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2019/07/06

2019.7-4-6 韓国英語教育学系学会連合大会招聘講演@ソウル

大学英語教育学会(JACET)からの派遣で,下記の学会で招聘講演を行いました。

2019 Joint International Conference on English Teaching and Learning in Korea
Theme: Creating New Values Through English Teaching and Learning: Creativity, Innovation and Adaptability
July 4 - 6 (Thursday - Saturday), 2019
Hankuk University of Foreign Studies, Seoul, Korea

Organized by
Korea Association of Teachers of English (KATE)
Global English Teachers Association (GETA)
Korea Association of Multimedia - Assisted Language Learning (KAMALL)
Korea Association of Secondary English Education (KASEE)
Korea English Education Society (KEES)
Modern English Education Society (MEESO)
Pan - Korea English Teachers Association (PKETA)

講演題目等
Day 2 1130-1200
Featured Speech Ⅵ (Small Auditorium)
(Moderator: Jaeseok Yang, Daegu National University of Education)
Learner Corpus Studies and TESOL in Asia: The ICNALE Project
Shin'ichiro Ishikawa (Kobe University, Japan)

今回はFeatured speechだったのでICNALEの総括的な紹介をさせていただいたあと,とくに日本と韓国の学習者のL2使用傾向の違いについて具体的な事例を議論しました。



上記は,ICNALEの作文データを特徴語分析にかけて日本人・韓国人大学生の特徴語(対NS)を取り出し,それらを再構成して作成した両国大学生の"typical passages"です。we, people, must(青字)など共通して多用されるものもありますが,赤字の語はそれぞれの学習者に固有の過剰使用語となっています。この分析をしてから,韓国と日本の研究者の発表を聞いていると,日本人は"a lot of"を好み,韓国人は"lots of"を好むという傾向がたしかにありそうに思われました。このあたりの違いが何に由来するのか興味深いところです。

学会では,また,以前より研究交流を持っているランカスター大学のTony McEnery先生の講演を聴講しました。コーパスの価値だけでなく制約についても吟味されたinformativeなお話でした。

Tony McEnery教授(ランカスター大)の基調講演風景

McEnery教授講演メモ(※その場での聞き書きのため誤りがあればお許しください)
・コーパスは言語の特徴を明確に示す(例:goodとgreatのそれぞれの共起ネットワークを比較すると後者はきわめて狭い)
・広義の「学習者コーパス」の起源は1920年代にまで遡れるが,体系的に電子化されたのはGrangerらがICLE/LINDSEIを構築した1990年代後半以降。
・Lessard(1999)の学習者コーパス批判は今でも通用する(Brezina 2019)
(1) 小さすぎる
(2) アノテーションが部分的
(3) overuse/underuseを論じるだけで言語理論を援用していない
・サイズに関しては条件統制をするだけで使えるデータが一気に減る
・Longman Learner Corpus(一般には非公開)は900万語で巨大だが,L1(18種)・習熟度段階(8種)・学習している英語変種(3種)・タスクタイプ(9種)をすべて統制すると,データは3,888種に小刻みに分割されることになる
・たとえばL1アラビア語話者のデータは14万語あるが条件を絞っていくと2万語未満に減り,基本語でも出ないものが多くなる
・アノテーションについては語用論的なタグ(笑い)等を付与して研究の幅を広げる余地もある
・理論との関係においてはSLAとの連携の深化が望まれる

学習者コーパス研究を進める上で示唆に富んだお話でした。