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2017/07/28

2017.7.28 神戸大学国際文化学研究科第3回コース集団指導

表記が開催され,ゼミ生4名が発表しました。

神戸大学国際文化学研究科外国語教育論講座外国語教育コンテンツ論コース
2017年度第3回集団指導
日時:2017年7月28日(金) 08:50~13:00
場所:鶴甲第1キャンパスD615教室

〇博士後期課程学位論文指導演習(15分+5分=20分)
0930-0950 張晶鑫 D1「中国人日本語学習者のオノマトペの使用特性―日本語母語話者及び韓国語・英語母語話者との比較から―」
母語話者及び他の外国人日本語学習者と比較しながら,中国人日本語学習者のオノマトペ使用特性を探る



博士前期課程研究指導演習(10分+5分=15分)
1005-1020 中西淳 M2「日本人英語学習者のライティングにおける前置詞in, on, atの使用傾向」
日本人英語学習者がどのように前置詞を使用しているか検証するため,前置詞in, on, atをサンプルとして,それらがどの程度多様な意味合いで使用されているかを実証的に調査した。



1210-1225 鄧琪 M1「中国人日本語学習者の外来語使用に対する一考察 ―「多言語母語の日本語学習者横断コーパス」を用いた調査をふまえて―」
本研究は中国人日本語学習者のための外来語指導の必要性を検証するため,「多言語母語の日本語学習者横断コーパス」(I-JAS)を用い,中国人学習者の外来語の使用特性について考察する。具体的には,(1)頻度・(2)分散度・(3)難易度・(4)一致度という4つの観点から,中国人学習者と母語話者,また,中国人学習者の各習熟度の間にどのような差異があるかを考察する。



1225-1240 隋詩霖 M1「日本語学習者による「私が望む日本語教材」作文の収集と分析」
日本語教材の在り方を考える上で,学習者自身のニーズや意向をふまえることは重要である。本研究では,中国人上級日本語学習者15名に,アンケート調査を加え,「私が望む日本語教材」をテーマにして,800字程度の作文を書いてもらい,集まったデータを語彙分析することで,学習者の教材へのニーズや要望を明らかにした。



2017/07/23

2017.7.23 迫田科研会議

下記の会に参加しました。

迫田科研学習者コーパス研究会【7月研究会】

◆日時:7月23日(日) 10:30~12:30 
◆場所:筑波大学東京キャンパス文京校舎431号室

◆プログラム:
10:00  開場
10:30~11:30 杉本美穂 三谷絵里 林亜由美「ストーリーテリングにおける転結部の分析」
11:40~12:40 迫田久美子「I-JASのロールプレイに見られる日本語学習者の言語転移」
12:45~13:00 新着情報コーナー 

どちらも大変勉強になるご講演でした。杉本・三谷・林先生のご発表は,起承転結の転結に光を当てたもので,学習者コーパスにおけるストーリーテリング課題を論理構造の点から見るものでした。新しい研究視点と言えるでしょう。また,迫田先生のご発表は,先生のおっしゃる「危険な正用」に豊富な実例を通して迫るもので,今後の学習者コーパス研究の基本的な進め方を示すものであると感じました。従来,<misuseからover/underuseへ>といったキャッチフレーズで私たちがやってきたことは迫田先生の提唱する「危険な正用」というコンセプトの中にうまく糾合できるかもしれません。

2017/07/21

2017.7.21 神戸大学附属小学校グローバル教育会議

本学附属小学校では,いわゆる英語にかえて,「せかい」科,「グローバル」科というユニークな教育を展開しています。

今般,この取り組みを整理・発展させるために,プロジェクトチームが結成され,初回会議がアドバイザーである小生の研究室で行われました。

今後,科目の特性の整理,小学校英語教育拡張への対応など,この会議を通じて,新しい提言を行っていければと考えています。

石川個人の理念としては,以下のような《自己から他者へ》という視点の拡張の中に,2つの科目がシームレスに位置づくというイメージを持っています。そう考えれば,附属幼稚園から附属小学校,さらには中等教育学校を経て大学につながる学びに対して,ある種の背骨,つまりは,連続する基本軸を与えることができるのではと思います。



2017/07/16

2017.7.16 東京外国語大学シンポジウムで講演

東京外国語大学 国際ワークショップ
「外国語教育の変革:国際連携・高大連携・ICT」2017
Reform in Foreign Language Teaching:
International Cooperation/ High School-University Cooperation/ ICT

2017年7月16日(日)9:30-17:30
東京外国語大学 本部管理棟 大会議室
主催:東京外国語大学
科研基盤B「国際連携・高大連携による英語・中国語・日本語学習者コーパスの研究」(17H02357)
科研基盤C「日本を超えた日本語教育-海外の大学との遠隔授業を通して共通日本語の可能性を探る」」(16K02801)
共催:東京外国語大学 国際日本研究センター 国際日本語教育部門

上記のワークショップで講演を行いました。
大変盛りだくさんな会で,充実した一日でした。


■9:30-11:50
1.「SGH上田高等学校における日本・台湾連携グローバル人材教育の取り組み」 内堀繁利 (長野県上田高等学校校長)
2.(招聘講演)Improve English Education in Taiwan by Using ICT and Corpora Resources  Howard Hao-Jan Chen(陳浩然)(National Taiwan Normal University)
3. 「どうなる英語ライティング・スピーキング指導:日本の大学入試改革のインパクト」 Negishi Masashi 根岸雅史(東京外国語大学)
4. 「高校ライティング・スピーキング集団指導・受験指導の困難点とICT活用による教育改善」 草間千枝(長野県上田高等学校教諭)
「台湾の高等学校との交流・グローバル人材教育実践報告書」福井克実(長野県上田高等学校教諭)

■12:50- 17:30
5. Japanese Learners' L2 English Outputs: Findings from the International Corpus Network of Asian Learners of English (ICNALE)   Shin'ichiro Ishikawa(石川慎一郎)(神戸大学)
6. 「日本人外国語学習者の誤用特徴:三方向“日本・中国・台湾”英語/日本語/中国語学習者コーパスから分かること」  望月圭子・申亜敏・小柳昇・邬海厅・張正・ローレンス・ニューベリーペイトン(東京外国語大学)
7. 「国際連携・高大連携ICTを用いた英語ライティング・スピーキング指導実践報告」
游韋倫・川野友里恵(リンガハウス教育研究所)、ローレンス・ニューベリーペイトン/武重真優子(東京外国語大学学生)
「スカイプ英会話学習が高校生の意識と英語コミュニケーション力にあたえる影響」  星秀雄(株式会社レアジョブ)
8. 「 ICTを用いたグローバル人材教育」  赤堀 侃司(東京工業大学名誉教授・日本教育情報化振興会会長)
9. (招聘講演)「北京大学における中国語・日本語翻訳・通訳大学院紹介と学習者コーパス研究」  趙華敏(北京大学)
10. (招聘講演)「上級日本語学習者においてもみられる日本語誤用とは:日本語CEFR-Cレベルの解明にむけて」  于康(関西学院大学)
11. (招聘講演)「国際連携で外国語授業のどこが変わるのか?-中国・台湾・日本を結ぶ遠隔中国語教育を例にー」   砂岡和子(早稲田大学名誉教授)
12.「日本を超えた日本語教育-海外の大学との遠隔授業を通して共通日本語の可能性を探る」   小林幸江(東京外国語大学名誉教授)
■17:50-19:50 懇親会(東京外国語大学大学会館)事前申し込み制



2017/07/15

2017.7.15 大学英語教育学会東アジア英語教育研究会特別シンポジウム

大学英語教育学会(JACET)第 177 回東アジア英語教育研究会
日時:2017 年 7 月 15 日(土) 15:30~17:35
場所:西南学院大学(福岡)
特別シンポジウム:「学習者コーパスを用いた L2 産出の問題点の諸相:英語・ 日本語教育の視点から」

表記にゼミ生と参加し,発表をさせていただきました。

1530~ 趣旨説明(石川慎一郎)

1535~1600 第 1 発表 朱琳(神戸大学 国際文化学研究科研究生)
「日本語学習者の活用誤りをどう分類するか? ―主要な日本語学習者コーパスの比較調
査から―」
【概要】 本研究は,既存の日本語学習者コーパスにおいて活用誤りとされている学習者の
L2 日本語使用実例を収集し,その分類の枠組みを検証することを目指す。具体的には,「なたね」,「寺村データベース」,「日本語学習者作文コーパス」,「国際日本語学習者作文コーパス及び誤用辞典」の 4 つのコーパスから誤用例を取り上げ,(1)それぞれのコーパスにおいて活用誤りがどのように内部分類されているか,(2)各タイプの誤用の発生頻度はどの程度であるか,(3)頻度を考慮することで活用誤りの分類の枠組みをどのように整理できるか,の 3 点を検討する。



1600~1625 第 2 発表 鄧琪(神戸大学 国際文化学研究科学生)
「中国人日本語学習者による外来語使用パタンの変化:『日本語学習者の縦断的発話コーパス』に基づく分析と考察」
【概要】 外来語は日本語の語彙の重要な一部を占めるが,日本語学習者にとっては習得が
きわめて困難なものの1つである。本研究では,中国人日本語学習者の外来語使用パタンの時系列的な変化を捉えるために,「日本語学習者の縦断的発話コーパス」(C-JAS)を用いた縦断的分析を行う。具体的には,時間の経過につれて,使用される外来語の(1)全体頻度,(2)多様性,(3)レベル,(4)誤用にどのような変化が見られるかを調査する。あわせて,日本語母語話者の外来語使用状況を調査し,中国人日本語学習者の外来語使用が母語話者にどの程度近接していくかを考察する。


1630~1710 第 3 発表 石川慎一郎(神戸大学 大学教育推進機構/国際文化学研究科)
「1 分間発話量に見るアジア圏英語学習者の発話流暢性:ベンチマーキングの観点から」
【概要】 L2 指導,とくに,スピーキング指導において,学習者の流暢性を伸ばすことは
きわめて重要であるが,アジア圏の英語学習者の発話流暢性に関して,現状がどのようなもので/いつまでに/どのレベルまで/どのようにしてそれを伸ばすべきかを示す具体的な指針は存在していなかった。本発表では,アジア圏英語学習者の統制的モノローグを大規模に収集した ICNALE-Spoken(Monologue)モジュールの解析結果をふまえ,この点を計量的に明らかにし,今後のスピーキング指導の手がかりを示すこととしたい。

1710~ 総括ディスカッション




毎年,この会は石川ゼミの新入生の発表デビューの場になっています。また,石川自身にとっても,現在進めている研究をご紹介できる大切な場です。貴重な発表の機会を頂戴していること,同会代表の木下正義先生に深く御礼申し上げます。


2017/07/14

2017.7.14 神戸大学附属中等教育学校優秀発表者指導

神戸大学附属中等教育学校優秀発表者特別指導
2017.7.14  午後4時~6時30分@附属中等会議室

翌週の優秀者発表会に登壇する6年生(高3年生)を対象に,最終発表のための特別指導を行いました。

指導では,「外とのコミュニケーション」をキーワードとして,自分の分野以外の人にどう伝えるか,そのために何をすべきかをお話ししました。

その際,生徒さんが提出してきたプレゼンすべてについて,revised editionを示し,「研究を伝える」手法をご紹介しました。

たとえば,冷気流(背山から吹き下ろす風)の風向を調査した研究について言うと,いきなり研究の細かい中身を話すのではなく,まず,以下のようなイントロを置いてみてはどうでしょうか? こうしたイントロがあると,冷気流の意義や,その風向や実態を解明する意義が一般の聴衆にもわかりやすくなります。

※上記,図版などはオンラインの素材を使用させていただきました。オリジナルのパワポのほうには個々の図版の出典URLを記載していますがここでは再掲していません。万一権利侵害にかかる事案があればご連絡いただければ迅速に対応します。

要は,イントロなしでいきなり本体の話をぶつけても,聞いている人には意味が伝わらないわけで,「この研究がなぜ大事か」をどう伝えるか,自分の研究と聴衆の間にいかに橋をかけるか,この点を意識すると,良い研究になるのではと思います。

当日は,同じく高校で探究活動を推進しておられる兵庫県立長田高等学校の先生にも,小生の指導を参観していただきました。高校での探究研究のすそ野の広がりに少しでも寄与できれば嬉しい限りです。


2017/07/11

2017.7.11 兵庫県立長田高等学校文理探究類型卒業研究発表会

日時 2017年7月11日 1~5時
会場 新長田ピフレホール

表記で審査委員長を務めました。

ここ数年審査にかかわっているイベントですが,今年は,発表が完全に英語化されており,どの発表も堂々とした立派な英語で素晴らしかったです。

研究面でも,立派なものが数多くありました。先生方の指導に敬意を表します。

一方,同時に感じたのは,今更ですが,良いテーマを見つける重要性です。良いテーマであれば良い結果につながりますし,テーマがいまいちだと,それなりの時間をかけても,なかなか思ったような仕上がりにならない結果となります。

これまで,SGH(Super Global High School)などの指導を通して,いろいろな高校を拝見してきましたが,高校の研究・探求活動では,生徒さん自身の興味や,生徒さん自身の選択というものが非常に重視され(すぎ)ているという共通した印象があります。

しかし,高校生,とくに1年生に,「何を研究したいの?」と聞いても,実のところ,はっきりした展望がなかったり,あえて答えたとしても,そこまで思い入れを持っていない場合も少なくありません。多くの高校生にとって本格的な研究は初めてなのですから,これは当然のことです。

こうした場合,教師には,あくまでも生徒の自主性を尊重して助け舟を出さないという方向と,生徒のテーマ決定に積極的に関与し,推奨テーマをいくつか示してその中から選ばせたり,場合によってはテーマを先生が決めて割り振ったりするという方向があります。

多くの高校では,前者が基本軸とされているようですが,私見では後者の方向をもっと検討すればよいのではないかと考えています。というのも,自分で選んだからよいテーマで,人からもらったからよくないテーマだということにはならないからです。

教師がテーマを選んだからといって,生徒の個性が抑圧されるわけではありません。先生に割り振られたテーマであってもそれを進めていく過程で生徒ひとりひとりの個性は存分に発揮されますし,枠の中で,興味を生かした創意工夫の余地も大いにあります。10人に同じテーマを与えれば,1年後には,10種の全く違う研究が完成するでしょう。

実際,大学院の修士・博士課程の指導では,研究テーマの決定を完全に学生まかせにすることはありません。工学系ではほぼ全面的に教員がテーマを用意してその中から選ばせますし,私のゼミでもそうしています。高校生の場合,テーマのサイズ感(1年ぐらいの研究で成果が出るテーマなのか10年かかるテーマなのか)がなかなかわからないわけで,今後の研究探究指導では,テーマ設定の部分で,高校の先生方がより積極的に介入していくことが重要になるのではないかと思っています。

なお,こうした点で,高校の研究活動に大学教員が協力できる余地は大きいのですが,一方,大学教員を招くには一定の経費がかかります。最近では,窮余の策として,大学院生を指導者に招くケースも増えていますが,日頃大学院生を指導している立場からすると,彼らが研究の「助言役」をこなすのはちょっと厳しいのではないかと思います。

今後,各地の高校が研究・探究活動を中核事業として位置付けていこうとするのであれば,SGHなどの時限つきの外部資金で大学教員を年に1回,2回呼ぶだけでなく,たとえば,自校の卒業生で大学・企業の研究者になっている人(あるいは退職した人)に声をかけ,無償のリサーチアドバイザー制度のようなものを作るのがいいのではないかと思います。

まったくの私見ですが,母校愛は,卒業後の時間と,母校(故郷)からの空間的距離を基準としてべき乗則で増加するものなので,このような制度だと,新幹線代往復を自己負担しても,かわいい後輩のために一肌脱いでやろうという人は少なくないのではと思います。いや,甘いかなあ。





2017/07/08

2017.7.8 大学英語教育学会関西支部役員会・講演会

表記に参加しました。

講演会は,支部の文学研究会の企画で,寺西雅之先生(兵庫県立大学)をお招きし,文体論の観点から文学テキストの読みの多様性を探ったご著書のご紹介をしていただきました。興味深く拝聴しました。

・・・・

 最近になって,「大学英語教育に文学を」という声があちらこちらで聞かれるようになってきました。

 ただ,現在では,「文学テキストを教材にしてはいけない」といった明示的なルールを設けている大学は少なくなっています。つまり,教員が使おうと思えば使える状況はすでにあるわけで,ここで考えるべきは,にも拘らず,いっこうに文学が使われないのはなぜか,という点でしょう。

 文学愛好家(研究者)であれば,考えるべきは,戦略の立て方です。

(A)文体論・レトリック習得の効果を掲げて戦う
文学作品は修辞の工夫がいっぱいで名文の宝庫だ。これを読むことで,英文読解力や,英作文力がアップする・・・といった主張。

(B)21世紀型スキルやキーコンピテンシーを絡めて戦う
現在の仕事の多くが機械にとってかわられようとしている中で,TOEICスコアのような「英語力」の意味は制約的だ。これに対し,文学は,21世紀型スキルの鍵を握る批判的思考力・想像力・発想力を鍛える。だから今こそ文学だ・・・といった主張。

(C)先祖返りして教養を前面に掲げて戦う
たしかに文学は目先の英語力向上にほとんど役に立たない,TOEICもあがらない,だが,人間として絶対に必要なものなのだ,グローバル人材はグローバルな教養あってこそだ,ビジネスマンこそシェイクスピア1冊ぐらいは原典で読んでおけ・・・といった主張。

私見ですが,まず,(A)は難しいのではないでしょうか?広告文であれ,演説であれ,一見無味乾燥な法律の条文であれ,そこには何らかの文体的・修辞的工夫があります(だからこそ[言語学寄りの]文体論の研究者は意図的にこうした幅広いテキストを分析の素材に選びます)。実際,文学だけにしかない修辞や表現といったものは見出しがたく,この方向での戦闘は不利だと思われます。さらに,うかつに読解「力」などと言おうものなら,読解力の定義はなんだ,統制群はあるのか,t検定はかけたのか,ANOVAはしたのか,といった攻撃がドバっと飛んでくることは必定で,このロジックでの局面打破は難しそうです。

また,(B)も難しいでしょう。前段はその通りだとしても,後半の説得力が弱いです。力がない教師が教えれば,英文学の至高の名作であっても,全員が寝てしまう授業というのはありえます。逆に,力のある教師なら,シェイクスピアであれ,ディケンズであれ,昨日のNew York Timesであれ,今朝メイルボックに届いていた投資を勧誘する怪しげな英文ジャンクメイルであれ,すべて,思考力・想像力・発想力を磨く「21世紀スキル」型教材にしてしまいます。やはり,文学にしかない要素というのを探すのは困難です。

(A)にせよ,(B)にせよ,どうも,わざわざ不利な敵陣に出て行って,敵側のロジックで戦いを挑んでいるという感じがします。とくに,プロパーの文学研究者が急にPISAとかキーコンピテンシーとか新学力観とかを持ち出すと,非常に危うい姿に映ります。

となると,残された方向は(C)ということになります。文学愛好家は(C)なれば実感と自信をもって声高に語れるはずです。かつて(たとえば,私自身が大学で一般教養の英語を受けていた30年前)のように,大学英語教材のデフォルトが英文学であった時代ならいざしらず,今,(C)を叫べば,時代が一周ぐるっと回っているので,かえって新奇に映り,一定の支持が得られるのではないでしょうか? ふりこが永遠に同じ方向にふれることはありえず,いつか逆方向にふれはじめます。

ちなみに,我が家の新聞は日経ですが,その行間からは,いわゆる「教養」への過剰な憧憬と崇拝がいつも過剰なほど匂い(臭い?)立っています。おそらくは文学愛好家が仮想敵だと信じ込んでいるビジネス界こそが,教育現場での文学復興の最大の支持者になってくれるという可能性は意外に高いのではないかと夢想しています。









2017/07/04

2017.7.4 神戸大附属中等教育学校6年生卒業研究(課題研究)学内発表会

午前10時から午後3時過ぎまで,表記において,聴講と助言を行いました。

この発表会は,150名以上の6年生(高校3年生)全員が,それぞれ,自身の6年間の研究成果をパワーポイントで発表するというもので,10室以上でパラレルに発表が続きます。

私は,任意の1室を選び,その部屋の発表を通して聞くことにしました。
下記は聴講した研究発表の一覧です(タイトルは編集しています)。

・「4スタンス」を利用した日本サッカーの強化
・日中関係改善への提言
・カーネーションの茎の長さと枯れやすさ
・クローン人間は悪か
・神戸市の山麓冷気流
・神戸の過去現在未来
・日本の水に関する環境政策
・植物の光吸収率とクロロフィル濃度
・出生前遺伝子検査導入の課題
・足間接の捻挫を防ぐ方法
・持続可能な3セク鉄道の在り方

どれも面白い内容で,楽しんで聴講しました。ただ,細部については,論理的に脆弱な箇所も散見されました。こうした探究型の指導においては,指導者がどこまで介入すべきか,逆に言えば,生徒の自主性をどこまで尊重すべきかという点が常に議論になるわけですが,全国の同種の取り組みの先頭を走る我が附属においても,今後,この点について教員間でのディスカッションを深めていく必要があるのではと感じました。

教室での生徒さんの発表風景