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2020/07/02

2020.7.2-4 Korea Association of Teachers of English (KATE) 2020 Int'l Conferenceに出席・発表

オンライン開催された表記の学会に出席・発表しました。

発表: Day 2 1500-1530 Room 4 
Shin'ichiro Ishikawa (Kobe Univ., Japan) Language and Body Language: A Learner-Corpus Study
※当日は前撮りのビデオの上映形式でした。
発表ビデオより

発表中 on Zoom

いわゆる流暢性を議論する場合,verbal performanceのみを問題にしがちですが,non-verbal performanceを含めて評価すると全く違う「流暢性」像が浮かび上がる,という趣旨の報告を行いました。私自身の長い間の関心事ですが,実にゆっくりですが,知りたいことの核心(英語が話せるって,いったいなんだろう?)に近付いている感覚があります。

さて,いろいろ聴講しましたが,とくに面白かったのは下記の発表です。

Taejoon Park (KICE) Examining the feasibility of using text-to-speech technology in listening comprehension tests
・3人の英語教師が5種のTTS合成音声を評価し(comprehensibility, naturalness, accuracyの3観点で5点評価),良いものを選ぶ
・2群(人間の声で聴く/TTSの合成音声で聞く)を用意
・聴解テスト(KICE開発,テキストに直接書いてある内容,推論する内容,含む20問)で聴解力に差がないことを確認
・人間の声と,TTS音声で,5種のアカデミックテキストの音読を聞き,その後に内容読解テスト
・2群間で差はなかった
・事後アンケートによるよると,TTS群の31%が合成だと気づかなかった,また84%が合成音声であったことが聴解に影響しなかったと回答
・TTSを見抜いたポイントはセンテンスの間のつなぎ,イントネーション,発音,toneなど。
※実際に2種の音声を流すデモもありましたが,ほとんど差が分からなかったです。

もうひとつ,中国の英語教育学会の代表者の講演より。
Jinju Wang
New Developments of English Education Reform in China
・最近の動きとして高校用指導要領策定(2017),国家英語力基準(CSE)策定(2018),英語専攻学生用指導要領策定(2020)
・キーワードはアウトカム中心,学習者中心,コアコンピタンシー,全人教育
・高校指導要領では,言語・文化・思考力・学習能力(方略使用)を統合
・英語専攻学生用指導要領では,卒業研究?を,論文,翻訳レポート,創作作文,翻訳実作から選べるように。
・CEFR風の独自の英語能力基準(China's Standards of English Language Ability:CSE)を2018年に策定。
・1500の学校から16万人の学生のデータを収集
・9段階で,IELTS/TOEFLスコアとの関連づけも実施済み
・小1~中3:Basic (3段階)
・高1~大4:Intermediate(3段階)
・大学上級(英語専攻)~大学院~専門家:Advanced(3段階)。
・これらを規定したcan-doは107ページ分。
・印象に残ったのは冒頭のスライド:「中国の英語学習者数は4億人。アメリカの人口を上回る」

 また,3日間の学会では,ざっと見た限り,約10本のコーパス関係の発表がありました。以下,簡単なサマリーです。

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韓国英語教育学会(KATE)2020年国際大会 コーパス言語学関係発表のまとめ

(1) Chae Kwan Jung (Incheon National Univ.)
A Study on the Use of Biotechnology in English Literature
・文学作品は未来社会を予想させ,科学技術をわかりやすく提示する一面も。
・英文学作品コーパスを構築。
・バイオ工学(biotechnology)の表象を概観。

(2) Woo Ri Jeon (Cyber Hankuk Univ. of Foreign Studies)
Corpus Using Gamification in High School English Classroom
・パターン文法“have you ever V-pp?"を教える実践
・DDL(コーパスデータ駆動型言語学習),語彙アプローチ(lexical approach)
・英語力に問題がある高校1年生24人に,高校2年生程度の内容をやらせる
・使用素材:Lextutor,Longman英韓辞書,Quizlet,Padlet Dashboard
・プレタスク(10分):ビデオクリップを見てhave you ppを探し,Quizletのカード学習で意味と表現を確認。
・メインタスク(30分):教師のPPT解説でhave you ppを聞き,Lex Tutorと辞書を使い,文完成問題をグループで行う。また「インタビュー活動」としてその質問をお互いに行う。完成物をPadletに公開。
・仕上げタスク(5分):Quizletの"Live Group Battle Game"で表現と意味のマッチング。
・学習者は楽しく習得できた。

(3) Nguyen Hong Anh (Vietnam Maritime Univ., Vietnam)
Target Needs for ESP Course in Marine Navigation Safety Engineering – A Case Study at Vietnam Maritime University
・複数語コロケーションや,分野特化コロケーションの研究は不足
・海洋工学(Coastal and Offshore Engineering :COE)分野のコロケーションリスト作成を目指す。
・当該分野の教科書・論文・専門雑誌掲載ニュースを集めた940万語の分野コーパス。34の小分野をカバー。
・まず,COE分野で特徴的な中心語(1語+複数語)を抽出。次いで,それらの±4語範囲の共起語を抽出。
・計量手法(素頻度,レンジ,LL,MI,tスコア)+質的手法(構成語の意味充足性(semantic completion)と文法関係をチェック)を組み合わせ。
・WordSmith 7.0 とSketch Engineを使用。
・COEコロケーション(2-5語)を抽出。

(4) 【ライブ聴講】Mee-Jee Kim (Seoul National Univ.)
Phrasal Verb Use in Korean EFL Learners’ Expressions: A Corpus-Based Study
・韓国人英語学習者の句動詞(PV)使用
・先行研究から24の重要前置詞(paritcles:不変化詞)をまず抽出。
・ICNALEの発話データと,韓国で広く使われているヨンセイ大学YELC作文データを比較
・Sketch Engineにコーパスデータをエントリして分析
・韓国人学習者はSWともにPV過少使用
・SW間でPV使用パタンは酷似
・意味別ではアスペクト>方向>イディオム

(5) 【ライブ聴講】Yong-Hun Lee (Chungnam National Univ.)
An Analysis of Error Types in Korean EFL Learners’ Writings: Based on the ACCESSS Error-tagged Learner Corpus
・韓国人英語学習者コーパスにはいろいろ:Yonsei English Learner Corpus (YELC), Learner corpus of Kyungpook National University(テグの慶北大学校), the Gachon English learner corpus(嘉泉大学校)など
・エラータグはない
・Academic Center for Corpus-based English Studies and Statistical Solutions (ACCESSS; accesss.or.kr)において,ACCESSS Error-tagged Learner Corpusを作成
・1,100の作文(3レベル)
・第1段階:手作業と,Grammarlyなどの自動ソフトでスペルと文法のエラーをタグ付け
・第2段階:Deep Learning(word/ document embeddingを使って,単語選択と文体のエラーをタグ付け
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石川補足
Word/ document embedding
語の出現する文,出現しない文を0・1コーディングして巨大な0・1頻度表を作り,語の情報を空間ベクトルとして表現する(One-hot→Bag of words)。Word2Vecなどの基幹技術。
参考 https://ishitonton.hatenablog.com/entry/2018/11/25/200332
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・タグ付けデータを見ると,語彙の数はレベルがあがっても線形的に減るわけではない(石川注:逆Uモデルが見られた)

(6) Eun Sun Kim (Hanyang Univ.)
Lexical Diversity and Metadiscourse in TED Talks
・大学でのEMI広がる→英語講義を理解する必要
・TEDの語彙分析(語彙プロフィール,語彙多様性,メタ談話標識使用)
・ RANGE,COCA-BNC 25000, AntConc, Coh-metrix使用

(7) 【ライブ聴講(というか)】Shin'ichiro Ishikawa (Kobe Univ., Japan)
Language and Body Language: A Learner-Corpus Study
・CEFの中で,ELFでは,流暢性がとくに重要
・非言語流暢性に注目する必要性
・ICNLAE Spoken Dialogueを分析
・アジアの学習者の非言語流暢性について概観
・日本人学習者は言語流暢性は低いが,実は非言語流暢性は相対的に高い→流暢性の議論にはverbal/ non-verbalの組み合わせ視点も必要

(8) Geonha Kim (Pusan National Univ.)
Implementing Teaching of Collocations in EFL Classes: A Corpus-based Approach Using Original and Translated Literary Texts
・コロケーション学習の重要性
・先行研究は構成要素の意味特性やテキスト内での分布に注目するが本研究は教育面重視・コロケーション習得の難しさはL1干渉とコロケーションのあいまいな性質による
・文学テキストを素材に。ストーリーがはっきりしているのでターゲットとなるコロケーションの性質や作者の使用意図を文脈の中で正確にとらえやすい
・Antconc, COCAも使用
・学習者のコロケーション習得を評価(recall/ recognition test)
・学習者の認知的・情意的側面も調査

(9) Hong Anh Nguyen (Vietnam Maritime Univ., Vietnam)
A Corpus-based extraction of Technical collocations in Coastal and Offshore Engineering
---> (2)とほぼ同様だが基準が少し違う?
・EMI(英語媒介教授)のために
・300万語のコーパス構築
・±3語で共起語抽出(※(2)では4語だった)
・ 21,760種のコロケーションを抽出

(10) Min-Chang Sung & Kitaek Kim (Gyeongin National Univ. of Education & Seoul National Univ.)
What do English-language Animated Movies Teach us about Vocabulary Education?
・韓国の小学生は英語のアニメが好き(Frozen, Shrek)
・3人の国際的アニメ映画作家による25本のアニメ映画コーパス作成。
・高頻度500表現を抽出
・韓国の指導要領(MOE, 2015)で定められた小学生用800種の英単語と比較
・まず使わせる,語用論機能を示す,語彙的意味を教える