このブログを検索

2022/02/10

2022.2.10 他ゼミ生博士論文最終試験

他ゼミ学生の博士論文審査を担当しました。

山内理恵氏 Connecting D. H. Lawrence to Emily Brontë: Adoration for Nature and the Shadow of "Death"(D. H. ロレンスとエミリー・ブロンテをつなぐ自然愛と「死」の影)

大昔の自身の博士論文以来のロレンスでした。今読み返してみると,昔,いいなと思ったところがあまり響かず,昔気付かなかったところに良さを感じたりします。読み手の成長(ないしは退化)に応じてテキストの意味合いが変わってくるというのは,読みという行為が読み手とテキストの相互作用ないしは共同作業であることの確かな証拠という気がします。しかし,ロレンスにとって自然というのはなんだったのか,今なおよくわからないところではあります。自分の昔の論文では,結局,ロレンスは自然やロマン派の伝統を都合よく利用しているだけで(あるいは体よく「隠れ蓑」にしているだけで),その本質は(ロレンスが嫌いだと公言している)非常に現代的・意識的なレトリック上の思考実験だったというような主張をしたのですが,今回の博士論文審査は,かつてよくわからないまま積み残してきた問題にふたたび向き合う良い機会となりました。