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2021/12/26

2021.12.26 学習者コーパス研究会に参加

下記に参加しました(オンライン)


■ 日時:12月26日(日)14:00~16:00(日本時間)

■ 発表内容

14:05-14:20 丸山岳彦(専修大学・国立国語研究所)「日本語コーパスの展開と学習者コーパスの役割」
14:20-14:50 松隈杏梨(専修大学文学部日本語学科 4年)「JSL児童生徒の接続詞使用における課題 ―I-JAS学習環境別データの分析と調査の実施から―」
14:50-15:20 島崎英香(専修大学大学院文学研究科 博士2年)「話し言葉と書き言葉から見た日本語学習者の副詞の使用実態 ―場面別副詞語彙リスト作成のために―」
15:20-15:40 丸山岳彦(専修大学・国立国語研究所)「日本語学習者の非流暢性」
15:45-16:00 全体討議

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専修大の丸山先生とゼミの学生さんの報告を聴講しました。いずれも問題設定が明確で参考になる点が非常に多かったです。とくに,松隈氏の発表では,日本の小学校でデータを独自に取得してI-JASとの対照を行っており,同様のデータ収集の必要性を強く感じました。学習者コーパスでは比較対象となるNSデータをどう取るかが課題になりますが,L2学習期間という点で考え,大人ではなくあえてNSの子供の産出を取ってみるという発想は注目に値します。

また,前回の研究会で話題になった「中間言語」と習熟度の関係について会の主宰の迫田先生から報告があり,やはり少なくとも日本語教育では中間言語=上級者という含意はないだろうということでした。この点,自分でもさらに調査をしてみたいと思います。


個人メモ
Nordquist (2019)のまとめより

"[Interlanguage] reflects the learner's evolving system of rules, and results from a variety of processes, including the influence of the first language ('transfer'), contrastive interference from the target language, and the overgeneralization of newly encountered rules." (David Crystal, "A Dictionary of Linguistics and Phonetics")
★Crystalの定義:中間言語=発展し続ける(evolving)システム

"The process of learning a second language (L2) is characteristically non-linear and fragmentary, marked by a mixed landscape of rapid progression in certain areas but slow movement, incubation, or even permanent stagnation in others. Such a process results in a linguistic system known as 'interlanguage' (Selinker, 1972)
★Selinkerの言及:中間言語=非連続的・断片的・分野によって発達速度が異なる

Noddquistの解説
In the earliest conception (Corder, 1967; Nemser, 1971; Selinker, 1972), interlanguage is metaphorically a halfway house between the first language (L1) and the TL, hence 'inter.' The L1 is purportedly the source language that provides the initial building materials to be gradually blended with materials taken from the TL, resulting in new forms that are neither in the L1 nor in the TL.
★当初の定義=中間言語:L1でもTLでもないnew form 

This conception, though lacking in sophistication in the view of many contemporary L2 researchers, identifies a defining characteristic of L2 learning, initially known as 'fossilization' (Selinker, 1972) and later on broadly referred to as 'incompleteness' (Schachter, 1988, 1996), relative to the ideal version of a monolingual native speaker.
★ここから化石化,不完全性の概念が出てくる


※石川の整理(暫定)
当初は上達するがやがて必ず途中で止まる,のが中間言語
ゆえに変化中の状態をを中間言語研究として扱うことは可能だが,通常は,行き止まりまで行きついたものを調べるほうが研究上の利点が多い(ということか?)

2021/12/19

2021.12.19 東京外大川口教授科研研究会

第2回研究会 学習者コーパス分析Ⅱ:音声認識から談話標識まで
日時:2021年12月19日(日) 12:00~16:50
形式:ZOOM会議による開催

【研究発表】

・AIによるトルコ語のテキスト読み上げと自由会話の音声認識―トルコ語母語話者と日本語母語話者の場合―
梅野毅(東京外国語大学)、川口裕司(東京外国語大学)

・ L2日本語のアクセント産出に影響を与える要因の検討
布村猛(山梨大学)、阿部新(東京外国語大学)、川口裕司(東京外国語大学)  

・フランス語学習者と母語話者の話し言葉-コロケーションのケーススタディ
バルカ・コランタン(東京外国語大学博士後期課程)、ドゥテ・シルヴァン(早稲田大学)、川口裕司(東京外国語大学)

・フランス語における談話標識 « bon » と « ben » - 地域・用法・個人の差異に着目して -
清宮貴雅(東京外国語大学博士後期課程)、大河原香穂(東京外国語大学博士後期課程)、川口裕司(東京外国語大学)

・日本語を母語とするフランス語学習者の[i]の前の[t], [s], [ʃ]の発音
伊藤玲子(東京外国語大学博士後期課程)、川口裕司(東京外国語大学)

【講演】

中間言語の視点からみるTUFS-KANDA英語モジュール「アジア英語版」の特殊性
矢頭 典枝(神田外語大学)


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主たる関心対象言語は異なるものの,学習者コーパスの分析手法や問題へのアプローチには共通する問題が多く,大変勉強になる1日であった。アクセントを含めた音声面の研究は,ICNALEではほとんどできていないので,このあたり,詳しい人に入ってもらってデータの活用の幅を広げる必要性を感じた。



 


2021/12/11

2021.12.11 日英言語文化学会理事会・定例研究会に参加

第 78 回定例研究会
日時:2021 年 12 月 11 日(土) 14:30-18:00
Zoom にて開催


14:40-15:10
研究発表 1「質と量は両立するのか」
小西瑛子 (帝京科学大学非常勤講師)

15:15-15:45
研究発表 2「ニューラル機械翻訳と既存の英語教育の継続性」
瀬上和典(東京工業大学非常勤講師)

15:55-16:55 講演
「英語教育と日本の国際化の課題;女性活躍の視点から」
橋本ヒロ子(十文字学園女子大学名誉教授、国連ウィメン日本協会理事)


聴講メモ

瀬上先生の発表は,最近関心を持っているテーマと重なり,有益だった。よくある自動翻訳の技術紹介といった内容ではなく,機械翻訳の背後にある哲学的・理念的な問題を掘り起こした内容であった。


2021/12/04

2021.12.4 Asia TEFLで発表

Asia TEFL 2021はインドのホストで開催。 ICNALEのrating data分析について報告。


演題:Linguistic Features of "good" essays and "not so good essays"


「良い作文」の特性抽出の例


●参加メモ

コロナ禍の影響はあったとはいえ,今回のAsiaTEFLは,CFPの段階以来,トラブルの絶えない学会だった。

まず,発表申し込みの受付システムの問題で,発表者とタイトルが紐づけできないケースが多発。最後は,タイトルのみウェブに浮かべて,「これが私のものだと思えば連絡せよ」という告知が出るに至る。

また,会費の支払いシステムも問題が多発。会費の支払い証明をアップロードするところでシステムにはねられる事例が多く起こる。

その後,発表ビデオを事前に指定先に送ることになるが,上記同様,アップロードシステムの問題で,アップロードできない事例が多発。

上記の影響か,本来事前に公開されるはずの発表ビデオのリンクはついに最後まで参加者に公開されず,オンライン会議の正規の時間にその場で再生されることに。

また,再生は運営委員会管轄となったが,時間の管理が甘く,人によっていきなり2倍速で再生されたり,とかなり混乱が起こる。質疑の時間は(急遽当日の告知で)数人まとめて一括方式になったため,そこに発表者がおらず,結局質疑カットという事例も。。。

あわせて,これも開会前に配られるはずのアブストブックの編集が間に合わず,大会が終わってからオンラインで刊行された・・・


対面の場合,現地の感動や,人とのふれあいなど,リアルな体験のインパクトが大きいので,大会運用上の小さなミスがあっても全体的な参加者の満足感は高まりやすいが,オンライン学会だと,大会の中身(発表・質疑・講演)だけでシビアに評価されることになるので,運営側の責任はより大きくなる。いくつかのオンライン学会に関わってきた身として,他山の石としたい。