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2021/10/28

2021.10.28 神戸大学史特別展「大正時代の神戸大学-100年前の学生たちの青春譜-」観覧

本日初日の表記展覧会を観覧しました。



母校として6年間,勤務先として20年近くかかわっている学校なので,わりといろいろ知っているつもりでしたが,今回も新発見がありました。

それは英語辞書史で重要な意味を持つ竹原常太先生(1879-1947)の「スタンダード和英辞典」と神戸大の関係についての展示でした。

展示物より

竹原先生は神戸大(神戸商業大学)の教授でしたが,先生の出された「スタンダード和英大辞典」は当時としては画期的な生の用例を集めて作られた辞書です。また,後に出た「スタンダード英和辞典」には,ソーンダイクに基づく頻度も掲載されています。

展示では,スタンダード和英の出版計画が出版社の経済的事情で行き詰まり,神戸大の創設者?とされる当時の学長が出資を呼び掛けて,なんとか私費出版で刊行にこぎつけたことが資料とともに紹介されていました。

出資承諾書(展示品より)

改めて竹原先生の業績を振り返るとき,生の用例の収集(これって要はコーパスですね),辞書の作成,語彙頻度研究,さらには科学的な英語教育研究・・・と書き出してみれば,今の自分の仕事と非常に重なることに驚きます(日本の英語研究史に名を遺す偉大な先輩教員と比較するのは厚顔無恥ではありますが)。

神戸大が英語辞書研究・語彙研究の拠点であったというイメージは私にすらほとんどなかったのですが,竹原先生を教授として擁し,また,南出康世先生を輩出したことを思えば,神戸大は,フィロロジー的な言語研究の伝統をもっと大事にすべきではないかと感じます。






 

2021/10/23

2021.10.23 学習者コーパス研究会を聴講

学習者コーパス(I-JAS)研究会(2021/10/23)

■ 日時:10月23日(土)10:00~12:00(日本時間)

■ 発表内容

1)佐々木藍子(東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科(配置校:横浜国立大学))
「日本語を第二言語とする学習者の接続助詞「から」の接続形式の発達過程―発達過程で見られる非規範的な使用の要因―」

2)大神智春(九州大学留学生センター)
「日本語学習者による多義語コロケーションの習得」


どちらも勉強になる発表でした。また,終了後の茶話会も盛り上がりました。石川からの問題提起。(最近私が考えていることです)

・たとえばN4やN3の学習者の中間言語というものは措定できるか?

・中間言語は習得の極致の姿か否か?

・欧州の学習者コーパス研究が(建前としては)初級データを見ないことをどう考えるか?

・Chomskyモデルをどこまで前提として習得を考えるのか?

2021/10/22

2021.10.22 DXセミナーで講演

各社の管理職さんを集めた「ミドルマネジメント向けDXセミナー」で講演を行いました。


「ミドルマネジメント向けDXセミナー」
【開 催 日】2021年10月8日、15日、22日、29日(全4回)(各回金曜 18:00~19:30)
【会     場】オンライン(zoom)
【受講対象】企業や自治体でDXを活用して事業の効率化やイノベーションを企画する立場の職員・社員(部長・課長・係長クラス)


第3回    10月22日(金) 18:00-19:30 コミュニケーション分野 「言語情報の有効活用!」

 ・コーパス言語データからの情報抽出 [神戸大学 大学教育推進機構 石川 慎一郎 教授 ] ・言語データの分類と関連データの発見 [神戸大学大学院工学研究科 白石 善明 准教授]

【主催】 一般社団法人 デジタルトランスフォーメーション研究機構(RIDX)
【共催】 神戸大学 数理・データサイエンスセンター
【後援】    公益財団法人 新産業創造研究機構・神戸商工会議所


講演会ポスターより
 
当日の発表スライドより


当日は,言語処理の基本についてまとめた後,User Localというテキストマイニングプラットフォームを紹介し,amazonのレビュー(2社の炭酸水)を使ってデータを収集する手法と応用可能性についてお話しました。仕事柄,いろいろなところに出かけて話しますが,言語学は文系と思われているためか,企業の方に話す機会はこれまでなかったので,いろいろ勉強になりました。


2021/10/20

2021.10.20 京都光華中学校高等学校探究講演

先生方向けに探究指導の講演を行いました。

演題:教師のための探究指導入門ー生徒の資質を伸ばす指導ー



最初は先生方にとっても戸惑いが大きいと思いますが,探究はうまく学校に入れば,(部活指導に代わる/と並ぶ)教師の新たなやりがいともなります。先生方には楽しんでやっていただきたいですね。

2021/10/16

2021.10.16 計量国語学会理事会参加

理事会では,石川がとりまとめをしていた論文賞規程の審議がありました。新しい賞が学会の活性化につながればと思います。

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私は,大学英語教育学会(JACET),英語コーパス学会,計量国語学会の3つの学会で,学会賞(的なもの)の規程づくりの仕事を担当させていただきました。学会賞の定義や運用には,どの学会でも同じような問題があります。メモとして。


学会賞規程を作る際の論点リスト(石川私見)

・人に出すのか,業績に出すのか?

・単一業績に出すのか,複数業績でもいいのか?

・年限(過去2年以内に刊行された・・・等)は設けるか,設けないか,設けるならどこまでか?

・単著に限るのか,共著も認めるのか? 

・共著(共同研究)を認める場合,

 (a) 筆頭だけか2番目以降も可か? 
   (b) 非会員が入っていても可か?
 (c) 指導教員などとの共著も可か?
 (d) 本人の貢献度をどうやって確認するのか?

・著書と論文に限るのか,それ以外(言語資料,ツール,実践・・・)も含むのか?

・同一人物に重複授賞できるのか,できないのか?


2021/10/11

2021.10.11-12 LCR Grad Conferenceに参加・司会

ベルギーに本拠を置く国際学習者コーパス学会(Learner Corpus Association)が提携して初開催された表記大会 (The Graduate Student Conference in Learner Corpus Research 2021)に出席し,1セッションの司会を担当しました。欧州の若い院生さんの発表に刺激を受けました。

石川担当のセッション

また,初日のSylviane Granger氏の講演も,LCRの歴史を振り返り,今後を展望するうえで有意義でした。


Granger先生講演視聴メモ(石川)
※ハンドアウトなしの講演だったので走り書きです。聞き違いあるかもしれません。

●LCRの起こり
・Granger氏,1990s後半にCLから着想
・当時のCLには,diatypic(genre)/ temporal/ geographical varietiesは考慮されていたが,学習者は入っていなかった。この状況は"unfair"(NNSのほうが多い)
・AILAでLeechに会い,LeechからICAME(1990)に誘われる
・その後,GreenbaumのICEプロジェクトとかかわる。ICLEはICEのサブデータとして始まった。
・ICLE(Granger 1993)に加え,HKUST (Milton & Tsang 1993),Longman Corpusなどが構築される。

●初期LCRの特徴
・目的は2つ(SLAの理論研究+教育実践)
・L1影響研究(大半はmono-L1 corpusだった),対照研究,誤用研究に焦点
・学生作文の特性を示す量的モデルの不足 (Milton & Tsang)
・CIA (Granger 1993),Computer-aided Error Analysis (CEA)(Granger)

●LCRの現在
・学問分野としてのLCRの確立。雑誌+ハンドブック(CUP)+学会組織+大会(2001~)
・英語以外の学習者コーパスも(言語を超えた一般化可能性を議論可)
・方法論の精緻化:CIA/CEAは,SLAからの批判を受けてさらに発展。批判は耳に痛いがそれが内省の契機となる。
・主な批判の論点,comparative fallacy(Bley-Vroman 1983)比較すると中間言語をそれ自身として見られない/古いCAの回顧版(reminiscent)
・CIA→Granger (2015) CIA2 :ENS/NNSとも,多様性を配慮(学習者はProficiency Levelやexposure量など)
・CEA→多層システムInterlanguage Annotation(教育学と言語理論の両面を意識したエラータグ Lozano & DiazNegrill 2013)Full error tagging vs Problem-oriented error ragging  習熟度ごとの学習者が出会うエラーを示す
・統計の精緻化:初期はカイ二乗(χ2)。LCRのcrudeな統計の使い方に批判。Durrant & Schmitt (2009)NS/NNSをかたまりで比較して個人差を無視。効果量を示さないなど。その後,"statistical turn" in CL in general and LCR in particular
・関心対象の広がり:Granger 1998で扱った文法(補語,POS)・語彙(高頻度動詞)・談話とレトリックなどは今も研究される。加えて,phraseologyがflagship locus of research(理論と実践のbridge。SLAのusage-basedの考えかたとも関連。インプット頻度とsaliency)。複雑性・洗練性の新しい指標。
・結果の解釈:strong on description but weak on interpretationという批判。しかし記述は重要。thorough in-depth description of key linguistic phenomena はLCRの強み。影響原因は多種多様のはずなのにL1に集中しすぎてきた。
・教育応用:LCR準拠教材はなお少ない。many pedagogical implications but few up-and running pedagogical applications。単一母語学習者コーパスに基づく特定母語話者用教材だとマーケットが小さい。出版社はgeneric one-size-fits-all なものがほしい。Granger & Paquot 2015(各種母語話者用の汎用無料教材)テスティングへの活用も期待大きい(学習者コーパスから錯乱肢を抽出するなど)

●LCRの未来
・当初の2つの目的に戻る(SLA理論+実践) CAFの新しい習熟度指標作りなど。
・cross-sectional pseudo longitudinal分析
・適性・動機付け・教材などの影響も考えるべきだが(Moller 2017), L1影響のさらなる追求も。
・Integrated contrastive analysis model (Grange 1996): 2言語コーパス+学習者コーパス。 Jarvis (2000)4種の証拠。多種のL1背景を持つ学習者コーパス分析を通して,より厳格にL1影響を調査。
・統計と言語学の良いバランスを。Larsson Egbert Biber (forthcoming) 2009-19のCL論文を調査。統計研究が増えてテキスト分析が減る。用例こそが命。
・LCR/SLAの統合には努力してきたが,LCR/FLTの融合にはさらなる努力を。
・エラー研究を再興する: ELFではerrorもfeature/ innovationとみなされ,errorはstigmatizedされるが,"Errors matter" L1別のおかしやすいエラー一覧表は有意義。Swan & Smith 1987の仕事をLCRで拡充するなど。
・ELFとの関係: ELFもproficiencyを重視。どの点でerrorがfeatureになるのか? normなしでどうやって議論するか?中国のELFとヨーロッパのELFは違う。intelligible かどうかを決めるのはほぼ不可能。前置詞はattended at X だと問題ないが,look at / forは大事。どこで線を引くのか? error annotationでは教師が大事だと思うところに注目すべき。知ることは重要。


2021/10/04

2021.10.4 神戸大数理DSセンター主催 中高生データサイエンスコンテスト審査会

 私の所属している神戸大数理データサイエンスセンターでは,中等教育との連携も積極的にやっており,表記のコンテストを実施しました。

コンテスト募集要項

当日は一次審査を通過した作品に対する審査委員会に出席しました。日頃からかかわっている大学生用の統計教育と,高校生用の探究教育の接点ともいえる今回のイベント,審査も大いに楽しみました。こうしたスキルは今後の学生にとって必須のものとなっていくでしょう。


2021/10/01

2021.10.1 後期スタート

後期がスタートしました。神戸大は対面・遠隔併存ですが,発声が必要となる学部の語学の授業,また,来日できない学生がいる大学院の授業とも,残念ながら,前期に続いて,遠隔オンデマンド形式での実施です。

また,本日付けで,3名の研究生が大学院のゼミに入りました。これでゼミ生は8名となります。当ゼミとしてはおそらくは過去最大数で,同時には見られないため,現在は,週3日,M2/ D3/ 研究生にわけて3回のゼミを実施中です。さすがにいつまでもこれでは持たないですが,3月に4名が修了予定なので,この半年の山を越えれば少し楽になりそうです。修了学年の学生さんにとっては,残り半年。悔いの残らないよう,良い論文を書きあげてほしいです。

ゼミ顔合わせ(※名前などの匿名加工処理済み)


2021.10.1-2 英語コーパス学会前夜祭・大会をホスト・発表

表記学会をホストし,発表を行いました。

発表題目:「1961^2021日本語小説コーパス」の構築:日英対照小説研究の新しい可能性



今回の大会は発表数が27本と,英語コーパス学会としては過去最大のものとなり,オンライン大会ではありましたが,参加者数は160名を超えました。本格的なオンライン大会のホストは初めての経験でしたが,おかげさまで大過なく終了することができました。しかし,オンラインで参加者が160名,対面で50名程度だとすると,学会の大会はどちらで実施するのがよいのか悩ましいところではあります。