下記でシンポジウム発表を行いました。
第6回日本混合研究法学会年次大会(JSMMR2020)
混合研究法への展望 ~質と量を越えて~
開催日:2020年10月24日(土)・10月25日(日) @オンライン開催
大会ホームページ:http://www.jsmmr.org/conference/jsmmr2020/
石川メモ
混合研究法(mixed methods research:MMR)の概要
5大原則
1)RQに対して量的・質的データを収集して分析
2)ともに厳密な(rigorous)手順を踏む
3)両者を統合する
4)混合研究デザインに組み込む
5)理論・哲学で研究を枠づける
・ポスト実証主義 postpositivism/ postempiricism(旧実証主義と違って,実験者と実験対象の相互影響やバイアスを加味。量だけでなく質も。決定・要素還元・実証・仮説検証)
・社会構成主義 constructivism (理解・多元・社会的・歴史的・仮説生成)
・変革的 transformative (政治的・公正・協働・変化志向)
・実用主義 pragmatism (結果重視・問題解決重視・多元的・実社会志向)
3つのデザイン
1)収斂デザイン convergent(量・質並行)
2)説明的順次デザイン explanatory sequential (量→質)
3)探索的順次デザイン exploratoey sequential(質→量)
※ジョイントディスプレイ(図解)
4+1の技法(仮に質=A,量=Bとする)
1)融合(merge): A+Bを組み合わせる
2)説明(explaining): AでBを説明
3)積み上げ(building): AでBを拡張
4)埋め込み(embedded):AはBの一部
5)メタ推論(meta-inference):AとBから推論
2003/2018の変化
1)typology以外の研究デザインも
2)デザインは事前決定から,研究の中での生成へ
3)基本デザインは3つ+3つの複合形
4)timing/priorityよりもintent
5)統合とmeta inferencesの重要性
感想
・5大原則のうち1~3は常識的なもので完全に合意できる
・原則4~5は,おそらくは質的研究を特徴付ける研究作法を持ちこんだものだと思うが,この部分がクリアできないと「MMでない」ということになると,他分野との協働は難しそうにも感じる
・ジョイントディスプレイという発想は非常に魅力的なもので,たとえばコーパス言語学で行う語義の再定義などでも,クラスター分析などで行った語義の再整理と,そのもとになった頻度データを棒グラフなどで同時に示すことが行われており,これも振り返ってみればジョイントディスプレイと言えなくもないような気も。
・ただ,言語研究の場合,社会学的な意味での「インタビュー」というのはふつう行わないので,質的データのソースはNSの内省調査ということになるのだろうか?だとすると,一般的なコーパス研究とは距離感がある「NS個人の言語直観による規範」のようなものをコーパスデータと等価なものとして並べるような気もして,このへんもなかなか悩ましい。
・MM学会は創設して日が浅く,活気にあふれ,みんなで新しいことを学ぼうという意欲と前向きのエネルギーにみちあふれていた。コーパス言語学も25年前はそうだったと思うが,コーパスという手法が普及し,処理が平易化された中で,手法に軸足を置く学会的な組織がどうす進むべきか,いろいろと考えさせられた。。。