講師 石川慎一郎(神戸大教授)
演題 「思考を活性化するDAL型授業―実験より大事なこと―」
中学校や高校を回っていると,「体育や理科の授業は,アクティブラーニングをやりやすくていいね」とおっしゃる先生がいますが,実際のところ,これらの科目は,表層的なアクティブ(体のアクティブ,見かけのアクティブ)にはなっていても,深層的なアクティブ(対話的で深い思考と学び)になっていない場合が少なくありません。
そうした中で,今回の理科の授業は,実験ではなく,あえて実験の前の授業を取り上げて,自分自身で実験手法をシミュレートさせるというきわめて意欲的なものでした。生徒さんの討議も盛り上がり,深いアクティブラーニングへの確かな近接が認められました。尼崎の学校に入り始めて3年目になりますが,このような授業が増えてきたことを嬉しくも頼もしく感じました。
過去の指導の記録
(1) 2017/6/30 AL入門。キーコンピタンシー。 MARCH。+数学(さっさ立て)授業講話
(2) 2017/11/14 新井(2017)調査。ALの原則。+国語(故事成語),保体(サッカー)授業講話
(3) 2018/2/13 ALによる道徳授業。ALと科目の相性。思考のふり幅。+学年別授業(認知症のおばあちゃん,19から大事なもの選ぶ,スピード違反を定期発されて臨終に立ち会えず)への講話
(4) 2018/7/31 ALを導入する必然性。+数学(平方根),理科(水源)授業講話
(5) 2018/9/20 ALとDAL +理科(気体同定)授業講話
講話では,生徒に与える問いをさらにピンポイントに絞ることで,思考を深化させる可能性について提案を行いました。
たとえば,気体の同定実験の場合,あまり制約を設けず,どんな手法の組み合わせがよいでしょう,とやると,範囲が広すぎてなかなか思考が深まりません。一方,主な同定手法を比較させ,ベストなものを選ぶ,というようなタスクであれば,思考の方向性は1つにまとまり,班での議論を深めてくことが容易になります。
アクティブの授業では,生徒の自立性を大事にしつつも,学習の実をあげるために,教師による介入・援助をどの程度入れていくか,その微妙な匙加減が悩ましいポイントです。