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2020/12/12

2020.12.12 学習者コーパス(I-JAS)研究会で発表

学習者コーパス(I-JAS)研究会

■ 日時:12月12日(土)10:00~12:00
■ 形態:オンライン研究会(zoom)
■ 発表内容
1)「言語研究における有意性検定の今後の動向を考える」 
   石川慎一郎先生
2)「異なった学習環境における日本語使用の正確さと複雑さ」
   迫田久美子・細井陽子先生


石川は,最近考えている学習者コーパス向けの検定の問題について話させていただきました。  たとえば,中国語母語の日本語学習者のテキストデータが100本あるとして,これを総体データとして処理すれば,単語Xの頻度は1つしか取り出せませんから,検定にかけようとすると比率検定のデザインに持ち込むほかありません。しかし,個々のテキストファイルからXの頻度を取り出せば平均値の差の検定がかけられます。一般的に考えれば,後者のほうがデータの性質をよく見ているということになりそうです。また,母語話者に比べ,学習者のL2運用のブレ幅は通例より大きいと考えられますので,基本的には個々のデータを見ることが大事だと言えるでしょう。

ダミーのデータを使った比較(発表スライドより)

その後,迫田先生・細井先生のご発表を聴講しました。大変精緻で面白い分析で勉強になりました。教室環境vs自然環境というのは(日本の)英語教育研究ではほとんど論じられない視点なのでその意味でも興味があります。

(自分メモ)
・海外教室(海外で教室環境で学ぶ),国内教室(日本に留学して教室環境で学ぶ),国内自然(日本に主として仕事のためにやってきて生活の中で日本語を身に着ける)のST発話のCAFを比較
・正確性(誤用のないtユニット比率):国内自然が優位 (※教室学習者は文法への意識自体は高く,表現を言い換えたり言い直したりする「モニター行動」が見られる)
・複雑性(tユニット内の節の数):国内自然が優位(※とくに従属節・引用節が多い)
・流暢性(節の総数):3群で差がない
・一般に自然環境学習者はFは高いがCとAは低いというのが定説なので,それと乖離する結果が得られたことは興味深い。
・ただしCAFは指標次第という側面があるのでそのへんも興味深い。