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2021/03/04

2021.3.4 国立国語研究所 シンポジウム「日常会話コーパス」VI(オンライン)聴講

 国立国語研究所 シンポジウム「日常会話コーパス」VI

日時:2021年3月4日(木)13:00-17:20
開催方法:オンライン
主催:国語研共同研究プロジェクト「大規模日常会話コーパスに基づく話し言葉の多角的研究」


前半5つの報告を聴講しました。

13:00-13:15 小磯花絵(国語研究所)「プロジェクトの進捗報告」

13:20-13:50 柏野和佳子(国語研究所) 「『日本語日常会話コーパス』で見直す言葉の用法―『岩波国語辞典』第八版でこう改訂した―」

13:55-14:25 伝康晴(千葉大学) 「『日本語日常会話コーパス』だからできること:独り言とスマホいじりの分析」

14:30-15:00 河野礼実(山梨学院大学)「『日本語日常会話コーパス』における自称使用」

15:05-15:35 居關友里子(国語研究所)「『日本語日常会話コーパス』における談話行為タグの利用可能性」

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聴講メモ(文責:石川)

全体報告(小磯先生)

・6年間プロジェクト(2021年度まで)
・200時間の会話データ公開を目指す
・2016年時点では話し言葉コーパスはCSJ(660H)のみ。
・構築班(小磯),レジスター班(山崎),経年変化班(丸山),相互行為班(伝)の4班で活動
・新規発話言語資源の整理・収集・公開
1)BCCWJ書籍データの会話話者情報(性別・年齢)
2)名大会話コーパス(100H)の中納言公開
3)職場談話コーパス(30H)の中納言公開
4)1947-2012の国会会議録公開
5)昭和話し言葉コーパス(モニター独話17H→2020年独話17H,会話25H)
6)★日常会話コーパス(2018/12モニター50H→2021/2増補+50H)

日常会話コーパスの概要
・個人密着法で185H(首都圏,男女×5世代×4人=40人話者,2~3か月間)
・1人4~5H,合計185H
・15時間不足→増補データ:仕事の会議会合+未成年中高生レクチャー会合+中高生雑談・200H,460会話,延べ1498名,20-60代中心


「日本語日常会話コーパス」で見直す言葉の用法 『岩波国語辞典第8版』でこう改訂した(柏野先生)

・岩国8(2019/11刊行)
・「意味とは,指されるもののことではなく指し方」
・コーパスをはじめ・・・実例重視の姿勢
<自称詞分析と辞書への反応>
・30代男性=俺(ただし,義母には僕,仕事では私を使用)
・中2男子:俺(対友達・先輩・親)>僕(先生)
・中2女子:名前(対友達・親)/わたし(部活先輩・先生)
・日常会話コーパス:俺が3/4,私については発音上「あたし」になっていることが3/4
・辞書への反映
俺・・・旧:乱暴な言い方→新:近年は幅広い年齢で仲間内や目下に対し「ぼく」より「おれ」を使う人が多い
<感動詞など>
・感動詞>応答表現>応答詞/相槌
・笑い声を追加(あはは,いひひ,うふふ,えへへ,おほほ)※コーパスでは笑い声はL表記,音声形態は示されていない(今後公開予定)
・辞書への反映
相槌(だろう(ね),です(ね/よね),でしょ(う/うね),それ(な),たしか(に),(その)とおり)
<応答表現>
・別に,(ズバッと拒絶)無理,(楽しい雰囲気の中での)無理~
・辞書への反映
・別に:(1)特に差し支えないの意味で~いい,と使う/(2)いいえ。
・無理:(2)感動詞的に:不可能であることや同意できないことを表す
・大丈夫:「安心して」(近年,応答に用いることが増えている)おかわり大丈夫ですか?
<その他(未反映)>
・出た!(それそれ,その定番の・・・) 妥当~!
・(質疑)僕,私etc について「男が多い,女が多い」といった情報を辞書に記述することは,ジェンダーステレオタイプの固定化につながるのでは?(遠藤織枝先生)
・(質疑)キャラ語と実使用語の区別表記は?(石川)


「日本語日常会話コーパス」だからできること・独り言とスマホいじりの分析(伝康晴)・ゼミ生卒論調査より
<独り言研究>
・独り言=非展開型,追随型,短応答型,展開型
・テレビを見ながら,「すげえ名前」→家族がそれを受けて談話が展開するなど
<スマホ研究>
・会話中のスマホ使用(マルチアクティビティとして位置づけられる)
・A:他者が見ていない間にスマホに注視する
・B:先にスマホに手だけ伸ばし,時間をおいてからスマホに注視(※会話への関与を維持しつつ,私的な行為に移行していく)
・(質疑)アイトラックキングなどのデータがないなかで目視観察だけで視線研究としてやっていくことは可能だろうか?


「日本語日常会話コーパスにおける自称使用」(河野礼美)
・CEJC2018 124会話,449名分を使用(約60万語)
・自称2640例→それ自身についての使用&引用節内使用をカット→2439例(単2263/複176)
・一人の話者が複数の自称を使い分ける(対妻:おれ,対義母:ぼく/あたし,対妻友人夫婦:ぼく,英会話教室友人:ぼく・わたし)
・代名詞(2212)>親族呼称(138)>名前(89)
・親族呼称(ママはね・・・)と名前の使用=親族家族間のみで見られる
・名前使用は子ども~40代前半まで。
・あたし(784)>おれ(666)>わたし(328)>ぼく(172)自分(48)>うち(27)>わたくし(3)>あたくし・あっし・おりゃ・わし・・・
・あたし 出現数・使用者数ともに1位,女性が大半,男性は4例
・わたし 男女ともに使用されるが女性の方が多い
・女性のあたし:雑談(71%)>用談(22%)>会議(7%)
・女性のわたし:雑談(73%)>用談(21%)>会議(6%) ほぼ同じ
・女性の場合,あたし・わたしに常体敬体差はない。男性のわたし=常体でも使う
・わたくし,あたくし:親しい相手と話しているときにスタイルチェンジとして。キャラ発動。距離を取るわけではない。会話のアクセント。
・俺は圧倒的に常体で。ぼくは敬体での使用も多い。
・会議会合でも俺を使用。院生が教授に俺を使うことも。水曜だったら俺今度行きます~