勤務先を含め,日本の大学は,どこも頑張っているのに,にもかかわらず,じりじりランクが下がっているという印象を持っていましたが,それはQSのデータからも裏付けられます。
出典:QS社プレゼン資料より:日本の大学の観点別平均ランキング推移(過去7年)
観点別では,「教員・学生比率」だけが比較的良好で,それは過去数年間ほぼキープ。一方で,そのほかの観点はどれもかなり大きく低下しています。この間,SGUの試みもあったはずなのですが‥‥
QSは世界の大学関係者に聞いた評判調査(例:あなたの分野でいいと思う大学名を10個あげて)の比率が4割ということで,要はその調査で自大学の名前がメンションされないとなかなか上位にはなれないようです。
ただ,評判調査の妥当性には賛否両論あるでしょう。たとえば,私自身が同じ質問をされたとして,自分の専門分野で活躍している各国の研究者の顔は何人か浮かびますが,それらは大学というよりもあくまでも個人です。そんな中で,あえて「大学名をあげろ」と言われれば,はっきりした確信のないまま,なんとなく,オックスフォードとかハーバードとか,有名どころの名前を列挙するかもしれません。もしそうなら,評判調査というのは既存の大学のイメージを再生産しているだけであって,何かの新しい情報を取り出しているものではない,という見方もありそうです。(もちろんそういうイメージこそが大学の価値の源泉だという見方にも一理ありますが)。
本日の聴衆にはメディアの関係者も多く,彼らの質問には鋭いものが多かったです。「香港の大学にいる中国籍教員は外国人教員比率でカウントされる外国人に入るのか?」とか「大阪公立大のランキングの見通しは?」などの質問は,おっ,と思いましたが,残念ながら,その場で明確な回答はなかったです。
なお,THE(Times Higher Education)はベネッセと提携,QSは河合塾と提携,ということで,国際大学ランキングは一大教育ビジネスになってしまった感じです。しかし「世界ランキング200位以内の大学の修士・博士学位保持者にのみ特別なビザを出す」(オランダ)といった政策もある以上,大学関係者としては,無視もできず,悩ましいところです。