP)をアカデミックライティングに活用する方法を述べた新著の内容紹介
・IMRD(Introduction, Methods, Results, Discussion) の解説も

★Using corpora to inform instruction: Three practical approaches
Randi Reppen (Northern Arizona University)
・コーパスの教育活用の3つの方法。
(1)既存のコーパス言語学の知見を指導する。高頻度語リストから,高頻度lexical bundleへ(談話のサインポスト,テキストのオーガナイザとして機能)
(2)BYUの"word and phrase.info"などのオンラインリソース使用。レジスターの差を意識付けすることも可能。
(3) Antconcなどを使って学習者自身がコーパス検索

★Reserved for research? Normalising corpus use for teachers
Rachel Allan (Mid-Sweden University)
・DDLは長く広まらなかったが,教師教育にコーパスが組み込まれるようになり,状況変化の可能性も。
・勤務先の教職学生は卒論でコーパス使用するが,彼らはコーパスを研究ツールとみなしがち
・新たにオンラインツールで小規模コーパスを使う実践を行わせ,教案に反映させる

★Teaching about spoken English with the British National Corpus 2014: Introducing BNClab
Dana Gablasova (Lancaster University)
・新旧のBNC Spokenをオンライン検索できるBNClabの紹介
・英語発話の時代変化だけんでなく,年齢・性別・社会階層・地域などのパラメタ比較も・新旧BNCデータを用いた学習者向け教材も公開。データから「発見」させることを重視。


2020/10/20

2020.10.19 キャンパス秋景

一部対面再開と言うものの,相変わらず人気のないキャンパス。。。

研究室の建物前には金木犀が咲いていた。

@神戸大国際文化学研究科 国際コミュニケーションセンター棟前


2020/10/06

2020.10.06 兵庫県立神戸甲北高校探究特別講演会

表記で,2年生の生徒さん向けの講演を行いました。

演題:「探究活動を加速しよう:リサーチをデザインする」



講演は,代表生徒さんの中間報告を聞いた後,私がロジック面についての質問をする,という形で進めました。甲北の生徒さんは,探究の基礎力がしっかりしており,代表生徒さんもいろいろと工夫した報告をしてくださいました。ただ,今後のさらなる展開を考えると,一般的な助言として,下記のようなことが言えそうです。

1)大きく抽象的なやりたいことを,「現実的な小さいレベル」に落とし込む
2)原因と結果のモデルを意識する(Aという原因によってBがどう変化するか/ Bを向上させるために最善のAはなにか)
3)AとBとも,その内容を明確に定義する(ぼんやりした抽象概念に依拠しない)
4)AとBとも,計量を意識する(数えられないものは価値が測定できず,比較もできない)

甲北の皆さんの研究のさらなる発展を願います。

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 神戸甲北高校の立地する神鉄北鈴蘭台駅に行くには,(A)兵庫区の新開地から神鉄に乗り換えか,(B)三宮から神戸市営地下鉄で谷上まで行き(※この間「北神急行」区間),神鉄に乗り換え,という2つのルートがあります。

 これまでは(B)の北神急行区間の料金が非常に高かったのですが,神戸市は,北区への人口誘導の意図もあって,北神急行を市営化し,本年6月から,運賃を580円から280円に引き下げました(記事)。今回,はじめて(B)ルートを利用しましたが,三宮・谷上間は約10分で,北区へのアクセスがかなり向上したように感じました。

 ただ,近くなったという「気分」にはなったものの,実際には,(A)ルートと,値下げ後の(B)ルートは,費用・時間がほぼ同じになったというだけで(参考),積極的に北区に人口を動かす施策としては弱いのではないかとも感じました。

 一方,地下鉄三宮駅には,値下げを記念してか,北区をPRするシールが随所に貼ってありました。





北鈴蘭台は,山が間近に迫る地域で,歩いていても六甲ハイキングの気分が味わえます。


 神戸市は指定市の中では人口減少が大きく,北区含め,市内全域をどう盛り上げていくか,課題が山積です。このことは,神戸に立地し,神戸の都市イメージからプラスの恩恵を受けてきた神戸大にとっても直接的な問題となります。

※当日の模様(同校HPより転載:出典






2020/10/03

2020.10.3-4 英語コーパス学会(JAECS)2020年度大会

2日間にわたってオンラインで開催されました。当日は40本の発表,300名を超える参加(登録者延べ数)があり,盛会でした。


石川は,開会式と総会で,会長挨拶を行いました。

開会式でのあいさつビデオより




2020/10/02

2020.10.2 京都光華女子中高 授業改革打ち合わせ

夏以来,京都の光華女子中高に継続的に関わり,同校の授業改革のお手伝いをしています。今回は,担当者3名が来訪され,意見交換を行いました。

私の方では,Deep Active Learning授業を設計する際に使用できる教案のテンプレート案をお示しし,こうした補助具の活用可能性について討議しました。

石川(2020) DAL型授業設計用セルフチェックシートV1.0の一部


2020/10/01

2020.10.5 研究メモ:日本の教員数(最新)

研究メモ:日本の教員数と女性比率(出典: 文科省「文部科学広報」2020年9月号より(元データ))

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学校種・教員数(女性比率)

幼稚園等 21万人(93%)
小学校     42万人(62%)
中学校等 25万人 (43%)
高校等 23万人(32%) 
特別支援 8万人(61%)
大学 18万人(25%)
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※学校基本調査より
※本務者のみ
※人数は1,000人以下で切り捨て
※義務教育学校は中学校に,中等教育学校は高校に加算
※女性比率は1%未満切り捨て。中学校・高等学校の比率を記載
※専門学校・各種学校等は含まない


観察いろいろ

・日本にいる「学校の先生」は,大学教員を含めて,ざっくり140万弱程度。ほぼ京都市の人口程度に等しい。
・私塾なども含めた「先生」はざっくり330万人。職種別人数で言うと第8位(出典
・医師(歯科医含)は43万人(うち医師の女性比率は22%)(出典