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2018/01/20

2018.1.20 尼崎市立常陽中学校道徳授業研究会

本日は,尼崎の常陽中学校の道徳授業研究会を視察し,事後研究会の講話を担当しました。

道徳は,新指導要領のもとで「特別の教科」となり,新たに評価が発生します。私は,アクティブラーニングの導入支援の延長線上で,尼崎市のいくつかの学校で道徳の評価研修を担当しています。

本日拝見した授業は,手塚治虫の戦争体験を述べた教材を読み,登場人物の心情を理解するというものでした。オーソドックスな道徳授業としてよく工夫されたものでしたが,「新しい道徳」の理念をふまえると,さらに一歩踏み込みもほしかった気がします。

これまでの道徳指導は,一定の成果を挙げてきた一方で,

1)指導が固定化・形骸化しがちで,
2)読み物の登場人物の心情の読み取りばかりで,
3)望ましいと思われることを言わせたり書かせたりするだけで,
4)いじめなど,学校や地域の抱える実際の問題の減少につながらない

という限界もありました。


道徳で身につける能力は,一般の観点別評価の対象になるものではありませんが,そこには,能力・資質の三本柱に沿って,およそ,以下のような面が存在します。

(A)道徳的価値の理解
(B)多元的思考
(C)自己内省

このうち,新しい道徳は(B)や(C)をとくに重視するわけですが,これをうまく行うには,教材の選定が従前以上に重要になってきます。

たとえば,道徳教育の中で大きな位置を占める戦争教材や震災教材では,つらい被害や悲劇が強調されがちですが,その場合,(A)に関して新たな価値の発見や理解につなげることは難しく,(B)で思考のふり幅を持たせることも難しく,(C)で自分の問題に引き付けさせることも難しくなっていきます。戦争教材・平和教材・震災教材をどう「新しい道徳」の中で活性化させ,指導の実をあげていくか,今後も,現場の声をふまえた検討と研究が必要でしょう。

今週は,1週間で4つの小学校・中学校を回りました。教育の真髄は現場にあり,いつもながら,教えることよりも教わることのはるかに多い1週間でした。