このブログを検索

2022/09/10

2022.9.10 「中国語話者のための日本語教育研究会」ほか3学会参加

今日は3つの学会が重なっていたのですが、zoom学会の恩恵というべきか、(主催の方には申し訳ないのですが)自分の関心に近いものを選んで聴講させていただきました。

「中国語話者のための日本語教育研究会」

講演 曹大峰先生(北京外国語大学教授) 北京時間(10:30-11:35)

「中日対訳コーパスの特徴とその利用方略―対訳データの利点・盲点とその利用例―」

★北京でもお世話になった曹大峰先生のご講演を久しぶりに拝聴できました。学習者産出の比較だけでなく、それぞれの原典(例えば文学作品とか)と翻訳の比較を組み合わせるべきだ、というのは、Granger/GilquinのCA/CIA統合提案と非常に似ており(というか事実上同一)、学習者研究のフレームワークのコアになりうるものだなと実感しました。こうして考えてみると、自分の研究の中で、学習者コーパス研究と、最近つくった日本語小説コーパスJFIC、日本人こども作文コーパスJASWRICという自分でもばらばら感のあるコーパスが1本の線でつながることに気づきます。この点で言うと、後必要なのは、翻訳データということになりそうです。



「日本語教育方法研究会」

A07(7).小学校社会科教科書の語彙調査 ―社会科共通語彙の特徴を探る―山本裕子(愛知淑徳大学)・川村よし子(元東京国際大学)・鷲見幸美(名古屋大学)
★教科書語彙分析。専門JSPの入り口としての小学校の内容科目の教科書分析は興味深いアプローチです。英語でも「アメリカの小学校の教科書で・・・を学ぶ」のようなことがあったと思い出しつつ。

A08(8).日本語学習者・母語話者が考える多義動詞の基本的語義とは何か
大神智春(九州大学)・森田淳子(西南学院大学)・麻生迪子(四天王寺大学)・鈴木綾乃(横浜市立大学)・林富美子(明治大学)
★「ある」「きる」「でる」「つける」「する」について最も典型的だと思う意味で作文をさせ、それを分析者が語義タイプに分類するという興味深い調査。たとえば、「ある」だと、「物の存在」はNSが77%でNNSが54%でNS>NNS、一方「事の存在」は6%と11%でNNS>NSのように差が出る。手法面でもいろいろ面白いです。主要語義を書き出して典型的なものを選ばせる、3つ書かせてクラスタリングする、などほかにもいろいろできそう。

B05(22).日本語学習辞書の副詞記述に関する調査報告
関かおる(神田外語大学)・尾沼玄也(拓殖大学)・砂川有里子(筑波大学)
★「スーパーで買い物していたら(すぐ/今にも)大きな地震が起こってびっくりした」は、どちらもアウトが正解だが、NNS反応はそうでないとのこと。正直に言うと、やや不自然だが「すぐ」はありうるな、と思っていたのでいろいろ興味深かったです。AしてすぐBする、の場合、「すぐ」の前には動作の点のようなものが典型的なので、買い物をしているという状態的なものと相性が悪いのはわかりますが、なぜ自分が「すぐ」を非文とまでは感じないのかが興味深い(が今もよくわからない)。

C10(41).日本語学習者のための日常会話におけるオノマトペの語彙選定
伊藤萌夏(東京育英日本語学院)・北野朋子(関西大学)・森岡千廣(京都先端科学大学)・蔵本成美(別府溝部学園短期大学)
★ゼミ生の研究にも役立ちそう。

D05(50).中国の大学における日本語教育の変化とその対応 ―大学入試で日本語を選択する受験生を対象として―
王凌志(広州工商学院学部生)
★中国で大学入試で日本語選択をする人が増え、大学の日本語授業がやりにくくなっている(ゼロスタートでない)という報告。なるほど日本語が増えるとそうなるわけですね。英語だと小学校英語が入って中学英語の導入がやりにくくなったという話と似ていますが、受験のための日本語学習で、ガーっと知識なんかを詰め込んできた大学新入生に、また初級文法というのは確かにむつかしそうです(これ、大学の英語授業の問題ともにている)。


「日英言語文化学会」

講演「日英語の伝統色名に見られる多様な相違」
吉村耕治 (関西外国語大学短期大学部名誉教授)
★赤ん坊とはいうが、英語のbabyには色が出てこない、なるほど!


1日に3つ出てみての感想。

1)1時間などの枠を決めて、その中でパラレルでいろいろな発表があり、人が出入りすることで、参加者は2,3個好きなものを選んで移動できるやり方(日本語教育方法)が参加者には一番ありがたい

2)予稿集はやはり紙の冊子があると便利。こういう自分のメモを取るときにも有用

3)学び、という点ではオンライン学会のほうが高いという事実がある・・・