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2022/03/31

2022.3.31 英語コーパス学会会長退任のご報告

2021年3月31日をもって、2年間の任期を終え、第7代英語コーパス学会会長の職を退任しました。副会長として半年、会長として2年間、会員のみなさんのお支えで何とか任期を終えられてほっとしています。下記、退任挨拶と、かつて学会のウェブサイトに掲載されていた着任時および任期2年目の挨拶を記録として残しておきます。


会長退任あいさつ

副会長として半年、第7代会長として2年、与えられた任期を無事に終えることができました。この間の皆様のお支えに深く感謝します。

2019年の秋に内々に副会長(次期会長)の打診を受けた時、わたしは指名による就任という慣例的なやり方ではなく、「公約集」を理事会に出し、それを読んだうえで選挙で決めていただくようお願いをいたしました。そうしないと、選ばれても思ったような改革ができないと考えたからです。公約に書いたのは、理事会の拡大による開かれた運営の徹底、功労会員の新設、独立した実行委員会による大会企画と運営、学会誌の電子化、規定類の整備、そして、英語コーパス学会の発展的改組、ということでした。

2年半の間に、上記に書いたことの大半は実現しましたが、私の中で最大の目標であった学会改組構想については、多数の同意を得るに至らず、実現できませんでした。英語だけでなく、言語種を超えて、コーパスを用いた研究手法に関心を持つ研究者が一堂に会して議論を戦わせることで、新たな研究上のブレイクスルーが起こせるのではないかと考えたのですが、これが叶わなかったのはひとえに私の力不足です。2019年の秋の理事会で、この公約に期待して私に1票を投じてくださった方がいたのだとすれば、非力をお詫びするばかりです。

2年半の経験で痛切に感じたのは、当たり前ではありますが、会長一人では何もできないということです。内田諭副会長・事務局長には、この間、全面的に会務を支えていただきました。また、家入葉子副会長、田畑智司副会長には、重要な決定の都度、貴重な助言をいただき、深く感謝しています。加えて、任期中、会計担当としてお世話になった宇佐美裕子・和泉絵美・阿部真理子の3先生、総務担当としてお世話になった大谷直輝・三浦愛香の2先生、広報担当としてお世話になった水本篤・ 渡辺拓人の2先生にも深く感謝申し上げます。全幅の信頼がおけるドリームチームの中で仕事ができたのは本当に幸せでした。

本会は、新年度から、田畑智司新会長のもと、新たな体制で大海に漕ぎ出します。全国的に人文系研究者の数が減少する中、どの学会も運営が大変な時代になってきましたが、本会を創設期から支えてこられた田畑先生の舵取りのもと、本会は、時代の荒波を乗り越えて順調に前進を続けていくものと確信しています。本会のさらなる発展を祈念して退任の言葉とします。みなさま、ありがとうございました。

2022年3月31日 石川慎一郎


会長あいさつ(2年目にあたって)(2021/4)

早いもので,会長就任後1年が経過し,本日より,会長任期の最終年度が始まりました。昨春の時点では,時代の変化に合わせて「会務の進め方や組織の整理を行い,より活発な研究が展開できるよう制度面を整えていきたい」と申しましたが,その方針のもと,この間,会員・役員の皆さまのご理解をいただきつつ,(1)幹事制度の創設と役員会(旧理事会)の拡大,(2)功労会員制度(要件を満たした65歳以上の会員は本人の希望により年会費の負担義務なしで会員資格を維持できる)の整備,(3)会則・規定類の見直しと新規規定の制定(功労会員・正副会長選出・旅費支給・文書等保管規定),(3)年会費の軽減(一般会員:6,000円→5,000円,学生会員:3,000円→2,000円),(4)学会誌の電子化,(5)予算の整理(一般会計と,学会の運営持続を目的とした特別会計の分離)などの改革を実施することができました。一方で,本学会の研究対象言語を英語以外に広げるという私案は役員会の同意を得るに至らず,本会は引き続き英語コーパス研究の進展を目指す学術団体としてさらなる発展を目指すこととなりました。

2020年度はコロナ禍の1年でしたが,本会は秋の大会をオンラインで成功裏に終え,また,各研究会(SIG)も工夫を凝らしてオンラインのイベントを実施いたしました。役員会もオンライン化されましたが,対面の時以上に多くの参加者があり,学会の将来像や方向性についての議論を深めることができました。

2021年度も,春季研究会および秋の大会はオンラインでの実施が決まりました。今回の大会では,予稿を掲載する「Proceedings」を電子刊行する予定で,会員の皆さまの日頃のご研究を広く公開していただける場にしたいと考えております。対面での各種のイベントの再開はおそらく2022年度以降になると思われますが,この1年,オンラインでできることをさらに深堀りし,研究の促進と進展を図りたいと存じます。

任期の最後の1年となりましたが,学会の新たな飛躍のため,引き続き,微力を尽くす所存です。会員の皆様にはなにとぞご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

2021年4月1日  石川慎一郎


会長就任あいさつ(2020/4)

2020年度より7代目の会長に就任した石川です。微力ではありますが,お世話になった学会の発展のため,努力してまいりたく存じます。どうかよろしくお願い申し上げます。

さて,ご存じの方も多いかと思いますが,英語コーパス学会の前身は「英語コーパス研究会」という団体でした。私がはじめてコーパスという言葉に触れたのは,この研究会の2回目の例会が神戸大学で開かれた1993年9月25日のことでした。当時英文学専攻の修士2年生だった私は,コーパスについて何も知らないまま,受付のアルバイト要員として駆り出され,同じく受付に座った先輩と一緒に,「コンピュータを使って英語や英文学を研究するなんて想像もできひんねえ。そんなんでできるなら人間いらんやん」と話していたのを覚えています。

その後,思いがけないご縁があって,コーパスを使って本格的な英和辞書を作るというプロジェクトにお誘いをいただき,その中でコーパスの使い方や言語データの分析の仕方を一から教えていただくことになりました。コーパスの面白さ,無限の可能性を知ったのもこのプロジェクトです。声をかけてくださったのは赤野一郎先生でした。

しばらくすると,別の学会で,日本人大学生のための英語語彙表を改訂するというプロジェクトが立ち上がり,私も手をあげて委員会に加えていただきました。そこに委員としていらしたのが投野由紀夫先生です。投野先生の指導のもと,British National Corpusや国内で開発したコーパスの頻度データを合成して重要語を決めていくという作業をやらせていただきました。このプロジェクトを通して,コーパスと言語教育のつながりを強く意識するようになりました。

その後,海外の学会に参加するようになり,内外の多くのコーパス研究者と知り合いました。その中で,いかにすぐれたコーパスデータやコンピュータがあっても,「人間いらんやん」ということにはならず,それらを使いこなす研究者の力量がより一層求められるのだということを学びました。

英語コーパス学会は,前身の研究会の誕生からすでに27年がたっています。この間,会は大きくなってきましたが,一方で,創設時の制度や運営方法が時代にあわなくなっている部分もあるように思われます。会長任期においては,会務の進め方や組織の整理を行い,より活発な研究が展開できるよう制度面を整えていきたいと考えています。また,研究対象を「英語学・英文学・英語教育」の枠に狭く閉じ込めるのではなく,より広い視点でコーパスの可能性を語り合える場にできればとも考えています。

そもそも,伝統的な言語学と比べると,コーパス研究には,新しい自由な発想を許容し,推奨する研究風土があったように思います。そのコーパスを冠に抱く我々の学会もまた,そうあり続けるべきでしょう。私は1969年生まれです。Brown Corpusの完成が1964年なので,「After Brown」世代の初の会長ということになります。もとより,先達のようなすぐれた能力はもちあわせておりませんが,経緯やしがらみにとらわれず,今の時代にあった学会の在り方を皆様と一緒に考えていければと思っています。改めまして,どうぞよろしくお願い申し上げます。

2020年4月1日  石川慎一郎