日本語教育学研究と学習者言語研究のクロスポイント
連続講演会の1回目のゲストとして呼んでいただきました。当日は70名ほどの大学院生や先生方を前に,コーパスが日本語教育にどのような貢献ができるか具体的にお話させていただきました。
たとえば,書籍・書物・図書という3つの語の意味の違いは?となると母語話者でもはっきりしませんが,コーパスを使えば,3つの語がはっきりと異なる共起パタンを持つことがわかります。
共起語を見ていると,どうも,書籍は出版社が製造・印刷して書店で販売する商品としての本(多くは新しい)を,書物は読んだり書いたりする一般的な本(古くてもよい)を,図書は調査用の資料を主として含意するようです。(詳細は,石川2012「ベーシックコーパス言語学」ひつじ書房,を参照)
こうした解釈を確認するために,googleの画像検索を行うと,実際,書物に関連する画像にのみ古書が大量に出て来ます。
このように,コーパスは,母語話者も見落としていた言語の事実を明らかにする上で,極めて有用な道具であるといえます。