表記に出席しました。2025年度からの「科研費等の公的研究資金を使った研究成果の即時オープンアクセス義務化」の動きを受けて、学会としてどう対応するかを審議しました。
この議論の背景になったのは、国立国語研究所名誉教授の横山詔一先生らと進めている研究です(Jxivプレプリント)
研究成果のオープンアクセス(OA)というのは、いいことづくめのように聞こえますが、実際にはいろいろと考えないといけない問題があります。
下記は想定される中で、最も悲観的なワーストケースです。
1)即時OAが義務化される
2)国内の学会などが刊行する非電子誌、エンバーゴ誌(会員だけが先に読めて、その後、全面無償公開まで一定期間を置く)に論文が集まらなくなる
3)上記への対応として、学会は、(望んでいないものの)完全電子化・ゼロエンバーゴ化に踏み切る
4)「論文が読める」という学会員の最大の特権が消失し、会員数が減少し、やがて学会として研究活動が維持できなくなる
5)印刷版紀要の作成が止まることで、これまでの緻密な編集作業が形骸化し、結果として論文の質が下がる
6)上記4)と5)の結果として、学会紀要の刊行自体が維持できなくなる
7)結果として、国内での論文の投稿先が減り、(AI英訳なども駆使して)海外の有力ジャーナル(のうち比較的掲載されやすいもの)に国内の論文が流れる
この場合、海外プラットフォームによる研究成果の独占を打ち砕くはずだった施策が、結果としてそれを助長する結論になってしまいます。こうならないようにどうすべきか、どの学会も、これから真剣に考えていかないといけないでしょう。また、動くなら早く動く、これも鉄則かな、と思います。